episode:16 降臨!ギンギラ将軍!!
この作品は天道暁によるオリジナルのスーパー戦隊作品です。現在放送されているスーパー戦隊シリーズを制作・放送している各団体とは一切関係ありません。
オープニングテーマ「your kind!」
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「必殺大妖技・夢幻魔削爪!!!!!」
技の名前を5人で叫ぶ。
ムゲンオーは再び走るブルクダンからジャンプ、左手の爪を巨大アスモデウスに振り下ろす。
「無駄だと言っているだろう!」
巨大アスモデウスの防御姿勢。
爪の一撃は弾かれるが、二撃、三撃、四撃五撃と爪による高速の連続攻撃のダメージが積み重なり、翼に小さな亀裂が生じ、その亀裂は次第に大きくなり、十八撃目にはついに翼が砕け、ムゲンオーは巨大アスモデウスのボディに光り輝く∞型の爪痕を刻み付けながら駆け抜ける。
巨大アスモデウスはこれにて爆散、すると思われたが、∞型の爪痕を手で押さえながら踏み留まる。
「まだだ……まだ……」
「しぶといな! よーし、オイラ達がキメるぞ!!」
〔モォ~~~~~~!!!!!!〕
ブルクダンが大地を蹴り走り出したその時……
「デビル デビレバ デビルトキ デルモデナイモ アクマデモ 俺様もバイブス、ブチ上げるZE!!」
戦いの足元にいたベルゼブルが巨大化、と同時に足払いでブルクダンを転倒させる。
「うわあああああああ!!!!!」
〔モォ~~~~~~~!!!!!〕
ブルクダンの体がアルファルトを削り火花を散らす。
ムゲンオーのコクピット内にも心理的な意味での衝撃が走る。
「ベルゼブルが……」
「死んでないのに巨大化!?」
巨大ベルゼブルは例のあの手の形でムゲンオーを指差し叫ぶ。
「チェケラ!!」
「悪魔って、死ななきゃ巨大化できないんじゃないのか!?」
「普通はな。だが、俺様は最も巨大化魔法を極めた悪魔! だから俺様だけ、生きてる自分を自分で巨大化させることができるんだYO!」
「YO!」と同時に飛び蹴りを繰り出す。
ムゲンオーは避けきれず後退、ビルにぶつかりかけて踏みとどまる。
その隙に巨大ベルゼブルは髑髏マークの付いた翅を震わせ、巨大アスモデウスを抱えて飛び上がる。
「待ちやがれ!!」
ムゲンオーも飛び上がり追い掛けるが、巨大ベルゼブルは大荷物を抱えているとは思えないスピードで、まさにハエの如く四方八方に飛び回り、ムゲンオーとコクピット内のヨーカイジャー達の動体視力の限界を飛び越えたところで加速。
遠いどこかへ飛び去っていった。
「ちっくしょおおおおおおおおお!!!!!!!」
「夢幻戦隊ヨーカイジャー」
episode:16「降臨!ギンギラ将軍!!」
妖怪の里・妖怪大病院。
ヨーカイジャー達はそこで精密検査を受けることになった。
毒抜きに成功したとはいえ一度は悪魔の毒を注入された拓実、二人でアスモデウスと戦い変身解除させられた智和と千影、長時間バリアを張って消耗した結月、比較的軽傷だがマスクの上から毒液を浴びせられた武士、そして急に大人の姿になってしまったザシキワラシ。
武士はマスクの性能に加えて日頃の鍛練の成果もあってかやはり軽傷と判断され、一番に検査が終わり巨大妖怪用のリハビリ室を見学しに行った。
良さそうなら修行に使わせてもらえないか交渉するつもりである。
智和と千影は念のため1日入院させられることになった。
智和は男子病棟の個室に通信機器を持ち込み各所に連絡を取る。
NPO法人ASUMO本部ビル及び周辺の建造物の破壊はASUMO会長によるテロ行為によるもの、ASUMO会長は自作の爆弾により本部ビルを巻き添えにして自殺、職員は会長命令により全員退出していたため無事、という情報操作が妖怪情報統括部により行われた。
逃走した巨大ベルゼブルと巨大アスモデウスについては、監視カメラ等から得られた情報を元に、妖怪諜報部で最も優秀なエージェントが既に追跡を開始している。
以上の報告を受けたところで様子を見に来たネネコガッパにムゲンブレス以外の通信機器を取り上げられた。
「オレがやるからおめぇは休んでろ。……なんだよ口尖らすな、カッパみたいで親近感沸いちまうだろ!」
拓実は検査の結果「念のため」ということで血清を打たれ、旨いとも言えるし不味いとも言える味の薬を飲まされて解放された。
暇になったので病院内の妖怪達を観察しながら歩き回っていると、ロビーのベンチに座って遠くを見つめるザシキワラシが見えた。
