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2-9 大学受験(3)

 秋が深まり、山々は紅葉に覆われて、まるで火の海のように燃えている。けれど、その広がる山々をどれだけ歩き回っても、下水道どころか川さえ見つからない。

 ファンレンカゴウだって疲れる時がある。——もっとも、疲れたふりをしているだけのようだが。人道主義を考えて、結局その強い化け物にも休んでもらった。

 そして、その少しの休憩の間に、ありえない未来の話が今日の話題になった。

「まさか、余の記憶を疑っているの?」リリラアンナが睨んできた。

「じゃあさ、君が受けた大学受験がどれほど大変だったのか、教えてみてよ。どうせいつも『こんなに大変だった!』って叫んでるくせに。」

 実際には、システムがシミュレーションの途中で泣きついてきた。

「能力を再現できない、こんな結末は嫌だ」と言いながら、シミュレーション能力が前世のレベルに追いつかないというのだ。

 だから仕方なく、「過去の問題を解いて、汎用的な解答スキルを身につけるのがいい」と提案した。

 ところが、前世の「セスタンダル」の教育委員会は大学受験の過去問題や解答を公開していなかった。そこで、リリラアンナに当時の問題内容を聞き出そうとしていたのだ。

「セスタンダル」はサイバーネットワークが高度に発達した知能生態システムであり、教育委員会はセスタンダルにおいて必ず設置されている部門の一つだった。

 簡単に言えば、この決定的な試験の問題や試験用紙も、すべてセスタンダルによって作成されたものだ。

「大学受験?」グラウシュミが首をかしげた。「ずっと気になってたけど、いつも話が途中で終わっちゃう……」

「簡単に言うと、大学受験は七年後に受ける予定の試験の別名だ。」リリラアンナが話し始めた。「すごく怖いよ。」

「入学試験より?」

「10000%倍も残酷だ!

 想像してみて。試験中に魔力ゼロ、花系魔法を使える人もなし、応急措置もなし、体力は尽き、極限の疲労に追い込まれ、剣は折れ、手はボロボロ、足は吹っ飛び、そして試験の相手が、君の頭をねじって脳髄を吸おうとしてる……そんな地獄……いや、地獄のほうがまだマシだ!」

「これ、ちょっと血みどろすぎじゃない?」グラウシュミが目を見開いた。

「いや、それでも最後には体は安らかに眠れるから。大学受験は体だけじゃなく、霊魂までボロボロになるんだよ……っていうか、ボロボロどころか、何度も何度も繰り返し痛めつけられるんだ!」

「え、それ、リリラアンナ、ちょっと大げさじゃない?リリラアンナはね、いつもそんな……」

「いや、グラウシュミ。それに対して反論はできない。大学受験は本当にそんなに恐ろしいのか……いや、それ以上かもしれない。」

「本当?!」

「だからその試験、どうだったのかめっちゃ気になるんだよ。聞いた話だと、そのときの試験問題は……うーん、基本的な能力を問うとか、学科ごとの特色を見せるとか、新しい法律を作るとか。みんなが現代のユスティニアヌス一世やナポレオンにならなきゃいけないって?」

「それは政治の話だし、私は選ばなかったけど……ナポレオンが出題されたのは本当だよ。あー、それはともかく、物理の話から始めよう。」

「好きにして。」

「物理について言いたいのは、g=9.8m/s²だってこと。物理は実験の学問だから、固定観念が人を殺す!」

「g?」

「それは『ワルツィナイズ・ミロスラックフ』大陸の、あってもなくてもいい重力比率だ。」と僕は説明した。

「重力比率……?」

「ちゃんと考えてみてよ。私たち、この三年間g=10m/s²で練習するの?完全に思考の定型に陥っちまうぞ――あっ!!ちなみに、その後はどうなったんだろ?小数点以下第3位や第4位まで取れたの?」

「……緯度45°の海面上で測定された重力加速度はg=9.80665m/s²だ。」

「よく覚えてるね、お前。さすが~さすが~」

「それに、緯度が上がるほどgの値は少しずつ大きくなる。例えば、赤道ではやや小さくて約9.780m/s²、極では大きい。――それ、ちょっと見ればすぐ覚えられるでしょ?一瞬のことだし。」

「はあ? 単語や公式なんて全然覚えられないよ。普通の人のことをちょっとは考えてくれない?」

「すみません。」

「まあまあ、物理の話はもうやめとこう。歴史の話にしようぜ。今振り返ると、これが一番肝心な科目だから。」

「覚えててくれてありがとう。ぷぷっ、ここからが面白くなる!」

「マジで腹立つんだけど……

 あのさ、近代化とか世界の古代史とか、国際法すら出なかったんだ! ほんとに吐きそう。第一次世界大戦も、第二次世界大戦も、冷戦も、第三次世界大戦も、赤隕も、ぜんぶ無視! は? 情報革命が出ないのは、まあ百歩譲ってわかるとして……わかるわけないだろ! いいよ、情報革命が出ないって言うなら、せめて第一次・第二次産業革命くらい出してくれよ! それすら出なかった!

 クソセスタンダルは一体何を考えてるんだよ、本当に!」

「もう一つケーキ!」

「AIのくせに、そんなに気にしてどうするんだよ?」

「デルガカナ、あげる。」

「あれは命だろ! 命まであいつらに渡したのか!」

「うーーまい!」

「で、何が出たんだ?」僕が聞いた。

「物理:プリズムと光の集まり。政治:今も続いている政治体制。」

 リリラアンナは手で空中を二回ぐるぐる回しながら、まるで機関銃みたいにしゃべり続けた。

「地理:資料の地域はどこか、っていう問題。生物:足を解放する紡績機~~」

「抽象的なこと言わないで、具体的に説明しろ!」

「簡単にまとめると――

 1、紡績機とか、ああいう変な経済技術の進歩がどうやってアパレル産業と社会を前進させたか。

 2、地理的環境と政治体制。

 3、歴史資料の検証問題。

 4、小論文。うーん、小論文。うーん。」

「無駄に引っ張るな。早く言え。テーマは?」

「文化の交流と形成だって! ははっ、文化! 古今東西、多様な文化の交流!! 15点だぞ、15点! この問題!!

 そして、マジで最悪だったのは解答用紙だよ!第一問は横書き、第二問は縦書き、第三問は普通、第四問はまた横書き!? 解答の方向くらい統一してくれよ!! ほんと無理!!!」

「それで、シミュレーションで文系をやめたの?」僕が言った。

「それは医者をやめて文筆家になるために。」

「グラウシュミ、グラウシュミ、あそこ、渦、見て。」

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