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2-10 工業都会(1)

「敵か?ここに?まさか……ここにも赤隕に感染した土地があるのか……?」

 前世のことを思い出しながら、急いで鑑定しようとした。

「待って、セリホ。」

 リリラアンナは顔色を一瞬で曇らせ、僕を呼び止めた。

「どうした?」

「赤隕に感染した土地?それとも『死滅区域』?あそこに堕ちた後がどんな感じか、分かってるの?」

「ただの仮定だ。あんな所に入ったらもう出られないし、死ぬ過程もあまりにも残酷だ。だから死ぬ直前まで、自分がそんなに早く死ぬなんて思ってなかった。」

「いや、それが問題じゃない。」リリラアンナはすぐに話を変えた。

「問・題・は・こ・の・道・がどれくらい続いている。炎でも投げて先を見てきてくれないか?」

「方向オンチだから地理を選ばなかったんだろ?」

「うるさい!さっきの鑑定結果によるとまだ長いし、危険もかなりあるって!」

「それならいい。グラウシュミ、リリラアンナが勝手に動かないように見張ってて。連絡も取れるようにしてくれ。」

「分かった。」

「僕はデルガカナを探してくる。」

 そう言って風系魔法を使い、足元に風を集めて、先頭を走っているデルガカナのところへ飛んでいった。

 デルガカナは地面に寝転がり、ぐっすり眠っているように見えた。どう見ても襲われた様子はなく――ただ、後頭部に吹き矢を受けたような痕があった。

「アサシン?」

 なんか、また誰かが吹き矢を撃ってきた気がする――でも!

「普段の経験がないと思う?」

 手を上げ、魔法で矢を見事に弾き返す。

 完璧だ!

 さらに、その弾き返しの瞬間に矢へ魔法を付与し、隠れている襲撃者の居場所を追跡できるようにした。

 そして――

 ドン!

 そう。下水道の中は二酸化炭素濃度が高い。だから定点雪系魔法で温度を極限まで下げ、次に急激に加熱して爆発を起こす――ドライアイス爆発だ。

「機械ガードを隠してるなんて……意外だね。」

 二酸化炭素濃度が高く、花系魔法で酸素を補充できない状況では、生物が長時間滞在するのは不適だ。むしろ、環境に左右されず自動的に動ける機械ガードの方が適している。

 少し歩くと、機械の痕跡を見つけた。

 デルガカナは花系魔法が使えないから、他の三人から離れると二酸化炭素を吸い込みすぎてしまう――数値パネルを見る限り、ただ血が減っているように見えるが、実際に危険なのは酸素不足だ。

 倒れているデルガカナを見て、後ろの二人に声をかける。

「危険はない。」

「ふぅ……よかった。」

「でも、新しい発見がある。早く来て。」

「なんの発見?」

「これ見て。」

 二人が追いついたあと、爆破でできた穴を指差した。

「あれ、これデルガカナじゃんじゃない~」

 リリラアンナは寝ているデルガカナをガンガンつつきながら、ついでに彼女の生命値をシステムで鑑定してみた――回復している。

「無事でよかった……」

「ところでリリラアンナ、デルガカナの顔に虎の絵でも描いてみる?」

 いつの間にか、グラウシュミが魔法を詠唱し、手にマジックペンを持っているのが見えて、ちょっと驚いた。

 花系魔法で物を作るのには慣れているけど……マジックペンまで作れるのか?

「黄泉」から必要な元素が集まるってことなのかな?

「おお、いいアイデア!グラウシュミって、意外とこういうの好きなんだね!二十万倍賛成!次にこんなチャンスがあったら、絶対に余を呼んでね!事後じゃなくて~!」

 ……なんかその二人とも、急にノリノリになってる。

「リリラアンナが賛成するとは思わなかった……だって、デルガカナと仲良しじゃん。」

「だ!か!ら!こ!そ!仲良いか!ら!こ!そ!今がチャンスだと思って~!ねぇ?」

 リリラアンナが僕をチラッと見て言った。

「なんか次の瞬間君たち二人はデルガカナを分け合うつもり感じがする。」

「違う違う、これはただ顔に作業してるだけ。それで――どうする、グラウシュミ?」

 あまりここで長引かせたくなくて、さっき爆破した下水道の向こう岸に開いた穴へ視線を向けた。

「トゥームより顔いじる方がいいでしょ。」

 リリラアンナが先にペンを取って、「ねぇ、こっちの方が面白いじゃん。」

「はーい。」

 僕は下水道の中でツルを巻きつけながらぼやく。

「結局、僕がやらなきゃいけないってことか。」

「なのに?アタッカーだからでしょ。余は回復もできるし、ダメージも受けられるし、どうして前線で突っ込むの?後ろで高レベルの人道支援を提供するのは当然でしょ?」

「強烈に非難する。」

「だから、命がかかるようなことがあったら全力で助ける。でも注意してほしいのは、もし頻繁に後始末をしなきゃいけない状況が続くなら、断ることになるってことさ。」

 真剣な顔でそう言ったけど……なんか喧嘩を売りたくなったというか、無意識に口をついて出た。

「面目もくれてやらないってこと?」

「面目?あげない~!当然でしょ~!」

 そして彼女は急に話題を変えた。

「あ、そうそうグラウシュミ、まだここで描きたい~!」

 デルガカナがどんな顔をされるか……なんとなく想像できるなと思いながら、さっき爆破した穴へ飛び込んだ。

 中に入ると、空気があまりに悪くて思わずむせた。

 すぐに歩きながら魔法で空気を浄化すると、視界が開け、斜めに差し込む夕陽が足元を照らした。

 よく見ると、爆破でできた穴はちょうど大人の背丈ほどの大きさで、まるで通路が新しく切り開かれたようだった。

 ――夕焼けのもとで、その都会の工業的な雰囲気が一気に押し寄せてくる。

 巨大な機械がガツガツと音を立てて回り、煙突からは黒い煙が絶え間なく噴き出している。

 都会全体がその煙に包まれ、空気には硫黄や石炭の匂いが染みついていた。

 それは、工業化が進んだ証として残された、消えることのない痕跡だった。

 獣人たちは油で汚れた作業服を身にまとい、工場の中で忙しく働き続けている。

 都会には車や馬車、さまざまな乗り物が行き交い、騒音が絶え間なく響いていた。

 その喧騒の中で、夕焼けの光が柔らかく建物に差し込み、ブレウッズの高層ビルのガラスは金色に輝いていた。

 周囲の環境と比べると、それはまるで異世界の都会のように見えた。

 だが、この華やかな都会の裏側にあるのは、冷たくて機械的な現実だ。

 あちこちにゴミや汚水があふれ、ビニール袋は風に舞い、吸い殻が道端に散乱している。

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