「おーいザシキワラシ……ってのもちょっと違和感あるな。どうした?」
拓実はザシキワラシの隣に腰を下ろす。
「あー、検査して言われたんだけど、オイラもう元に戻れないかもしれないって……」
「えええええっ!? そりゃ大変だ、一気に大人になっちまってもう戻れなかったら……」
「いや、それはいいんだ。オイラ早く大人になりたかったから。普通だったら大人になるまであと300年くらい掛かるけど、それすっ飛ばせたのはむしろ嬉しい」
「そっかー、300年っつったら長いもんな。小学校で教科書読んでた子供が自分が教科書に載るくらいの時間……待ってくれ300年!?」
「うん、オイラまだ333歳だから」
「そっかー、若いなー。俺333歳の時何してたっけ? えーっと……………………いや無かった! 俺333歳の時無かった! 333歳で子供なのか!! さすが妖怪!! カシャが江戸時代に武士の先祖の世話になったって聞いたけど、どっちが年上?」
「カシャの歳は聞いたことないし、『人間で言えば何歳か』みたいなのは妖怪の種族ごとに違うんだ。人間で言えばオイラは10歳ぐらいで、カシャはあの雰囲気だと……25歳ぐらいかな?」
「智和と同じくらいか。そういや人間とゾウとネズミも歳の取り方が違うらしいし、妖怪もそれぞれ違ってて当然か」
「うん。で、大人になったのはいいんだけど、招福妖怪としての力は完全に失われてるって」
「周りの人を幸福にする力か。でも大人になる前から、お前の近くにいた結月が大凶出してたじゃん」
「招福妖怪の力は運を良くする力ってわけじゃないんだ。体から、周りにいる生き物の脳に働きかけてポジティブな気持ちにさせる電磁波みたいなのが出てて、それでポジティブになった生き物が、やる気出して行動できたり、気持ちだけでも前向きになったりして、幸せになりやすいっていう力」
「電磁波……。もしかして妖怪の力って、超常現象みたいなことじゃなくて、鳥が飛べたりクジラが息止めて海に潜れたりするみたいな、生き物としての機能みたいなやつだったりする?」
「そうそうそう。オイラ達妖怪は、人間とか鳥とかクジラとかとは別の進化をしてきた生き物。死んだ生き物の怨念が妖怪化したとかは、妖怪の存在に気付いちゃった人間が思い込んだだけ。オイラ達も親とか親が産んだ卵とかから生まれてきて、普通に病気にもなるし普通に死ぬ」
「昔は地球の周りを太陽が回ってると思われてたけど、本当は逆だったみたいな?」
「そうそうそう。人間の科学がオイラ達のことを説明しきれてないだけで、オイラ達は科学的根拠があってここに存在してるんだって長老が言ってた」
「妖怪がいろんな能力を使えるのも、よくわかんない不思議な力とかじゃないんだ?」
「人間も、脳から命令が出て、それで手を動かしたりできるだろ?」
「うん」
ザシキワラシが腕を上下するのに合わせて拓実も腕を上下する。
「この時、体の中に通ってる神経の中を化学物質とか電気信号が動き回るんだけど、妖怪はこの電気信号からいろんな能力を使うためのエネルギーを作り出すことができて、これが『妖力』って呼ばれてるんだ」
「妖力めっちゃ科学的だった!!!」
「人間にもたまーに似たようなことができる奴がいて、そういうのは超能力とか気功とか呼ばれてる」
「超能力も気功もめっちゃ科学的だった!!!」
「妖力と比べたらだいぶ弱いけどな。オイラの体から出てた電磁波も、オイラの妖力で無意識に出てたんだけど、それが今は全く出てないって」
「大人になるために妖力を使い果たした?」
「そういうのとは違う。妖力はバリバリあるんだけど、それが電磁波を出すためには使われてないって。急に大人になった影響だろうけど、元に戻れるかはわからないって」
「そっかー、本来の力が無くなっちまったか。でも俺、お前がヨーカイシルバーになった時、あの強ぇ悪魔に勝てそうってポジティブな気持ちになれたぜ?」
「拓実…………………………感動させようとしてる?」
「そう! カンドウサセテタチナオラセヨウトシテル!」
「ヤッパソウカ! オイラタシカニ、カンドウシテタチナオッタ!」
「ソリャヨカッタ!」
ザシキワラシは立ち上がって背筋を伸ばす。
「元々の力は無くなっちまったかもしれないけど、オイラこれからは、電磁波じゃない力でみんなの福を招けばいいんだ。それが新しい招福妖怪ザシキワラシだ!!」
「そうそう、そうこなくっちゃな。さてさて他の奴らはどうしてるかな?」
その時、カルテを抱えて速足で歩く看護妖怪ウシオンナと、その後ろを満面の笑顔で着いていく結月の姿が見えた。
