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episode:13 千影ちゃん誕生日サプライズだーいさーくせーん!!

この作品は天道暁によるオリジナルのスーパー戦隊作品です。現在放送されているスーパー戦隊シリーズを制作・放送している各団体とは一切関係ありません。


オープニングテーマ「your kind!」


https://ncode.syosetu.com/n7284ka/1/

人類保護推進委員会事務局施設、改めヨーカイジャー秘密基地。

普通の区役所のようだった外観が、所々にメンパーカラーのペイントが施されるなど秘密基地らしく整えられている。


中央棟最上階に位置する作戦司令室に、1人を除いたヨーカイジャーメンバーが集合。


敗北の痛みを乗り越え、新たな合体巨人と共に敵幹部を打倒したものの、残された傷跡は決して小さくはなかった。


カラステングは未だ療養中、破壊された街の復興は始まったばかり、そして拡散された情報の制御にはこれまで以上の困難を強いられた。


そして今、作戦指令室のモニターにヨーカイジャー達が挑む新たな任務の概要が映し出される。



episode:13 「 千影ちゃん誕生日サプライズだーいさーくせーん!!」



結月がモニター上部に黄色い文字ででかでかと表示されている一行を元気よく読み上げた。


「えぴそーどさーてぃーん? なんだそれ?」


「え? あたしそんなこと言ったっけ? さてさて! 今、キュービルンが妖怪稲荷神社で千影ちゃんの足止めをしてくれてます! その間にやることが~~~~~~~~~~、これっ!!」


結月が大げさな腕の振りから両手人差し指で指差した先に表示されているのは以下の内容。


・結月は予約してある誕プレを受け取りに行く


・拓実くんと智和くんはほのぼの農場にお料理の材料を受け取りに行く


・武士くんは陽だまりの丘のお菓子工房にお願いしてあるケーキを受け取りに行く


・戻ってきた人から食堂に集合


・集合したら結月と智和くんでお料理、拓実くんと武士くんで飾り付け


・完成したら結月が千影ちゃんに連絡して食堂に来てもらう


「おっけーカンペキっ!」


挿絵(By みてみん)


千影への誕生日プレゼントを買うために頑張った生まれて初めてのアルバイト。

その給料は約2週間前に振り込まれていたが、その直後に巨大軍艦バジマとの戦いがあったためなかなか店に行くことができず、用意できるのが誕生日当日の今日になってしまった。


「それじゃあみんな、行動開始ぃ~~~~~~~~~!!」


挿絵(By みてみん)


結月の勢いで他3人はところてん状に作戦指令室から押し出され、それぞれが結月の計画に従って移動を開始。

結月も千影の驚く顔を思い浮かべ、顔の熱さと胸の高鳴りを手で抑えながら走り出す。



数分後、誰もいなくなった作戦指令室の自動ドアが開く。


「あおっふ……」


千影はモニターにでかでかと表示された文字が視界に飛び込んできて一歩後退。

自動ドアがいつもより静かに閉まった気がした。



episode:13 「 千影ちゃん誕生日サプライズ(気付かないフリ)だーいさーくせーん!!」



※当初の予定よりサブタイトルが変更となってしまったことをお詫び申し上げます。



少しだけ時を戻して見てみよう。


妖怪稲荷神社で、千影に悩みを聞いてほしいというキュービルン。

妖力で文字を生成して、石段に腰かけた千影に見せる。


〔かわで さかなや うなぎをとってる にんげんがいて そのさかなや うなぎを ほんの いたずらのつもりで にがしちゃったんだけど……〕


「うん」


小さな頷きに揺れる茶髪を優しい初夏の日差しが通り抜けていく。


〔そのうなぎは びょうきの おかあさんに たべさせるための やつだったの〕


「うん……」


〔だからおわびに くりとか まつたけを そのにんげんの おうちに なんにちか つづけて とどけてたんだけど……〕


「え、栗とか松茸? それいつの話?」


風に誘われた緑の木の葉がハーフパンツの裾から覗いた千影の膝の上に乗る。

透き通るような肌に乗った木の葉を指で摘み、ふっと一息優しく吹くと、木の葉はまた風に乗ってどこかへ旅立っていった。


〔あ えっと それで そんな あるひのこと いつものように くりとか まつたけを とどけにいったら そのにんげんは またわたしが いたずらしにきたと おもって わたしを じゅうで うったの わたしは へいき だったけど たおれなきゃ あやしまれるかとおもって やられた フリして〕


「待ってそれ、すごいどっかで聞いたような話なんだけど……」


〔じゃあ このはなしは もういいや〕


「いいの?」


〔うん それより わたしは パートナーようかいの なかで いちばん ちいさいから みんなのやくに たててるのか きになっちゃってるの〕


「あー、そういうこと。大丈夫、キュービルンの幻を見せる能力は、戦いでも、今みたいに人間と話すときでも役に立ってるよ」


〔そう?〕


「もちろん! そうだ、ちっちゃいことの悩みなら、結月に相談したらいいかも」


千影はムゲンブレスの通信ボタンを押す。


《ち、千影ちゃん!? 今どこ!?》


「え、妖怪稲荷神社。キュービルンと一緒」


《そっかー! あたし今忙しいから後でねー!》


通信を切られた。


千影は首を傾げ、他のメンバーにも連絡してみるが、全員何かをはぐらかすかのように一方的に通信を切ってしまう。


「みんななんか変だなー。特に拓実、最近流行ってるダンスとかやられても声しか聞こえないんだから意味無いでしょ……。キュービルン、秘密基地まで乗せてって。智和とかいるかも」


