2-16 潮行夕暮(2)
試合は混乱の中、いつの間にか激しい決勝戦に突入していた。
デルガカナとグラウシュミは必死に走り回り、ボールを打ち続ける。
場は緊張と熱気で満ちて――
一方、僕とリリラアンナは地面に倒れたままだった。
女の子たちはあっちで大盛り上がり。
「やったー!! 私たちの勝ちだ!」
「なんで最後の最後、私たちがチームになったの?」
「知らない。打ってるうちに気づいたら一緒にやってたんだ。」
「これって……世代間ギャップ?」
なんだか体のどこかが、ちょっとかゆい気がした。
「多分、子どもたちが成長したんだ。」
「ねえ……体に少しかゆみ感じない?」
「ないよ。もしかして妄想? それとも統合失調症? あるいは精神分裂病?」
「精神障害を冗談にしないで。」
「前にそういう人と知り合ったことがあって、この分野についてすごく勉強したんだ。
成人の年間有病率は0.1〜7.5%、生涯有病率は0.1〜1.8%と報告されている。
そうじゃなくてよかった。」
「なんでそういうことに限って数字をしっかり覚えてるんだよ。以前『何も覚えられない』って言ってたくせに。
……君、あの統合失調症の友達のことを本当に心配してるんじゃないのか?」
「当たり前だ! 彼女は前世で唯一の友達だったんだから! 心配しないわけないじゃん……。
……いや、もう話すのやめよう。とにかくお前の周りには人が大勢いる。私みたいに前世でずっと排除され続けた人間の気持ちなんて、理解できないんだろう。」
「……理解、してもらえるかもしれないけど。」
「お前は私を哀れんでいるのか? いらない。もうここで生まれ変わったんだから。前世では、あの一人以外の誰も気にしていなかったんだ。」
そう言った後、リリラアンナは二人を見ながら言った。
「ちょっと、他のあちこち走り回るようなことはやめて、リラックスしようよ! 例えば……ああ、それ! スイカを切ろう!」
「え?」二人は興味津々で聞き返した。
「それはね、大きなスイカと鋭いナイフを用意するだけで十分だよ! スイカを砂浜に置いて、みんなで円を作るんだ!」
「目隠しに使う布を忘れた。」
「ルールを守っておとなしく目を閉じればいいんじゃない?」
「まあ、確かに。どうせ今すぐ作れるんだから。」
「でも、スイカってどこにあるの?」
「ほら、これだよ!」グラウシュミが近くから転がってきたスイカを見せた。
「偶然だね!まるで願いがかなう機械みたいな感じだよ、グラウシュミ!」
「さっきまではそこになかったみたいだけど、今は出てきちゃったんだ。本当に偶然すぎるよね!リリラアンナ、早く詳しいルールを続けて説明してくれよ!」
「はいはいーー!みんな注目!注目!これから始まるのは夏の定番、ちょっと変わった『スイカ感覚チャレンジ』だ!ルールは簡単だけど、よーく聞いてね!
「はーい!」
「最初にナイフを手にする幸運(?)な一人目は、目隠しを装着してもらう!これで完全に視界がふさがれるから、あとは自分の感覚だけが頼りだよ!
目隠しをしたら、そっとスイカに近づいて、慎重にナイフを振るってスイカを切り始めてね!もちろん、スイカ以外のものを切っちゃダメだよ?
残りのみんなは円になって、その壮大な挑戦を見守るだけ。切る人にアドバイスや指示を出すのはナシ!声をかけるのも極力控えてね。だって集中が大事でしょ?
さて、一人目が切り終えたら、ナイフと残ったスイカを次の挑戦者に渡す。そして切った人は円の中に戻って、観客として全力で観戦モードに入ってもらう!これを全員がやるまで続けるんだ!
最後には、みんなで切られたスイカを囲んで、楽しく美味しくいただきます!スイカがちょっとグチャグチャになってたって?それも夏の思い出ってことで!」
リリラアンナの説明を聞いて、デルガカナがスイカをセットした。
「わかった。でも、誰が最初にやる?それと、ナイフは?槍でもいい?」
「リリラアンナは弱いから、先に任せて。」僕はリリラアンナの目に白い布を巻きつけて、「さあ、行け!」
「ふん、任せて!」
リリラアンナは大きな足取りで進んでいき、デルガカナから渡された槍を手にして、思い切り振り下ろした——
けど、外れた。
「うう……このスイカ、全然切れない。確かに切ったはずなのに。」
「うーん、確かに切った感じはするけど、割れないね。」グラウシュミは首をかしげながら言った。
「リリラアンナ、力が足りないんじゃない?」
「はあ?全然信じられない!」リリラアンナは再び槍を振り下ろし、叫んだ。
「太鼓の達人の技に酔いしれろ!」
「私が手伝ってあげるよ。」
「おお!ありがとう!」
——バキッ。
「あっ、割れちゃった。スイカのジュース、すごくおいしそうだけど……リリラアンナが力強すぎて、スイカをめちゃくちゃに割っちゃって、ジュースが全部こぼれた。それ、すごく大事だったのに!」
グラウシュミはスイカを見つめながら言った。
「ふん、それ簡単だよ。スイカなんて……」
リリラアンナは息を切らしながら言った。「ねえ、デルガカナ?」
「うん、そうだよ!」デルガカナは手を叩いて答えた。「スイカなんて、リリラアンナなら絶対切れるよ!」
「ほら、言ったでしょ! ハハ!」
グラウシュミは眉をひそめて考え込み、「セリホはどう思う?」と尋ねた。
「次は僕がやる!」僕はちょっと話がずれて、「見てて、正確に狙うから……ハッ!」
外れた。
「外れた……?」グラウシュミはがっかりした顔で言った。
「もう一回やってみる?」
「No.僕はその誰かみたいに、能力不足でルールを無視して乱暴に切ったりしないから。」
僕はデルガカナの武器を投げ捨てた。
「余のこと言ってるの!?」リリラアンナは拳を握りしめて叫んだ。
「誰とも言ってないよ。」僕はにやりと笑いながら言った。「名前なんて言ってないじゃん。君が自分で当てはめたんでしょ。」
「お前!」リリラアンナはさらに拳を握りしめ、追いかけようとする。
危ないと思った僕は、さっさと逃げて――「ちょっと歩くだけ!えへへ、追いつけない!」
「デルガカナ!追いかけ!」
デルガカナも追いつけず、後ろで足をバタバタさせながら怒って叫んだ。
「後でスイカ食べに戻ってくるなよ!」
しばらくした後、僕は機を見て岩礁のところへ回り込んだ。
「すみません、邪魔します。」