「ねえねえねえ! ゲキリンダーに告白されたって本当? 何て言って告白されたの? ねえねえねえねえ!」
「勘弁してください忙しいんです!!」
「結月は元気そうだな」
「うん」
そんな結月を見つめるもう一つの視線。
千影は拓実達がいるのとは別のベンチに座って、子供用に用意されていたのを懐かしくなってつい手に取った「星の王子さま」の絵本を膝の上に広げていた。
千影はバラの花に水をやる王子さまのページを閉じて絵本を小さな本棚に戻した。
「結月ー! もうその辺にしときなさーい!」
「あー千影ちゃん! どうだった?」
「点滴打ったらだいぶ気分良くなった。それで今結月の顔見たらもっと元気になった」
「もうっ! 千影ちゃんもうもうもうっ!」
「千影も元気そうだな」
「うん」
一方その頃、妖怪の里・さわやか草原。
立ち並ぶカラステングとゲキリンダー。
彼らと向き合うブルクダン、オボログルマ、イッタンモメン。
〔合体カードを生み出すコツかぁ……コツなんかあんのかなぁ……〕
カラステングが首を捻っているのを余所にゲキリンダーがブルクダンの尻尾を引っ張る。
ブルクダンの目のスロットが回転し、「中吉」で止まった。
〔戦いの中で急にできたっつーか……〕
カラステングが腕組みして空を見上げているのを余所にゲキリンダーがブルクダンの尻尾を引っ張る。
ブルクダンの目のスロットが回転し、「吉」で止まった。
〔ゲキリンダーもそんな感じだったんだろ?〕
〔うん〕
ゲキリンダーが簡単に答えてブルクダンの尻尾を引っ張る。
ブルクダンの目のスロットが回転し、「凶」で止まった。
〔いや、拓実が『合体できたらいいなー』とか思ってたらカードができたんだったか〕
カラステングが回想しているのを余所にゲキリンダーがブルクダンの尻尾を引っ張る。
ブルクダンの目のスロットが回転し、「末吉」で止まった。
〔ブルクダンがパートナー妖怪に選ばれたのは、長老や妖怪評議員の皆さんが、力を認めて、合体巨人の中心になれそうって判断したからだろ?〕
〔モォ~……〕
〔だったら間違いない、きっかけさえあれば、絶対合体できるようになるって!〕
〔モォ~!!〕
カラステングとブルクダンのやりとりを余所にゲキリンダーがブルクダンの尻尾を引っ張る。
ブルクダンの目のスロットが回転し、「中吉」で止まった。
〔だぶった。だが時は戻さない〕
〔もうそろそろ占いいいんじゃないかな!?〕
〔全種類見るまでやりたい〕
〔コンプリート狙い!? 大吉目指してるとかじゃなくてコンプリート狙い!?〕
〔大凶も含めて全部出したい〕
〔いやいやいや、今はどうすればこいつらが合体巨人になるためのカードを出せるかっていう話で……〕
〔拓実が合体を望んだことが最初にムゲンオーの合体カードが生まれたきっかけになって、そのイメージが頭の中にあったから後に俺のコクピットでもムゲンビルダーの合体カードを生み出すきっかけを作ることができたのだろう。ならば今度は、ブルクダンのパートナーであるザシキワラシの思いが鍵になると考えるのが自然じゃないか?〕
〔急に真面目に語りだすなよびっくりしたー。でも確かに、妖力は思いに反応して形になることがあるっていうからな〕
〔それでザシキワラシは一気に大人になった。ならパートナーの合体も決して不可能なことじゃない〕
〔言いながらまた尻尾引っ張ろうとしてるな?〕
〔うん〕
〔モォ~……〕
一方その頃、某所の岩山。
大岩にもたれて地面に座る巨大アスモデウス。
両翼が破壊され半分程の長さになり、胸には∞型の傷痕が残っている。
その目線の高さで翅を震わせ空中停止している通常サイズのベルゼブル。
「わざわざ巨大化してまで助けてくれるとはな」
「レヴィアタンとグレモリーが残してる記録によると、奴らの必殺大妖技とかいうのを食らって生き延びたのはお前が初めてだYO! 一旦退いてダメージを回復すれば、次は絶対勝てると思ったんだZE!」
「なるほど戦略的撤退というやつか。理に敵っている。……一度奴らに殺された私だ、もう同じ失敗はしない。なぜ負けたのはわかっている。私はヨーカイジャーを数でしか見ていなかった」
「数でしか?」