〔わたしいま コクピットの ぐあいが わるくて〕


「ああ……最近きつい戦いが続いたもんね」


〔そうなのそうなの〕


「じゃ!」


千影はヨーカイイエローに変身、ムゲンブレスにライジュウの召喚(サモン)カードを入れる。



時は進んで再び現在、ヨーカイジャー秘密基地入り口前。

マスコットサイズのキュービルンが、バイクサイズのライジュウを9本の尻尾でぺちぺち叩いている。


ライジュウは、「俺はハンドルを握らせた奴を行きてぇ所まで乗せてくだけだ」とでも言いたげな涼しげな表情で痛くも痒くもない攻撃を受け続けている。


千影が建物から出てきた。


「ゑゑーっと、あんた達は知ってたの?」


〔たくみの ダンスのこと?〕


「じゃないほうのやつ」


〔コン……〕


〔ブンブン〕


「うーん……」


頭を掻きむしっても手を離せばすぐに髪型が整う。


「お願い! 私が気付いちゃったこと誰にも言わないで!!」


〔コンコン!〕


〔ブンブン!〕


「うーんっと……それじゃあ、ここにいないほうがいいよね。とりあえず、どっかその辺走ってこようか」


千影はライジュウに跨り、キュービルンが化けたヘルメットを被って行き先を決めずに走りだした。



一方その頃、関東某所の時計屋から小さな紙袋を大事そうに持った女性が出てきた。


女性は人気ひとけの無い路地裏に入り、紙袋の中を確認する。

中身はゴールドの高級腕時計。

瞳の表面を揺らし、紙袋を閉じて歩き出そうとしたところで足が止まる。


眼前に現れた異様な存在――――シカのような頭、青銅色の大仏のような体、背中には金魚を平たくしたような2枚の翼、燃える茶筅のような尻尾、右腰には柿の葉に包まれたような模様の付いた手の平サイズの直方体の物体が付いており、左腰には刀のような物をさげている。


女性は向きを変えて走り出す。

しかし、足首に強烈な痺れを感じて前のめりに転倒し、大事に持っていた紙袋をアスファルトの地面に放り出す。


シカ頭の異様な存在が、金魚のような翼を動かしながらゆっくりと、高級腕時計が入った紙袋の上に降り立ち鈍く乾いた破壊音を鳴らす。


「あああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」


女性が絶叫すると、頭から黒いモヤのような物が立ち昇り、シカ頭の角に吸収され始める。


女性はアスファルトを這い蹲って青銅色の足に縋りつく。


「返して! それが無いと、流星君に振り向いてもらえない!!!!」


「は?」


シカ頭は片足を上げ、高級時計を改めて強く踏み砕く。


「いやあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」


黒いモヤはより色濃く、大量に立ち昇り、勢いを増して角に吸収されていく。


「フルフル~?」


声を掛けたのは、ラクダ型メカに乗った悪魔帝国デモンダイムの女幹部・グレモリー。


「あなたの名前、何度も声に出して言いたくなるわね」


「グレモリー様、その美しいお声で何度でもおっしゃってください」


「フルフルフルフルフルフルフルフル、調子はどう?」


フルフルは足に縋る女性を横目で見下ろす。


「この人間、なかなかいいデビルギーを出します。しかし、何の役に立つのかよくわからないちっぽけなオモチャが壊れたくらいで、なぜこんなに負の感情を沸きあがらせるのでしょう?」


「人間は物を手に入れるとき、『お金』という物を使うの。働いてお金をもらって、そのお金を他の人間に渡して、それと引き換えに欲しい物をもらうの」


「なんと非効率的な。我々のように、欲しい物があれば弱い物から奪うか、強い者に傅いて施しを求めれば良いものを。この下等生物どもはそんなことも思い付かないほど頭が悪いのですか?」


「そうみたいね。あなたが壊したオモチャ、見たところ人間にとってはかなり珍しい物質を材料にして作られているわね。これを手に入れるには、きっと沢山のお金が必要だったはず」


「当たり前でしょ!! 推しにプレゼントするための18金イエローゴールド……」


「生意気な口を利くな!!!!!!」


フルフルは女性の背中を力一杯に踏み付ける。

女性は口も体も心臓も動かなくなった。


「死にました。こいつらは頭が悪い上に生きる努力もできないのですね」


「そう、デビルギーを出せなければ何の価値も無い生き物よ」


「『おしにぷれぜんと』とは?」


「他の人間に物を与えて気を引こうとしていたのよ」


「はぁ……馬鹿馬鹿しい」


フルフルは自分の頭の2本の角を軽く引っこ抜く。

すぐに新しい角が生えて元通りになる。


「角2本分のデビルギーでございます。どうぞお収めください」


フルフルは跪いて角を差し出す。

グレモリーはそれを受け取り、フルフルに暖かい微笑みを向ける。


「サタン様復活にまた一歩近付いたわね。その調子でこれからも励みなさい」


「は! 勿体なきお言葉!」


「そこの抜け殻はいつものように処理しておくのよ」


「は!」


フルフルが尻尾の炎を女性の遺体に当てると、遺体は一瞬で灰になった。


跪いて頭を下げるフルフルを背に、グレモリーはラクダ型メカの足で歩きだす。


(そろそろまたムゲンビルダーちゃんが見たくなってきたわね……キンキラ合体巨人尊い…………)



