2-16 潮行夕暮(1)
「……」
「もう言わない。世柳柳はこういう仕事はしてないし。」
魔法をひと振りして、「グラウシュミをサポートしに行く――」
「……柳留ちゃんらしい……いや、待て!おい、二対一は卑怯だぞ!」
リリラアンナが走り出し、「どけ、余も行――」
――ズズッ!
デルガカナが水の魔法をリリラアンナの顔に浴びせた。
突然顔に水をかけられ、リリラアンナは怒って顔を拭きながら言った。
「デルガカナ!ちゃんと見ろ!余だ!仲間だってば!向こうが敵だ!」
「ごめん。デルガカナ、見間違えた……」
そう言うと、デルガカナはまた水の魔法をリリラアンナの顔にかけた。
「ん?このクソデルガカナ!」
リリラアンナは数秒間呪文を唱えて、水鉄砲を作り出した。
「う?」
「見てて!この水鉄砲!本物の銃で十点を撃ち抜いたことがあるんだから!」
彼女は構えて射撃のポーズを決め、何発も撃ちまくった。
「まるですごいことをしたみたいに言ってるけど、僕も。」
「百発百中だよ!」
「偶然だな、僕も。」
「やるのか?!」
「もう始まったのー?」
「リリラアンナ、すごい。」
デルガカナは必死に避けていたが、それでもリリラアンナの弾が何発か当たった。
撃ち終えると、リリラアンナは満足げに水鉄砲をしまい、今度は水をかけ始めた——。
「ぎゃっ!」
リリラアンナの背後からグラウシュミが海の波を巻き起こし、
「奇襲成功!!」
「おい!!行動力マイナスの年寄りをいじめるな!」
「ズズッ――」
「ごめんごめん。」
僕は鬢髪を少し巻き上げながら言った。
「まさか誰かがいるとは思わなかった。標的だとばかり思っていたんだ。」
「標的?こんなに生きてる人を間違えるわけないでしょ?!ここは海の上だよ!まだ産業革命も来てない海の上で、標的なんてあるわけないじゃない!!年上をいじめるなって!」
「デルガカナ、リリラアンナより、年上だ。」
デルガカナが言い、またズズッとすすった。
「デルガカナ、1001年、9月に、生まれた。」
「デルガカナ……!」
「へへ!タイミングばっちり!」
「え?!まさか岩礁あったの?」
「余を蹴ったな、お前!」
ビーチには人がだんだん増えてきた。
チームの四人は遊び尽くしたので、今は砂の上に横たわり、息を切らしている。
「子供って……体力が……そんなもんなんだね……」
リリラアンナを見て、嘲笑しながら言った。
「それでも……僕より年上とか言ってたよね……」
「ちっ……」リリラアンナも嘲笑しながら、「お前も……」
「リリラアンナ、だめ……」
「聞いたかリリラアンナ……デルガカナまで君に……だめだって言ってる……」
「でたらめ言うな……!空中で魔法使って避けるなんてひど……」
「……RoyalguardStyle!起動!」
「はあ?!」
「もう言わない。ガキとは話すこともない。」
リリラアンナは突然立ち上がり、腰に手を当てて言った。
「さあ、ビーチバレーしよう!」
「それ、何?」
グラウシュミとデルガカナが同時に問いかける。
「また知識の盲点に触れたか!ビーチバレーってのはこういうものだ!」
僕は彼女たちの後ろから声をかけ、注意を引きつつ、手をひねってビーチバレーボールを作り出した。
「わぁ!」
二人の目がキラキラと輝いた。
「このビーチバレーはね、二人一組のチームになって、コートのネット越しにボールを打ち合うゲームだ!目標はボールを相手の陣地に落として点を取ること!」
リリラアンナは胸を張って説明する。
「うむうむ。」
「チームは二人だから、自分たちの側でボールを何度もパスできるんだけど……」
「ふむふむ。」
「でも!パスは三回以内で交代しないといけない!」
リリラアンナは重要なところを強調した。
「はい!」
「でも今日は急に決めたことだし、コートもないから――自由にやっちゃおう!多少のルール違反は目をつぶるってことで!」
「賛成!」
「デルガカナ、賛成。」
「賛成!」
「君も?」
「だって私の人生観はこうだもん。――『もうちょっと遊びたいな』って思ってたら、次の瞬間には『動かないと人生終わるかも』って感じて。で、その次の瞬間には――」
日差しは明るく、海風は心地よく吹き抜け、砂浜は暖かい音を立てていた。
「ボールだよ!」
リリラアンナはボールを高く打ち上げ、一発で風を巻き込みながら飛ばした。
デルガカナはすぐに下で受け止め、「ヒア!」と叫びながらグラウシュミにパスを送る。
グラウシュミはまるで初心者には見えず、すぐにボールを捉えて――パチン、と小気味いい音を立てて打ち返した。
「それ、面白い。デルガカナ、好き!」
しばらくすると、砂浜は無言の戦場に変わった。
まるで「ワルツィナイズ・ミロスラックフ」大陸の地面を突き破るほどの勢いで、みんなが自分のスキルと戦術をフルに駆使し、必死に勝利を追い求めていた。
誰かは忍者のように低いボールを拾い、デルガカナは蛇のように素早く走り、どんなボールも逃さない。
――戦いが、始まった!
ボールは空中で目まぐるしく回転し、人影はまるで空を飛ぶかのように舞い踊る。
誰もがボールを必死で追い、汗と砂が混ざり合って、独特の夏の匂いが漂った。
だが、そんなことに気を取られている余裕はない。だって……!
「——『人生崩壊してもいい』って決めた!」
この瞬間!勝つことだけが!一番大事なんだ!勝つことこそ正義!生きている証明!勝利は、間違いなく僕たちのものだ!
デルガカナは誰よりも上手で、ボールを受けるたびに軽々と返してみせる。
彼女のサーブはとても力強く、僕ですら受け止めるのに苦労するほどだ。
リリラアンナは技術こそあまり高くない。けれど、妙に運がいいのか、肝心な場面でボールを拾ってしまう。
グラウシュミは――正直、かなり上手い。リリラアンナよりもはるかに。
でも彼女は個人技よりもチームワークを大切にしていて、いつもサポートを欠かさない。
相手コートへ確実にボールを送り込み、さらに決定的な場面では守りにも回ってボールを拾ってくれる。
「Take this セリホ! 半径二十メートルのぐるぐるかめはめ波ーーッ!」
「ちょっとリリラアンナ!意図言っちゃった! ……あっ、でも当たらないーーデルガカナ!」
ボールはリリラアンナの手から飛び出し、ピンポイントでグラウシュミへ向かった。
だが――彼女が風系魔法も使えることを忘れていた。
グラウシュミはすばやく反応し、ボールの軌道に走り込み、完璧なセーブを決める。
「ナイスセーブ、グラウシュミ!」
「当然だ!」
「うわー、遅かった!」
リリラアンナは勢いよく走り、足を砂にこすった瞬間――飛び出した!
……と思った次の瞬間、顔から砂浜にダイブしてしまった。
「前傾姿勢忘れた……」
リリラアンナが顔を砂に埋めながらうめく。
「ダチョウの平和!」
僕は笑いながらそう言った。
「お前! デルガカナ、助けて!」
「デルガカナ、分かった。」
「デルガカナ……! グラウシュミ! 助けて!」
「もちろん!」