「そう。最初に潜入してきた2匹を殺せば、残りの3匹は怒りで強くなる。そう考えて私は、最初の2匹を殺さず、5匹揃ってから殺すつもりでいた。だが、それが間違いだった。最初に潜入してきた緑と黄色は、奴らの中の頭脳担当だったことが、5匹揃ってからの戦いでわかった。緑と黄色がいなければ、銀色が加わったところで作戦を考える者がおらず、私が負けるようなことは無かったかもしれない。いや万が一、司令塔がいないヨーカイジャーに私を倒すことができたとしても、その後の戦いで他の悪魔を倒すことは難しくなっていただろう。奴らはそれぞれ違う能力を持ち、それをそれぞれに活かすことで悪魔との戦いを制してきた。それはまぐれなどではない。そこへ新たに人間に似た姿の妖怪が1匹加わり、ヨーカイジャーはさらに油断ならない敵になった。次こそは間違えない。次こそは必ず、奴らを皆殺しにする」
巨大アスモデウスは3つの顔に付いている合計6つの目で胸の傷跡を見つめる。
「OKアスモデウス! そんだけ分析できるお前なら、次は絶対、ヨーカイジャーをブッ倒せるYO!!」
ベルゼブルは空中で高速回転し「YO!」のところで巨大アスモデウスを「チェケラ!」の手の形で指差す。
「しかし、生きたまま巨大化なんてしたら酷く消耗するだろう?」
「まあ、1日のうちに、休憩挟んで2回できりゃいいとこだな。今日のうちにもう1回やっちまったら、しばらくできなくなるだろうYO!」
「問題ない。ヨーカイジャーは今日のうちに全員死ぬ」
巨大サイズと通常サイズで話す2体の悪魔を、十数メートル離れた崖の端から覗く済んだ瞳。
鼻より上の、目と眉と黒髪だけが悪魔達を覗いている。
それらは崖下へ引っ込み、ポニーテールを結んだ頭を乗せた長い首がするすると縮んで2体の悪魔の死角で身を潜める胴体に収まる。
彼女は密偵妖怪エージェント66β。
黒服に赤いネクタイ、きめ細やかな肌、豊かに膨らみ程よく引き締まった曲線美。
妖怪諜報部で最も優秀な女スパイ。
見聞きした情報を持ち帰るべく、音を立てずに立ち上がったその時……。
「あら、もうお帰りなの? 素敵な妖怪ちゃん」
目の前に現れたのはラクダ型メカに乗ったグレモリー。
「そんなに急がないで、ワタクシと遊んでいきませんこと?」
「お誘いありがとう。でも私は早く帰ってシャワーを浴びて、金ビキニを着て自撮りしたいの」
「き!?ん!?ビ!?キ!?ニ!?!?!?!?!?!?!?」
「そう。『ゴールデンウイークには金ビキニ』というのを聞いて、ゴールデンウイーク中にみんなに見てもらいたかったんだけど上の妖怪から止められて」
「上の妖怪ちゃん! なんで止めるの上の妖怪ちゃん!!!」
「だからせめて今からでも自撮りだけして楽しもうかなって」
「今! ここで! 着て見せて!」
「持ってきてないの。だから帰らせて。家で金ビキニが寂しがってるわ」
「あなたが帰っちゃったらワタクシが寂しがりますわ!!!!!!」
「あー、金ビキニ着たニンギョとユキオンナ!!!」
「ゑゑ!? どこ!? どこ!?!?!?」
指差した先をグレモリーの血走った視線が暴れ回っている隙に、エージェント66βは胸元からスパイ妖怪七つ道具の一つ「緊急脱出用煙玉~過ぎ去りし青春の香り~」を取り出し、自分の足元に投げた。
牛乳を拭いて洗わずに一週間放置した雑巾の臭いがする白煙が辺り一面を覆い隠す。
「うううええええっ!!!」
ラクダ型メカの上でえずきながらエージェント66βを探すグレモリー。
煙が風に搔き消されると、遠くに自分よりも激しくえずきながら両腕両足を直角に曲げた体勢で走り去っていくエージェント66βが見えた。
「ヴヴヴヴヴヴヴヴヴゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「自分にも効くならやらなければいいのに。待ってええええええ!!!!」
「追うな、グレモリー!」
ラクダメカの向きを変えたグレモリーの背中にベルゼブルが声を掛ける。
「奴がここの場所をヨーカイジャーに伝えてくれれば、誘き出す手間が省ける」
「でもワタクシ、あの子の金ビキニが見たいの!!!」
「あー、そういう事情なら止めはしな……いやいや待て待て、これからアスモデウスを治すついでにパワーアップさせるから、お前も手伝えYO!」
「見たいの金ビキニ!!!!!」
「そしたらさっきより激しい巨大妖怪の戦いが見られるZE!」
「やりますわー!!!!!」
グレモリーはラクダメカの足を巨大アスモデウスの方へ向ける。
再び妖怪の里・妖怪大病院。
智和は個室のベッドで上体を起こし、ネネコガッパから返されたタブレットでエージェント66βからの報告を読み上げる。
「尚、ゴールデンウイーク中に着る機会をいただくことができなかった金ビキニの件ですが…………この先は読む必要無いな」