妖怪の里・ほのぼの農場。


訪れた拓実と智和に、艶やかな緑の髪を靡かせる人間の女性に似た妖怪が、野菜や肉や牛乳といった食材が満杯に入った段ボール箱を1つずつ渡す。


瑞々しい食材の重みと共に、妖怪の緑の髪から漂う甘い植物質の香りが拓実の感覚器官に命と触れ合う喜びのようなものを染み渡らせる。


拓実と智和が感謝を伝えて秘密基地の方角へ足を向けようとしたその時、1匹の虻が飛んできて妖怪の緑の後頭部にくっついたウツボカズラのような物に入っていった。


ウツボカズラのような物の蓋が閉まると、妖怪は恍惚の表情を浮かべる。


「はぁ~…………美味しい…………」


拓実に呼吸のしかたを思い出させるため、智和が解説する。


「食中妖怪フタクチオンナ。後ろの口で虫を食べて生きている」


「前の口は?」


「前の口では何も食べない」


「しゃべる専用か」


挿絵(By みてみん)


秘密基地への道を歩きながら、拓実が呟くように話し始める。


「ところでさ、レヴィアタンの軍艦の攻撃って、テロリストの仕業ってことになったんだよな?」


「ああ。それも国際問題とかにならないように、日本のテロ組織の犯行ということになった。ムゲンビルダーもカシャもステルスモードで一般人には見えなかったから、テロ組織の飛行兵器は機械トラブルにより大破、犯人は全員死亡、ということにできた」


「で、妖怪治安維持部隊は善意のコスプレ自警団?」


「名前も名乗らず去っていったすごく良い人達、ってネットに書かれる方向まで誘導できた」


「ナマハゲがご当地ヒーロー扱いされてたのは笑ったけどさ、こういうのいつまで続けるんだ? そのうち隠しきれなくなってくぞ?」


「俺もそう思うんだが…………妖怪にとって人類は保護対象だから、妖怪の存在を知られて、人類の健全な進歩に影響を与えるようなことがあってはいけないってのが、世界的な妖怪達の考え方なんだ」


「世界的か……。じゃあ妖怪の存在隠すのやめようぜとかメガガッパーにだけ言ったとしても意味ないってことか」


「長老も立場とかあるからな。それに、妖怪の存在をうっすら信じてる人間はそれなりにいなくもないけど、それがうっすらじゃなくなったら、妖怪達の平穏な生活が脅かされる可能性があるってのも」


「ああ……静かに暮らしたい妖怪もいるだろうしな。人間がみんなで妖怪探しとかやりだしたら、家バレした配信者どころの騒ぎじゃなくなっちまうか」


「妖怪と人間が互いを尊重しあって生きていける世界、ってのが理想的ではあるんだがな……」


智和の脳裏に浮かぶ、妖怪達と楽しそうに触れ合うヨーカイジャーメンバーの姿。

世界中の人間が彼らのように、世界中の妖怪が彼らのように、手を取り合って生きていけたら……


世界中の人間と妖怪が、数メートル向こうの道にいる千影とライジュウのように……


「あ」

「あ」

「あ」


「千影! あの、えっと、最近流行ってるダンスってこういうやつ!」


拓実は自分が抱えていた段ボールを智和が抱えている段ボールの上に乗せ、体を揺らし足をリズミカルに上下する動きを見せる。


「…………あー、あのフクロウの雛が走ってるやつー? 私もそれ好きー! じゃあねー!」


「じゃあねー!」


千影はライジュウに乗りどこかへ走っていった。


「…………食材運んでるとこ見られたって結月に伝えなきゃ! かな?」


「いや、多分これ見ただけで誕生日パーティーとか気付かれないだろうから伝えないで大丈夫だろ。それよりもうちょっとで俺の腕の筋肉からデビルギーが立ち昇ってきそうだから早く自分の分持ってくれ」


