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2-11 都会生活(1)

「つまり、アシミリアン先生が出した任務は、潜入して地元の生活感を味わうってこと?今のところはうまくいってるけど、潜入しながらどうやって生活感を感じ取ればいいのかな……」

「地元の特徴的なアイテムを身につければいいんじゃない?」

 ポケットからツノを取り出して頭にさす。

「こんな感じで?」

 十遊秤のツノには何度も助けられてきたけど、こうしてブレウッズに来るのは初めてだ。

「4人でまともに空気を吸うのって、けっこう難しいな。ここはちょっと失敗だったかも、ごめん。」

「その言い方、ちょっと奇妙すぎて不気味だな。まあ、お前が言ったことだから、そこまで異常でもないけど。」

「君のやり方も。」

 リリラアンナは荷物をゴソゴソと探り、背中に何かを押し当てた――

 それは、輝く鱗で覆われた「尾」だった。

「尾」の先は鋭く造形され、圧倒的な威圧感を放っている。まるで武器そのもので、その殺傷力は長髪の少女がツインテールを力強く振り抜く瞬発力に匹敵する。

 予測不可能で鋭い一撃を繰り出し、まるで一瞬で周囲の空気さえも切り裂くかのような迫力があった。

「もう……やめなよ、君。」

「もちろん、女の子たちにはちゃんとプレゼントを用意してるさ。何?攻略本を知らないと思ってるのか?」

「じゃあ、僕も?」

「蛙の子は蛇になる。」

 グラウシュミがもらったのは白い羽。

 デルガカナの変化はほとんどなかった。ただ口に人工の蛇の舌をくわえさせただけ――でも、それで十分だった。

「彼女の一生は、もう蛇との縁を断ち切れなくなった。」

「そんなに悲観的になるなよ。今生で縁が切れなくても、死ぬ直前に急に蛇との関係が解けるかもしれないじゃん?人生なんて予測できないんだから。」

「どういう意味?」

「冗談だよ、冗〜談〜。人生って不確定要素が多いし、いつどんな形で蛇との縁が切れるかなんて、誰にも分からないんだ。もしかしてスイカで解決するかもよ?うーん?」

「蛇とスイカ葉は何の関係がある?」

「ある!絶対ある!しかもめちゃくちゃ大きな関係がある!」

「……聞いてやろう。」

「余はスイカが食べたい。」

「さっさと下に行け。ついでに降りる方法を探してきてくれ。」

「お前マジで言うこと聞くんだな!ファッキュー!!」

「言ったらやるタイプだから、仕方ない。」

「まあ、降りる方法?それなら簡単だよ。ツタをロープ代わりにして引っ張ればいいじゃん。どうしたの?」

「いや……ただ、このロープ、なんで生きてるの?」

 僕はツタをつついてみた。

「ほら、まだ動いてる。」

「これは絞り取る。」とリリラアンナが言った。

「また大げさなこと言ってるね。」とグラウシュミが返す。

「それ、危ないかも。ツタを使わなくてもいいんじゃないかな。……それぞれ自分のスキルや魔法を使って、ここから降りるってのはどうだ?空気をちょっと浄化し――」

「お前バカか?ここの環境が悪すぎて、魔力の補助なんて頼れるチャンスは全然ないし、ここで寝てても魔力が回復しないって分かってるだろ?

 確かにお前の魔力量は多いかもしれないけど、遊びで無駄遣いしてたら結局もたないんだよ!それに、こっちはお前みたいに魔力を溜め込めるわけじゃないんだ!」

「……確かにそうかもな。今だけ。」

「まあ、お前は魔力が強くて空気も浄化できるって自慢してるんだし……じゃあさ、あと二日半――」

 リリラアンナは眉を上げて言った。

「お前一人で、四人分の魔力消費と周囲の空気の浄化、全部背負えるのか?」

「いいよ。」

 即答した。

「たった三日間?君たちが無駄に使わなければ問題ない。」

「ほんと、気持ちいいくらいに答えたね。さあ、グラウシュミ、デルガカナ。君たち二人、証人として聞いてた?」

「うん。」

「デルガカナ、覚えた。」

「今でも僕を信じてないのか……」

「命に関わることだから、念入りに確認する。」

 リリラアンナは事前に共通語で書かれた契約書を取り出し、言葉も共通語に変わった。

「よく見て。見たら手形を押してね。」

「ほんと、私に習ったんじゃないの?」

 契約書をちらっと見て、手形を押した。

「早っ!本文ちゃんと読んだのか?あー、もう……契約書に罠でも仕掛けておけばよかった。」

「実際、もう罠は仕掛けてあったけどね?」

「ぷっ、面白い。じゃあ、なんで押したんだ?」

「必要ないからさ。どうせ今は僕たち四人は同じチームだし、君らを一生懸命守るつもりだから。それに、この罠はグラウシュミとデルガカナを保護するためのもの……」

「ばれたなぁ。」

「自分が直接得られる利益を書かないなんて……リリラアンナ、君ほんと面白い。僕が手印を押さないと思ってるのか?それとも、自分が強すぎて守る必要がないと思ってるのか?それとも……」

「私の考えはお前に関係ねぇだろ?」

「……分かった。」

 口が悪いけどすごくいいやつ。

「それで、地元の生活感を感じする目的は何?三日間ずっと工場で働かされるわけじゃないよね。」

「分からない。下に行ってから話そう。」グラウシュミが言った。

「契約する通り、それでは皆さん、しっかりつかまってください。」

 僕はグラウシュミを抱き、デルガカナを背中に背負い、リリラアンナは不安そうに僕の頭の上に座り、「ウフフ、飛べ!」とか「オー、やっほー!」と言いながら、進んでいった。

「また暴れたら落としてやる、リリラアンナ。」

「やる気か?」

「それで、地元の生活感を味わう目的って何?三日間ずっと工場で働かされるわけじゃないよな。」

「分からない。下に行ってから話そう。」とグラウシュミが言った。

「契約どおり、それでは皆さん、しっかりつかまってください。」

 僕は左手でグラウシュミ、右手でデルガカナをしっかりとつなぎ、リリラアンナは僕の頭の上にちょこんと座った。

 そして、その後ろ髪の二房をくるりと輪にまとめ、後頭部に留めている女が、「ウフフ、飛べ!」とか「おー、やっほー!」などと言い始めた。

「また暴れたら落とすぞ、リリラアンナ。」

「……その気か?」

 人の少ない場所を見つけたあと、風系魔法を使って穏やかに降り立った。その後、さらに魔力を強めた。

 ブレウッズの中に漂う二酸化硫黄と窒素酸化物の匂いの強さは、以前に空気を浄化したときに感じたものと同じだった。どれだけ浄化しても無駄だったようだ。

 こんな空気の中で暮らしている人々が、どうやって生きていけるのか、想像もできなかった。

 ——あの二人に対しては、想像もできなかった。

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