金ビキニが気になる人は、他になにもやることが無くて暇で暇でしょうがない時にX(旧Twitter)で「密偵妖怪エージェント66β 金ビキニ」で検索してくれてもいいししてくれなくてもいい。
智和はタブレットをネネコガッパに渡す。
「相変わらずだなロクロクビ」
「優秀な奴ほどクセが強い、妖怪あるあるだな」
「そのクセが強い妖怪ってのにオレも含まれてねえだろうな? 嫌だぜあんな、コードネーム名乗る決まり無いのに勝手に名乗ってるような奴と同類なんて」
「まあ、あんなんでも仕事はきっちりやってくれるから良しとしよう」
智和は軽くストレッチしてからベッドを降りる。
「おいおいおい大丈夫なのか?」
「入院は念のためって言われたからな、念のため動けるヨーカイジャーを集めて、念のため奴らと決着つけに行かないと」
動けるヨーカイジャー、結果的に6人全員が病院前に集合。
さわやか草原に集まっていた巨大妖怪達もこちらへ移動してきた。
「しかし迷うなー。またベルゼブルが巨大化してくるならスピード重視でカラステング中心のムゲンオーがいいだろうし、あのアスモデウスだっけ? あいつとまた戦うならパワー重視でゲキリンダー中心のムゲンビルダーがいいだろうし……」
「そっか、拓実くんこれからは悪魔が巨大化したらカラステングとゲキリンダーどっち呼ぶか選ばなきゃいけないんだ」
「うーん、智和どうしよう?」
「そうだな、どっちもメリットあるけどここはアスモデウスとの戦闘経験があるムゲンオーでいくのがいいんじゃないか?」
「なるほど、さすがヨーカイジャーのGrok・智和君!」
「それ褒められたのかどうか後でGrokに聞いてみるわ」
「つーわけで、頼むぜカラステング!」
〔任せろ相棒!〕
カラステングは宙返りしてポーズを決める。
〔では俺はさっきの占いの続きを〕
〔いや、ブルクダンも行くから占いはできないぜ?〕
〔そうだった〕
〔占いは1日1回とかにしたほうが楽しみが長く続くんじゃね?〕
〔それも悪くないだろう〕
その時、ブルクダンの2本の角が激しい光を放ち始めた。
〔モォ~~~~~~~~~~!!!!!!〕
ザシキワラシが指差して叫ぶ。
「ブルクダンの予言能力が発動した!!」
〔モ~モモモ~、モモモモモ~、モ~モモ~モモモモモモモ~~~~~~~~!〕
一同、首を傾げる。
「どういう意味だ?」
〔どういう意味だ?〕
〔さっぱりわからない〕
「うーん……」
「待った待った待った!」
千影が前に出る。
「妖怪の言葉わかる組とわかんない組の『どういう意味だ?』は意味が違うよね? えっと、わかる組が、カラステングとゲキリンダーと……」
空中にいたオボログルマとイッタンモメンが下りてきた。
〔ブヒブヒブヒ〕
〔ブオオオオオオオオオン!〕
「ありがたいけど、君達が通訳してくれてもわかんないの。で、ザシキワラシと、智和?」
「ん?」
「ブヒブヒブヒとかブオオオオオオオオオン!より早く通訳してほしかった」
「あー、すまない。つい空気を読んで首を傾げてしまってた。予言はこうだ。『清らかなる調べ 戦場を満たす時 足は減り また増え 血塗られた花は散り めっちゃいい感じになるであろう』」
「予言で『めっちゃいい感じ』って何だよ」
「言葉とは常に変化していくものでござる。令和の世、予言に『めっちゃいい感じ』とあっても何もおかしくはなかろう」
「現代を生きる侍がそう言うなら」
「スルー推奨でござる」
智和が再び傾げていた首を戻し、ムゲンブレスで地図を表示して確認する。
「『戦場を満たす時』ということは、奴らが潜んでいる場所へ行けば予言の意味がわかるかもしれない。とにかく行くぞ!」
初期メンバー5人はカラステングに、ザシキワラシはブルクダンに搭乗。
オボログルマ、イッタンモメンと共にアスモデウスが潜む岩山へ向かう。
報告にあった岩山の上空、変身したヨーカイジャー達はコクピットのモニター越しに巨大アスモデウスを目にする。
半分程になっていた翼は元通りに、右手はヤンバルクイナの顔のように、左手は赤いハイビスカスのようになっており、胸にはヤンバルテナガコガネのような装甲が付いている。
「なんか色々増えてる!!」
「来たな、ヨーカイジャー!」
巨大アスモデウスは左手のハイビスカスからマシンガンのように弾丸を発射。
カラステングとイッタンモメンは素早くかわし、ブルクダンは背中にオボログルマを乗せて正面から突っ込む。
オボログルマの鼻から発射される弾丸で巨大アスモデウスの弾丸を約8割相殺しながら、約2割の被弾に構わず突っ込み装甲の追加された胸に体当たりを食らわす。