「あー、ギリギリ洒落になるレベルの冗談言わせちまってすまんかった」




陽だまりの丘・お菓子工房。

コクピットに武士を乗せて飛ぶカマイタチが近付くと、3体の妖怪の楽しげな歌声が聞こえてきた。


「小豆研ごうか 研がずに食おか シャキシャキ~♪」


「小豆計ろか 目分量でいいか シャカシャカ~♪」


「小豆茹でよか 大豆混ぜてやろか ホクホク~♪」


お菓子工房前に降り立ち、目からビームを出して武士を降ろす。


武士は歌声に負けない声量で声を掛けて自動ドアをくぐる。


「頼もうーーーー!!」


武士を迎えるのは、3体の人間サイズのアズキゾウムシのような妖怪。


赤いエプロンが豆洗(まめあらい)妖怪アズキアライ。


「おおヨーカイブルーの人! 出来てますよ、小豆要素一切無いバースデーケーキ!」


青いエプロンが豆計(まめはかり)妖怪アズキハカリ。


「きっと喜んでもらえますよ、小豆要素一切無いバースデーケーキ!」


緑のエプロンが豆茹(まめゆで)妖怪アズキババア。


「ワシらは小豆要素一切無い菓子も作れるからの。美味しく出来ておるぞい、小豆要素一切無いバースデーケーキ!」


「…………すまぬ、お主ら。今度おはぎでも頼みに来させてもらう」


武士は小豆色の箱に綺麗に箱詰めされたバースデーケーキを小豆色の渋い紙袋に入れた物を受け取り店を出て、再びカマイタチのコクピットに乗り飛び立つ。


手を振り見送る小豆3妖怪。


と、アズキアライが少し離れた位置に人間の匂いを感じ取った。


「おお~、そこにいるのはヨーカイイエローの人! 今、小豆要素一切無いバースデーケ……」


旋回して頭上を飛び越えていったカマイタチが起こした風圧に転ぶ小豆3妖怪、ケーキのことを口止めされていたことを思い出した。


「な、なんでもないなんでもない!」


「なんでもないようなことが~」


「ありゃ? そっちに行くか。ワシゃ原始人の歌のほうかと思ったぞい。どっちにしてもイエローの姉ちゃんが生まれる前の時代の歌じゃろうがの」


千影はヘルメットのキュービルンとバイクのライジュウに囁く。


「妖怪の里にいると誰かしらと鉢合わせちゃうね。どっか他行って時間潰そうか」


千影は妖怪の里出口にハンドルを向け走り出す。



関東某所のバイク用品店。

結月が初めてのアルバイト代で買うのは、黒地に黄色いラインの入ったバイクグローブ。


「プレゼント包装でお願いします」


「110円ちょうだいいたしますがよろしいですか?」


「えっと……」


ピンクの猫柄の財布を覗いてみる。


「もう、500円分くらいやっちゃってください!」


「110円で結構です……」


店を出て一回転ターン、瞳の奥を揺らしながら、ビニール袋の中のプレゼント包装されたバイクグローブを見つめると、ピンクと黄色に彩られた感情がカラフルに沸き上がる。


「喜んでくれるかな……」


綻ぶ頬に優しくネコパンチ、あともう一仕事・クリームシチュー作りが待っている。


挿絵(By みてみん)


気合いを入れ直し、ステルスモードのネコマタンを待機させている人気(ひとけ)の無い空き地へスキップで駆けていく。


道路を挟んで反対側の歩道から、千影は結月が店を出てからの一部始終を見ていた。

ライジュウは妖怪の里に残し、マスコットサイズのキュービルンと行動している。


「可愛い……」


思わず声が漏れたが結月には聞こえていない。


バイクを買った頃から使い続けているグローブがだいぶ傷んできていて、そろそろ買い替えようと思っていると、一度だけ話したのを結月は覚えてくれていた。


反対側の歩道で揺れていたツインテールとスキップの足が止まる。

周りを確認しだしたので千影は看板の陰に隠れる。


結月は左腕に向かって何かを話し、走り出した。


千影は自分の左腕のムゲンブレスを見る。

鳴らない。


「私、誕生日でも普通に戦うけどな……」


「コン……」


千影も結月を追って走り出す。




「返して!!」


必死で走る女性、その前方には赤ん坊が乗ったベビーカーを片手にぶら下げたフルフル。

わざと女性がギリギリ追いつけない程度のスピードで低空飛行しながら寂れたビル街に入った。


「人間は持ち物を壊すと大量のデビルギーを放出する。また試してみるか」


ぶら下げていたベビーカーを真上に放り投げ、両角に電撃を溜める。


「あああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」


絶叫とベビーカーが空高く舞い上がったその時、上空にステルスモードのゲキリンダーが駆け付けた。


〔ヨーカイジャー、空中から奇襲攻撃だ!!〕


ゲキリンダーの目から短めに放たれたビームにより、変身前の男子メンバー3人が空中に放り出された。


「くぁwせdrftgyふじこlp妖怪変化!!!!!!」


落下しながら同時変身、レッドが体を捻って自身の落下軌道をひん曲げベビーカーを腹でキャッチ、そのレッドをブルーが足で挟んだまま頭を下にして落下、勘と勢いで体を動かしグリーンが両足の裏を強打しながら着地、棒のようになったブルーの体を抱きかかえるように受け止めた。


〔よかった、ベイビーは助かった〕


「ベイビーしか助かってねえんだよ変身前に落とすな!!!!」


「言わなくてもわかると思ってたから言わなかったけど、人間はあの高さから落ちたら死ぬ!!!! 言わなくてもわかると思ってたから言わなかったけど!!!!」


「世が世なら打首獄門お家お取り潰しでござる!!!!」


〔Oh Yey! 音律節? アイドルソングか何かか?〕


レッドは海老反りジャンプから地面に着地、ブルーも丁寧に下ろされた。


「とにかく、ベイビーは助かった。どぞ! 早く逃げてください」


レッドは女性にベビーカーを引き渡す。

赤ん坊は無邪気に笑っている。


「ありがとうございます! あの……もしかしてあなた達が、ネットで話題のコスプレ自警団?」


「まーあいつらの仲間ではあるんですけど……とにかく逃げてください!」


「はい! ありがとうございます!」


ベビーカーを押して走っていく女性を見送ったグリーンはムゲンブレスで妖怪情報統括班に連絡する。


「ヒトツメコゾウ、そっちに向かったベビーカーを押している女性の避難誘導と記憶操作を頼む」


≪了解です!≫


「貴様らがヨーカイジャーか!」


フルフルは左腰の刀を抜く。

その先は筆のようになっていた。


「ほう、面白い刀でござるな!」


「刀に興味を示す青い奴……そうか、貴様がレヴィアタンを斬ったという……」


「死んだ幹部に『様』は付けないってか?」


「俺は前からあんな脳味噌筋肉より、聡明で美しいグレモリー様をお慕いしていたのだ!」


「あんな変態を?」


「そこがいい!!」


筆のような刀を振ると、レッドに向かってマンホール大の茶色い円盤状のエネルギー体が放たれた。


レッドはそれをハイジャンプでかわし、振り向くと真っ二つになった自動販売機から大量の飲み物が転げ落ちていくのが見えた。


「やっべえ……」


フルフルは右腰に付いている柿の葉に包まれたような模様の直方体の物体を取り外し、


「いきなはれ、ジャミリアー!!」


と叫びながら放り投げた。


直方体の物体は空中で弾け、中から人間サイズの使い魔、ジャミリアーが8体現れた。


「ジャミジャミ!」


ジャミリアー達は剣を振り上げリズミカルに足を鳴らし、ヨーカイジャーに向かって走り出した。


「いくぞ!」


「オウ!」


グリーンの合図でヨーカイジャー達も走り出す。



「使ってみるか……」


レッドはムゲンブレスにゲキリンダーの装備(アームズ)カードを入れる。


するとムゲンブレスが普段付いている位置より少し肩に寄った位置に移動し、左手に白と金色で彩られた煌びやかなデザインの籠手が装備された。

手の甲の位置に金色の丸いダイヤルが付いており、その中央にデジタル表示の「0」という数字。

手首より少し下の位置にボタンが一つ。


カードに記されたその武器の名は……


「クロノスマッシャー!」


飛び掛かってきたジャミリアーに左拳のパンチを繰り出す。

火花が散り、ジャミリアーを後退させたが、いつも使っているフェザーガントレットを装備した攻撃ほどの手応えは感じられない。


後退したジャミリアーが体勢を立て直し、他の3体と共にレッドを取り囲む。


レッドはダイヤルを回してみる。

一周させても何も起きない。

軽い力で回りそうだったので、ジャミリアー達の攻撃をかわしながらダイヤルを操作する手を素早く動かし高速回転させてみた。

するとダイヤル回転10周ごとにデジタル表示の数字が1つずつ大きくなり、ジャミリアー4体による一斉攻撃をかわして距離を取ったところで、表示されている数字は「20」まで上がっていた。


「で、これ押したらいいのか?」


ボタンを押すと、走ってくるジャミリアー達の動きがスローモーションのようになった。


「ん!? 智和これ……」


グリーンとブルーがそれぞれジャミリアー達とスローモーション同士で戦っているのが見えた。


フルフルに目を向けると、同じくスローモーションのような動きで角に力を込めているようだった。


「そうか、俺がめっちゃ速くなってるんだ!」


クロノスマッシャーの数字を見ると、「11」から「10」に減ったところだった。

仕組みを理解したレッドが焦り気味にゲキリンダーの必殺(フィニッシュ)カードをムゲンブレスに入れると、レッドの体全体が金色の光を放ち始める。


必殺妖技(ひっさつようぎ)・時空百裂拳!!」


周りがスローモーションに見える状況で更に加速、4体のジャミリアーに超高速の連続パンチを浴びせる。


スローモーションで吹っ飛ぶジャミリアー達の間をすり抜け、フルフルのボディに超高速の左ストレートを1発入れたところでデジタル表示の数字が「0」になり、ジャミリアー4体は爆散。

フルフルはパンチにのけ反り、角から放たれた電撃が無人の背面への空撃ちとなった。


「ぐはッ……!? ジャミリアーどもが突然吹っ飛び、貴様が突然俺の懐に入り一撃を……。恐らく超高速での移動や攻撃が可能となる技を使ったのだろう。だが、それも俺に致命傷を与えるには到底及ばなかったようだな!」


「確かに……一発の威力は天狗百裂拳のほうが上みたいだ。そのかわりこっちは目に見えないくらいの超高速パンチを打ちまくれるってことか。上手く使いこなせれば……」


ビルの上から見守るゲキリンダーが、新しい武器を見つめるレッドを見下ろし呟く。


〔そう……時の流れに干渉する能力は、本来人間には過ぎた力。俺が君に与えることができるのは、ここまでだ。だが君ならきっと、その力を使いこなし、世界に平和をもたらすことができるはず……〕


フルフルは後退して間合いを取り、再び角から電撃を放つ。

レッドは目の前の敵に視線を戻し真横に身を翻し電撃をかわす。


かわされた電撃の行く先には、ビニール袋を抱きかかえツインテールを揺らしながら走ってくる少女。


「結月避けろ!」


「!!?」


電撃を避けようと踏み込む方向を変えた足が地面に転がっていた清涼飲料水のペットボトルを踏みつけてしまいバランスを崩して転倒。

打ち付けた体は痛むが電撃は当てられずに済んだ。


だが、起き上がった結月の視界に入ってきたのは、転倒と同時に結月の腕から投げ出され、悪魔の電撃を浴びて溶けたビニール袋。

その中身は、プレゼント包装ごと黒焦げになったバイクグローブ。


「えっ…………熱っ……!」


拾い上げようとして熱さで手を引っ込めてしまう。

目から落ちる雫が焦げたバイクグローブを濡らす。


「二つ括りの雌人間、ヨーカイピンクか。奴のデビルギーを回収すればグレモリー様もさぞお喜びに……」


しかし、フルフルが近付いても、結月の頭から黒いモヤは立ち昇らない。


「なぜだ……なぜデビルギーを出さない……?」


「教えてあげようか?」


座り込んだ結月の後方、ゆっくりと、しかし一歩一歩強く踏み込み進む足の先から頭の上まで一本の芯が通ったように背筋の伸びた姿勢、茶色のショートヘアを揺らすのはいつもの穏やかな風ではなく、瞬きの度に零れる光には少しの優しさと、激しい熱が込められていて。


「千影ちゃん……!!」


「ヨーカイイエローか」


挿絵(By みてみん)


「私、デビルギーのことはそんな詳しくないけど、結月のことならわかる。デビルギーって、人間の負の感情から生まれるエネルギーなんでしょ? 結月は純粋で真っ直ぐだから、泣いたり怒ったり、人一倍真っ直ぐにしちゃうけど、それは負の感情なんかじゃない。誰かのために泣いたり、怒ったり、喜んだり笑ったり、そんな心が、あんた達のボスを蘇らせるためのエネルギーになんかなるわけない! 妖怪変化!」


千影がムゲンブレスに変身チェンジカードを入れると、一瞬にして色鮮やかな黄色い戦闘服を身に纏い、右腰にはカードケース、左腰のホルダーにはムゲンソード、そして頭にはキツネの器用さと九尾の狐の幻惑能力を彷彿とさせる黄色いフルフェイスマスクを装備した。