「おりゃああああああ!!!!!」
〔モォ~~~~~!!!!!〕
「うぐっ!?」
巨大アスモデウスは一瞬怯むもこれを受け止め、両肩のヤマネコとヤギの口からブルクダンに火炎を近接発射する。
「ああああついいいいい!!!!! でもいけるよな?」
「モォモォ~~~~!!!」
ブルクダンはそのまま着陸。
コクピット内のシルバーが勢いよく操縦桿を倒すと、ブルクダンは更に押し込もうと地面に蹄を食い込ませる。
その勢いに圧倒され出遅れてしまったカラステングとコクピットの5人。
「無っ茶苦茶だなあいつら……」
「多少のダメージは気にせず突っ込む……。メンタルも含めた耐久力なら長老以上。それがブルクダンが新メンバーのパートナーに選ばれた最大の理由」
「拙者達もこうしてはおれん!」
「だよねだよね!」
「じゃ、本日2回目の……」
「サモン、パートナーズ!!」
妖怪の里から4体のパートナー妖怪が召喚され、カラステングと合体。
「完成、合体巨人・ムゲンオー!!」
5人声を揃えてその名を叫ぶ。
ムゲンオーは空中で右手の夢幻斬空剣を斜めに掲げてポーズを決める。
「行くぜ!」
レッドが操縦桿を倒し、ムゲンオーが巨大アスモデウスへ向けて降下を開始しようとしたその時、対面から巨大化しながら突っ込んできた巨大ベルゼブルの高速右ストレートが叩き込まれ数十メートル上空に吹っ飛ばされる。
「うわあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「忘れたか、今日はタッグマッチだYO!」
「忘れてねえよ!」
ムゲンオーは翼と四肢でブレーキを掛け体勢を立て直す。
「ザシキワラシー! そっちは大丈夫か!」
「大丈夫!!」
ブルクダンは地面を蹴り、巨大アスモデウスはそれを掴んだまま火炎放射を継続、イッタンモメンは尻尾のハブの牙をかわしながら体当たりを連発、オボログルマはブルクダンから降りて味方に当たらないよう角度を変えながら弾丸を撃ち込んでいる。
「大丈夫か大丈夫じゃないのかわかりにくい!!」
「とにかくこっちはベルゼブルに集中だ!」
「OK緑、それが賢明だろうZE!」
巨大ベルゼブルの急接近からの回し蹴り、ムゲンオーは両腕をクロスさせて防御する。
地上では巨大アスモデウスが火炎放射を続けながら、右手のヤンバルクイナで嘴攻撃を繰り返す。
背中から火花を散らされながらも、ブルクダンは巨大アスモデウスを押し倒すべく地面を蹴り続ける。
〔モォ~~~~~~~……!!〕
咆哮は震え、しかし力強さを失わず、熱気漂う戦場を震わせる。
高熱と突き刺し。
蓄積される痛み。
しかしブルクダンは全身の力を振り絞り、絞り続け、土埃にまみれながら目の前の敵に立ち向かう。
その時、ムゲンオーの左腕のネコマタンが突然分離、合体前の形態になり急降下して着陸。
日本足で立ち、妖力でピンクのスタンドマイクを生成する。
「あいつ、俺様みたいにマイクを生成できるのか」
「ネコマタン!? 何何!? 急にどうしちゃったの!?」
〔ニャニャニャ、ニャニャンニャニャー、ニャニャニャニャニャニャン!!〕
〔『私、ああいいうひた向きに頑張ってる子見ると、歌わずにいられなくなるの!!』だってよ〕
カラステングの通訳に続いて、キュービルンの妖力による生成文字がコクピット内に浮かぶ。
〔ひさしぶりに はじまっちゃった あのこはああなると もう だれにもとめられない〕
「そうなんですか長老?」
〔うむ……。奴のああいう極端な優しさは、欠点でもある。じゃが、強さでもある!〕
「そういやネコマタンってアイドル活動してるんだよな?」
「うん! あたし妖怪のお客さん達に混じってライブ見たことあるけど、すっっっごく可愛かった!!」
「ほう……」
巨大ベルゼブルは腕組みをして複眼全てにネコマタンを映す。
〔♪ニャニャニャニャニャンニャーンニャー ニャニャンニャニャニャーニャニャー
ニャニャニャニャニャーニャニャニャニャー ニャニャニャニャニャニャーニャニャー♪〕
「あれ? これどっかで聞いたことあるな……」
甘く爽やかな歌声を聞きながらも、ブルクダンは地面を蹴り続ける。
コクピットのシルバーはより強く操縦桿を握りしめ、オボログルマとイッタンモメンも諦めず攻撃を続ける。
苦しさに耐えながら走り続けるマラソンランナーのように。
「あ!」
レッドは気付いた。
この歌をどこで聞いたことがあったのか。
〔♪ニャッニャーニャニャーニャッニャニャーニャー ニャニャニャニャーニャニャニャーニャー