結月はヨーカイイエローの背中を見ながら立ち上がり、袖で涙を拭ってムゲンブレスに変身チェンジカードを入れる。


「妖怪変化!」


結月は一瞬にして色鮮やかなピンクの戦闘服を身に纏い、右腰にはカードケース、左腰のホルダーにはムゲンソード、そして頭にはネコの愛らしさと猫又の柔軟性を彷彿とさせるピンクのフルフェイスマスクを装備した。


「小賢しい……」


フルフルがまた電撃を放つ。

ピンクとイエローは左右にかわしながらそれぞれスキャットクロウとコンコンボーを装備。


「誰が言ったか猫かぶり 花も恥じらうJK3 嘘はいらない夢見る乙女! 獣のアイドル、ヨーカイピンク!」


しなやかな横回転からフルフルの左に回り込み膝を曲げ、一気に伸ばしながらのスキャットクロウによる切り裂き攻撃で火花が散り足元をふらつかせる。


「誰を染めるか狐色 こんこん今夜も手鞠歌 お目にかけましょ万華鏡 幻の賢者、ヨーカイイエロー!」


脚線美を映えさせる飛び跳ねるような動きでフルフルの右に回り込み、コンコンボーで右手を叩いて筆型の刀を手離させ、そのまま上に突き上げて顎を砕く。


「あぶぐッ…………!? 賢者の攻撃じゃ無ぇ……」


「拙者達も負けてはおられぬ!」


ブルーはブライブレードを装備し、剣を振り上げ2体同時に飛び掛かってくるジャミリアー達に向けて振り抜く。

振り下ろされた剣の刃を受け止めるどころか豆腐のように切り裂き勢いそのままにジャミリアー2体を着地と同時に一瞬にして斬り捨て爆散させる。


「誰に言われどカマわない イタチごっこにピリオド刻み 腹を切らずに悪を斬る! 風の剣士、ヨーカイブルー!」


グリーンはジャミリアー1体をジャイアントスイングで振り回し、投げ飛ばすわけでもなく急停止して頭を地面にぶつけさせ、動かなくさせたところでガチコンハンマーを装備、ジャンプからの一撃で爆散させる。


「誰が言ったか川流れ 流れるどころか掻き分けて 登って飛び出せナイアガラ! 水の戦士、ヨーカイグリーン!」


レッドは「10」の数字が表示されたクロノスマッシャーのボタンを押す。


「1体相手なら必殺技いらねーか」


スローモーションのように動くジャミリアー1体に連続パンチを浴びせる。


「誰が呼んだか旅烏 鼻高々にてんつくてん 天に代わって只今参上! 空の勇者、ヨーカイレッド!」


表示された数字が「0」になると同時にジャミリアーは爆散。


「夢も現も守るが仏!」


「あれ? 拓実くん名乗った?」


「名乗った。 夢幻むげん戦隊!」


「ヨーカイジャー!!!!」



「おのれ……」


フルフルは金魚のような翼を羽ばたかせ空へ舞い上がり、回転しながら電撃を放つ。


仲間達が回避に集中する中、イエローはムゲンブレスにキュービルンの必殺(フィニッシュ)カードを入れ、更にライジュウの能力(スキル)カードを入れてコンコンボーに電撃を纏わせる。


そして近くのビルの非常階段を駆け上がって屋上に立ち、着いてきたピンクの前でコンコンボーを扇子のように使い、神に捧げる舞いを踊るようにして妖力を高め、電撃を纏った人間サイズの灯篭の幻影を一つ、また一つと作り出していく。


「千影ちゃんもう……なんでこういうのも綺麗なの!?」


屋上の二人に気付いたフルフルが急降下してくる。

しかし幻の灯篭に囲まれ急ブレーキ。

放った電撃も灯篭をすり抜け、無数に突進してくる灯篭を避ける術も無く、妖力による電撃を全身に食らい続ける。


「……………………グワシ!」


フルフルは空中で爆散。


「うよっしゃああああああああああ!!!!!!」


空を見上げ叫ぶレッド。



余った灯篭は花火のように弾けて屋上に黄色い光の粒を降らせる。


「結月、今の技の名前は?」


イエローがマスク越しに微笑みかける。


「えっ!? えっと………………………………おっ!」


ピンクが手を「ポン!」と叩く。


九尾(きゅうび)雷迅神楽(らいじんかぐら)!」


「九尾雷迅神楽……」


黄色いマスクがコクリと頷く。


「素敵な誕プレありがと」


「……うん!」




「デビル デビレバ デビルトキ カモンデーモン デビデビレ……」


聞き覚えのある声に警戒するヨーカイジャー。


「どこから来る!? なにげに部下から慕われてる変態どこから来る!?」


フルフルの残骸近くのビルの窓が開き、グレモリーが顔を出した。



挿絵(By みてみん)



「最後の一花、咲かせてごらんなさい」


投げキッスにより放たれた唇型のエネルギー体が残骸に当たり、残骸は巨大なフルフルの姿となりヨーカイジャー達を見下ろす。


「グレモリー様~~~~~!!!! ありがとうございまあああああす!!!!!」


「巨大化に対してなのか投げキッスに対してなのか」


「ペットボトルの紅茶を午前中に飲んでいいのかどうかくらいどうでもいいでござる」


屋上のピンクとイエローが下りてきて地上の3人に合流。


「ゲキリンダーは近くにいる」


「キュービルンも近くにいる」


「ネコマタンは微妙に近くじゃない」


「じゃ、俺と千影はポーズだけで」


「サモン、パートナーズ!!」



ビル街に5体揃ったパートナー妖怪達。

目からビームを出しそれぞれのパートナー人間をコクピットに転送。


「合体いくぜ!!」


レッドがムゲンブレスに合体(ユナイト)カードを入れると、5体のパートナー妖怪達が宙に浮き上がり変形を始める。


ゲキリンダーの両前足と尻尾が外れ別次元へ転送され、後ろ足が背中側へ折り畳まれ、体全体が垂直に起き上がり首が体内に引っ込むようにして合体に適度な長さになる。


メガガッパーの両腕が引っ込み、甲羅が上にスライドして体の下半分が2本の足の形状になったところでゲキリンダーの体の下に合体して「下半身」となる。


ネコマタンの尾と後ろ足が折り畳まれ、前足は爪が出た状態で頭に被さるようにスライドし、全体的に鋭い爪の付いた腕といった形状になりゲキリンダーの左腕部分に合体。


カマイタチの刃物状の尾が外れ、後ろ足が折り畳まれ、鎌の付いた前足は頭に被さるようにスライドし、鎌の間に刃物状の尾が収まり全体的に鋭い剣の付いた腕といった形状になりゲキリンダーの右腕部分に合体。


キュービルンの体が前部と後部で半分に分離、前部は中心にキツネの顔が付いたプロテクターといった形状に変形しゲキリンダーの胸に合体、後部は九本のキツネの尾が付いたプロテクターといった形状に変形しゲキリンダーの背中に合体。


最後にゲキリンダーの首が回転扉のように回転、中から人型の顔が姿を表した。


レッド以外の4人もゲキリンダーのコクピットに転送され、ヨーカイジャー達から見て左から、ピンク、イエロー、レッド、グリーン、ブルーの順に席に着いた。


「完成、合体巨人・ムゲンビルダー!!」


5人声を揃えてその名を叫ぶ。


ムゲンビルダーは足を高く上げて振り下ろし、歌舞伎の見栄を切る動きでポーズを決める。



「食らえ!!」


巨大フルフルは筆型の刀を振り、円盤型のエネルギー体を飛ばす。

ムゲンビルダーはそれを右手の剣と左手の爪で受け止め、真上に放り投げてから頭突きで砕く。


「これならどうだ!」


巨大フルフルはまた円盤型のエネルギー体を飛ばし、それに角からの電撃を纏わせる。


「私の技と被せてきた!!」


「悪魔はそれ、やりがちでござる!」


ムゲンビルダーは同じように受け止めるが、電撃によるダメージを受け、痺れに耐えながらエネルギー体をへし折り地面に落とす。


「大丈夫か!?」


〔きついが、これは下手に避けると被害が出そうだ〕


「確かにさっき、俺が避けたら自動販売機がブッタ切られちまった」


「ってことはまさか、あたしが躓いたペットボトルもあいつのせいで転がってたの!? ますます……」


「許せない!」


イエローが食い気味に叫んだ。


「…………千影ちゃん、大好き!」


「私も!」


「てめぇ、こいつらの間に入ろうとしたこと、後悔させてやるぜ!」


「入ろうとしてない!!」


「だったらこれだ!」


グリーンがユキオトコの召喚(サモン)カードをムゲンブレスに入れる。


「サモン、サポーターズ!!」



妖怪の里。

「春夏秋冬山・北エリア」の雪の中で駆け回っていた冷凍妖怪ユキオトコが空を見上げ、水色の光になって高速移動を開始。


水色の光はムゲンビルダーの隣に降り立ち、ユキオトコの姿に戻り「グー」ではなく「パー」の手で胸を叩く。


「何が来ても同じだ!」


「どうかな?」


グリーンはユキオトコの換装(ジョイント)カードをムゲンブレスに入れる。


するとユキオトコの体が浮き上がり、両手足が折りたたまれ、頭が胴体の中に格納され、胴体の下の部分が少し下にスライドして大きな拳のような形になる。


ムゲンビルダーの左腕のネコマタンが外れ、拳の大きな腕の形になったユキオトコが代わりに左腕に合体する。


「完成、ムゲンビルダーナックル!!」


5人全員で叫ぶ声と共に、冷気を纏った拳を突き出しポーズを決める。


〔クールな拳、悪くないだろう〕



「ヨーカイグリーン! さっきの『だったら』は、何に対しての『だったら』だ!」


巨大フルフルは再び円盤状のエネルギー体を飛ばし電撃を纏わせる。

ムゲンビルダーナックルは気合いと冷気を込めた拳を突き出し、電撃のダメージを食らうより早くエネルギー体を打ち返す。


「何ッ!?」


打ち返されたエネルギー体は巨大フルフルを直撃。

自らの電撃とエネルギー体の切れ味を食らい足元を崩す。


その時、ムゲンビルダーナックルのコクピット内全体が光り輝き、その光はレッドの目の前に凝縮し、1枚のカードになった。


「ついにきたかナックルの必殺技!!」


レッドがムゲンブレスにそのカードを入れると、ムゲンビルダーナックルの全身の妖力が左腕の拳に集中し、周囲の熱を奪い去らんばかりの凄まじい冷気を帯び始める。


必殺大妖技(ひっさつだいようぎ)冷凍魔殴拳(フリージングフィスト)!!!!!」


左拳を構えてダッシュ、全身の痺れを振り切った直後の巨大フルフルに極寒の冷気を纏ったボディーブローを叩き込む。


「ヒーローなら俺のことも………………すくってごらん?」


凍り付くと同時に砕け散り、溢れ出たエネルギーにより爆散。


「うよっしゃあああああああああああ!!!!!!!!!」


叫ぶレッド。

ピンクとイエローはハイタッチ。


ムゲンビルダーナックルは拳を天に突き上げ、ネコマタンは口元に前足を当てウインクしてポーズを決める。


〔寒いのは苦手だろう?〕


〔ニャニャニャ!〕


〔頑張ってるのか〕


〔ニャ!〕


〔それもまた個性と呼ぶ時代……〕




「フゥ~……………、補給完了!」


グレモリーが顔を引っ込めビルの窓を閉めた。




妖怪の里・ヨーカイジャー秘密基地内食堂。


目隠しをされた千影が結月に手を引かれ入ってくる。


食堂の真ん中に立たされ、目隠しを取られると同時に仲間達の、


「誕生日、おめでとおおおおおおおおおおお!!!!!!」


の声が響く。


目に映るのは「千影ちゃんhappy birthday!」の横断幕と、黄色中心の飾りつけ。


テーブルの上には小豆要素一切無いバースデーケーキと沢山の料理が並んでいる。

料理の中のクリームシチュー、入っている野菜のうち正確に同じ形大きさに切られているのが智和が切った物、頑張ってハート型にしようとした感がわかるのが結月が切った物。