ニャニャニャニャニャニャー ニャニャニャニャーニャニャ ニャニャニャーニャニャーニャニャー♪〕
「これアレだ! マラソンの応援で歌われがちなアレだ!!」
「確かに! 全編猫又語だがアレでござる!!」
〔♪ニャニャニャニャニャ ニャッニャーニャニャニャ ニャッニャーニャニャニャ ニャニャニャニャーニャニャ♪〕
歌がサビに入った辺りから、巨大アスモデウスの足が少しずつ後退し始める。
「ベルゼブル! 歌を止めろ!」
「例え敵でも歌の邪魔は野暮! 歌わせた上で叶えようぜ俺様達の野望!」
「わざわざラップで答えやがって……クソォ!!」
巨大アスモデウスはヤギの顔をネコマタンに向け火炎放射。
「させるか!」
ムゲンオーが間に飛び込み、夢幻斬空剣で炎を切り裂く。
「カワイイ歌、邪魔しないで!!」
〔♪ニャンニャニャニャッニャーニャーニャニャニャ ニャッニャーニャニャニャッニャーニャニャーニャニャ♪〕
〔モォ~~~~~~!!!〕
咆哮と共にブルクダンが巨大アスモデウスの下腹部に角を食い込ませる。
「何ッ!?」
〔♪ニャニャーニャニャーニャ ニャーニャーニャーニャーニャーニャニャー♪〕
1番の終わりが歌い上げられると同時にブルクダンが全身の筋肉を使って巨大アスモデウスの体を真上に打ち上げ、そこを狙ってオボログルマのガトリング連射、続いてイッタンモメンの体当たりが命中し、吹っ飛んだ巨大アスモデウスをぶつけられた大岩が木っ端微塵に砕け散った。
「ぐっふぁあああああああああッ!?!?!?!?!?!?」
「やったやったやったー!!!」
コクピットのシルバーが両腕を挙げて叫んだその時、ブルクダン、オボログルマ、イッタンモメンからそれぞれの体色と同じ色の光が放たれ、それらが一つに集約されブルクダンのコクピットの中へ飛び込み、1枚のカードになった。
「これは……!!」
シルバーはそれが何に使うカードか、絵柄を見てすぐに理解した。
上空から見守っていた5人も、集約された光を見て何が起ころうとしているのかを把握した。
「いけえザシキワラシ!!」
「夢幻合体!!!」
シルバーがムゲンライザーにカードを入れ、ムゲンドライバーにセットすると、3体の妖怪達の体が宙に浮き、変形を始める。
ブルクダンの四肢と尻尾が折り畳まれながら体全体が直立、胴体下半分がスライドして2本に分かれて「足」になり、首から上の頭部が真っ直ぐに前を向く。
オボログルマの胴体前部が伸び、全体的にタイヤとガトリング砲の付いた腕といった形状になりブルクダンの左腕部分に合体。
イッタンモメンの尾が折りたたまれ、胴体前部が伸び、全体的に左右両側に鋭いカッターの付いた腕といった形状になりブルクダンの右腕部分に合体。
最後にブルクダンの首が回転扉のように回転、中から人型の顔が姿を表した。
その眼にはまだ、光は宿っていない。
「結月~~~~~~!!!! 名前付けてくれるんだろ~~~~~~~~!!!!?」
「もっちろーーーーん!!!! ……えっと、ムゲンオー、ムゲンビルダーってきて……オーの王様みたいに偉いっぽい名前にするのがいいと思うから……………………お!」
ピンクは手を「ポン!」と叩く。
「ムゲンショーグン!!」
「将軍!! 今までで一番拙者好みの名前でござる!」
「いいんじゃね?」
「結月天才!」
イエローが結月を抱きしめ頭を撫で、ピンクがイエローの背中に腕を回し返して頭を撫で返すが徐々に手の動きが緩くなる。
「どうだザシキワラシー!?」
「いいじゃん強そう!!」
巨大アスモデウスが硬い地面にヒビを入れながら起き上がろうとしている。
シルバーは深く息を吐き、吐いた数倍の息を吸ってその名を叫ぶ。
「完成、合体巨人・ムゲンショーグン!!」
その声が届き、合体巨人の目に光が宿る。
ムゲンショーグンは両腕の武器を交互に力強く前に突き出し、銀色の光を放ちながら腕を組んでポーズを決める。
〔ニャニャン!〕
その輝きに笑みを零し、ネコマタンは再び変形しムゲンオーの左腕に戻る。
「おかえりネコマタン! 今日のライブもNEWかわいかったよ!」
「ニャニャニャーン!」
「いっくぜええええ!!!」
ムゲンショーグンが左手のガトリングを連射しながら、巨大アスモデウスもハイビスカスの弾丸を連射しながら、両者前進。
ムゲンショーグンの弾丸は合体前より更に多くの、9割の弾丸を相殺。
残りの1割のダメージに構わず前進、近接したところで右手の鋭いチョップで巨大アスモデウスの左手のハイビスカスを切り落とす。