「あり…………あり…………有馬温泉…………」


「いやいやそういうの俺の役目!」


「あ……うん、なんかこう、ここまでしてもらえるなんて……ありがとう……」


サプライズに気付いてしまっていたことを知っている人間は千影本人だけ。

誕生日パーティー自体には気付いていたが、千影の胸の中にはサプライズ以上の感動があった。


「でねでねでね! プレゼント用意してたんだけど、さっき悪魔に燃やされちゃって……。で、技の名前だけじゃなくて、やっぱり千影ちゃんに、形に残る物プレゼントしたくてそれで……」


結月が手渡したのは、画用紙に描いた千影の似顔絵。

少女漫画風でメルヘンチックな美化とデフォルメが詰め込まれ、何より胸の大きさが実物の2倍くらいある。


「時間無かったし、あんまり上手く描け……千影ちゃん!?」


「うわあああああああああああああああああああああああああああんんんんんんんんんんん!!!!!!!!」


里中に響かんばかりの大号泣。


〔敵襲か!?〕


ゲキリンダーが窓から目だけ覗かせる。


「いや違う!」


〔なら、いいだろう〕


拓実のツッコミで安堵したゲキリンダー。

他にも秘密基地の周りには、妖怪大病院から一時外出を許されたカラステングと全快したヌリカベを含むパートナー&サポーター妖怪達が集まっている。


「千影ちゃん!? それどっち!? どっちの涙!?」


「嬉しいほうううううううううううううううううううううう!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


「そそそそんなに!? そんなに!?」


食堂内の大騒ぎを聞きながら、外の妖怪達はそれぞれの思いを巡らせる。


〔そうだゲキリンダー、千影の誕生日だし、今日ぐらいは特別大サービスで、時を戻してグローブを直してやってもいいんじゃないか?〕


〔それも悪くないだろう。だけど今回だけはねー、()()()()()()()()()()()()()()()()………………〕


〔それどっかで聞いたことあるセリフだな〕


〔聞いたことあるセリフでもオリジナルと主張しなければ言ってもイイ!〕



今日は年に一度の、一生に一度の、特別な誕生日。



【to be continue…】 

公開中のデジタルコンテンツ、その他の情報は作者Instagram「 @satoruyoukaidaisuki 」とX(旧Twitter)「@shousetuyokai」をご覧ください


「特捜戦隊デカレンジャー」のWヒロインエンディングみたいなことがやりたくて作った歌詞を掲載します!


タイトル「最強究極ヒロインズ」


挿絵(By みてみん)


(結月)猫の手借りたい 毎日ジェットコースター


(千影)狐につままれ 変顔ポッシブル


(結月)青春時代は短い なんてゼッタイ認めない!


(千影)二人揃えば無敵にステキ


(結月)王子様に会えなくたって


(千影)お姫様……いてくれるから……


(結月)「どうしたの?」


(千影)「なんでもなーい!」




(二人)ピンキーファンキー謝肉祭カーニバル


(結月)最高最強にゃんだほー!


(二人)イエローモンロー幻燈会ファンタジー


(千影)ピカソに負けないキュービズム


(二人)二人合わせて究極ヒロイン!


(二人)強い! 負けない! とーぜんカワイイ♥️


(二人)夢幻戦隊ヨーカイジャー




(千影)狐の嫁入り まさかの雨模様


(結月)猫のおでこくらい? 激狭ハート……


(千影)ケンカしたっていいじゃない いつも最後は仲良し


(結月)一緒にいればキラキラハッピー


(千影)お姫様になれなくたって


(結月)変身チェンジカードで 華麗に変身!


(結月)「でも千影ちゃんは、あたしのお姫様だよ♥️」


(千影)「あ、ありがと……」




(二人)ピンキーファンキー謝肉祭カーニバル


(結月)肉球 直球 ばたんきゅ~


(二人)イエローモンロー幻燈会ファンタジー


(千影)ピカソも描けないビューティフル


(二人)二人いるから究極エンジェル


(二人)速い! 賢い? やっぱりカワイイ♥️


(二人)夢幻戦隊ヨーカイジャー




(結月)運命の人はいつか 現れるとかいうけど もしかして側にいちゃう?


(千影)「え?」


(結月)「え?」


(千影)「え? え?」


(結月)「ええええええええええええ!?」




(二人)ピンキーファンキー謝肉祭カーニバル


(結月)最高最強にゃんだほー!


(二人)イエローモンロー幻燈会ファンタジー


(千影)ピカソに負けないキュービズム


(二人)二人合わせて究極ヒロイン!


(二人)強い! 負けない! とーぜんカワイイ♥️


(二人)夢幻戦隊ヨーカイジャー




(結月)カワイイ♥️ プリティ♥️ ここテストに


(千影)出ません!


(二人)夢幻戦隊ヨーカイジャー


本編を読んだ後は「ヨーカイジャー悪魔データベース」で、登場した悪魔の情報をチェックしよう!


ncode.syosetu.com/n9246jz/14

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