「うわああああっ!!!!!」
巨大アスモデウスは白煙が立ち上る左腕を押さえながら後退。
その様を見たグリーンが呟く。
「ネコマタンの歌、ブルクダンが2本足になり、両腕すなわち新しい前足が2本増え、アスモデウスの赤い花を切り落とした。つまり……」
イエローがピンクのマネをして手を「ポン!」と叩く。
「ここまで予言通り!」
「じゃあ後は……」
「めっちゃいい感じに!」
「なるだけでござる!!」
シルバーが気合いを込めて操縦桿を倒す。
「いっくぜえええええ!!」
ムゲンショーグンは後退する巨大アスモデウスに追撃のガトリングを放つ。
巨大アスモデウスは翼で上半身を覆う防御姿勢を取り、弾丸を全て弾き飛ばす。
「オイラが掴んだ、300年くらいすっ飛ばした未来! その力、もっとでっかい未来のために!!!」
その時、ムゲンショーグンのコクピット内全体が光り輝き、その光はシルバーの目の前に凝縮し、1枚のカードになった。
「これは…………めっちゃいい感じ!!」
シルバーが現れた必殺カードを掴み、発動させるとムゲンショーグンの全身を3色の光が駆け巡り始める。
「必殺大妖技・銀輝魔砕轟!!!!!」
ムゲンショーグンが高速移動しながら威力を増したガトリングを連射、初めはびくともしなかった翼も弾丸を受け続けたことで僅かなヒビが入り、そこへ妖力を込めた右手による下から上へ打ち上げるチョップ、翼が砕け胸の装甲から火花を散らしながら空高く飛ばされた巨大アスモデウスが落下してくるのに合わせ、ムゲンショーグンが大ジャンプ、光り輝く頭の角で装甲ごと巨大アスモデウスのボディを貫く。
「若者に……負けた…………なんくるないさああああああああああああああ!!!!!!!」
爆散。
「いいいいいいいやったああああああああああああああ!!!!!!!!」
ムゲンショーグンは両手を挙げ全身で喜びを表現する。
この勝利を上空から見守った5人。
レッドも全身で喜びを表現、グリーンはマスクの下で微笑み、ピンクとイエローは抱き合い、ブルーは感慨深げに頷いた直後、緊張感を取り戻しモニターを凝視する。
「ベルゼブルはどこだ!?」
張り詰めた空気が戻るムゲンオーのコクピット。
巨大ベルゼブルの姿はどこにも無い。
ベルゼブルは既に元の大きさに戻っており、ムゲンショーグンの背後に昇る黒煙に「チェケラ!」の指を向け、何処かへと飛び去っていった。
物陰から息を荒げながら戦いを見ていたグレモリーも、ラクダメカでどこかへと走り去っていった。
「また合体巨人ちゃんが増えた…………推し増し…………」
静けさを取り戻した岩山。
変身解除した6人と、並び立つ2体の合体巨人。
「これからもよろしくな、ムゲンショーグン!!」
ザシキワラシが笑顔で手を振る。
〔モォ~~~!!〕
銀色の巨人から聞こえた声に拓実がズッこける。
「その姿でもウシの声なのか……」
〔モォ~~~!!〕
「ってかやっぱ、俺と同じくらいの歳にしか見えない奴が『ザシキワラシ』って、『ワラシ』って違和感ねえか?」
「そっか? オイラは別にザシキワラシのままでもいいんだけど、ヨーカイジャーに入ったんだから、みんなみたいに人間っぽい名前が欲しい気もするな」
「名前といえば……」
千影に笑顔で背中を押され、結月が両手で敬礼する。
「ハイあたし! えーっと…………人間っぽい名前にするにしても妖怪らしさは残したいから………………………………お!」
手を「ポン!」と叩く。
「式神勝!」
「式神勝……ウン、いい! オイラ、式神勝!」
ザシキワラシ改め勝が天に拳を突き上げる。
「すげえな人間っぽい名前も考えられるんだな」
「結月は天才だから!」
結月は千影に頭を撫でられ頬をピンクに染める。
「しかし、『式神』はなんとなくわかるが、『勝』は何か由来がござる?」
「今ラップ調で言った?」
拓実がDJ風のジェスチャー。
「拙者としたことが蝿に触発されるとは……」
「えっとね、『勝』は何となく合ってると思ったから。そういうの、意味とか以上に大事でしょ?」
「だな! オイラも合ってると思う! いい名前ありがとう! ネコマタンも、いい歌ありがとう!」
〔ニャニャニャニャーン!!〕
智和は盛り上がる仲間達を見つめ、胸の奥から湧き上がってきた確かな希望を噛みしめる。
「長老! 新しいヨーカイジャーと、新しい合体巨人!」
〔うむ。でっかい未来、掴めるじゃろう!〕
銀色に反射した光を浴びながら、智和も仲間達の「ま!さ!る! ま!さ!る!」コールに参加する。
【to be continue……】