2-9 大学受験(1)
それを聞いて、リリラアンナは少し考え込みながら頷いた。
「さらに、世論を操って矛盾の矛先を政府の無能さと貴族階級の過度な介入に向けられる。そうすれば、たとえ魔法使いが介入しても、民意の圧力と道徳的な審判に直面せざるを得ない。もし学校のリソースをうまく使えば、ある程度の抑止力にはなるはずだろう?」
「待って。その考えは確かに正しいけれど、リスクは相当大きいわ。君の言うように、魔法使いの力があれば戦局を有利に進められるかもしれない。でも逆に、その動きを察知した誰かが反撃に出る可能性もある。どんなに計画が上手くいっても……結局、今のところ最も危険なのは――」
「魔法使いで構成された大きな組織の存在、もしあれば。」僕は言った。「もちろん、それがあるかどうかは分からないけど、可能性が高いと思う。」
「あるの。」グラウシュミは静かに聞いていたが、ついに口を挟んだ。
「え?詳しく教えてください、グラウシュミ。」
「昔、両親から聞いたことがある。『ワルツィナイズ・ミロスラックフ』大陸のいろんな身分の魔法使いが結集した組織があるらしい……どうやら、月に基づいて作られたみたいだ。その後は私も詳しくは分からないけど、周りの人たちもほとんど何も知らない。」
「月に基づいて?約20億年前に死んだ死体に何で頼らなきゃいけないんだ?死体に依存するなんて、ふざけんなよ!」
「多分?ちょっと覚えてない、しかも、これもただ聞いた話だから。」
時々、平民たちの話がちょっと間違ってることもあるけど、それでも、こういう情報の伝わり方が役に立つこともあるのは否定できない。差別されている獣人たちも、同じだ。
「ごめん、ちょっと焦っちゃっただけだ。ただ、子供の頃から読んできたあらゆる文献には、こんなことは書かれていなかった。」とリリラアンナは言った。
「もちろん君のあの高級っぽい本には書いてない。あらゆる階層には、それぞれユニークな視点と情報を手に入れる方法があるんだ。庶民をなめるな。あいつらの知恵と洞察力も決して侮れないんだから。本当に庶民がバカだと思ってる人いるの?信じられない。」
リリラアンナはしばらく考え込み、僕の意見を受け入れたようだ。
「わかった。確かに、自分が少し焦りすぎていたかもしれない。これからはもっと安定して実行可能な方法を見つけないと……そういえば、明日ブレウッズの材料は準備できた?」
「まだだ。それに、チームの人数に関してもちょっとうわさがあるみたい。普通、特優班ってのは10人しか採用しないから、5人の小隊が一番いいんだけど、今は12人なんだよ。6人のチームだとちょっと多過ぎるかもしれないし。でも、3つの4人チームに分けると、今回はリスクが高くなるかもしれない……」
「えっ?!」グラウシュミはびっくりした顔をした。
「狙われてるんだから。特に、僕たち二人。」
「……そう、ね。」
空を舞う葉っぱや、静かに地面に落ちる落ち葉、枝に残る葉っぱたちは、それぞれが自分の旅を終えたことを知らせている。
涼しくなった風が森を通り抜け、落ち葉を舞い上げて、まるで生命が消えていくような音楽を奏でている。その音は、悲しくも美しいメロディーのようで、通りかかる人々に、時のつらさと生命の儚さを感じさせる。
「もし余が死んだら、きっと人に墓の上に1:1で再現した莫辞遐と管理者を彫刻させ、その下にこういう言葉を刻むつもりだ:『リリラアンナ、正直で勇敢で優しい人、ここに眠る。彼女の命は尽きたが、その光は今もなお比類なき輝きを放ち、その精神は永遠に「ワルツィナイズ・ミロスラックフ」大陸の人々の心に刻まれる!」
リリラアンナは落ち葉を踏みつけるとき、ササッという音を立てた。
「こんな小さな場所で、二人も住めるなんて、信じられないな。」
「文句ある?」
「ないない。」
「あ、落ち葉、死んた。」
デルガカナも落ち葉を踏んで、そのサクサクと音を立て、足でこすった。
「葉は散り、飛び、空いっぱいに舞い、緑は消え、生は途切れ、誰が哀れむ。」
「へぇ、引用するのが好きなんだ?それじゃこの引用された古典を分析してみろ。」リリラアンナがからかうようにじっと見る。
「うまく引用されていない。」
「もちろん。古典の理解を試験で測るなんて、クソテストはゴミだらけだ。こんな美しい文章は楽しむためのものさ!でも、引用にそんなに熱中して、関連することまで一緒に考えちゃうなんて、君もだね。」
「遠回しに人の悪口を言ってるのか?」
「違う違う。ゴミって、もともと役に立ってたものが、人の欲望によって作られ、使い終わったらただスペースを取るだけのものだ。だから、最後には清掃員に分別されて、焼かれるか埋められるかってことだよね?」
「じゃあ、リサイクルできるものは?」
「同じ同じ~でも、お前とゴミを同類項にまとめられるなんて……ごめん、考えが甘かった!まとめられないところがあるんだから!」
「また何を言い訳するつもり?」
「だってお前には『役に立つ』がないからね!」リリラアンナは言い終えると、すぐに大声で笑った。
僕は答えを選ばず、彼女がこの言葉で自分で気まずさを感じるようにした。彼女もすぐにその言葉がよくないことに気づき、数秒後にはいつもの様子に戻った——ただし、別に何の変化もなかったけど。
デルガカナはしばらく落ち葉をいじっていたが、突然質問をした。
「デルガカナ、質問、今回の目標は、何?」
「ブレトンウッズ……」
「ブレウッズだ。こいつはもう歴史に取り憑かれた。」リリラアンナが言った。
「仕方ない、歴史を学ぶと頭がちょっとおかしくなるんだ。」と僕が言った。
「これも遠回しに悪口でしょう!」
「相手の手を使って、同じことを返すだけだ。」
「でも、変だと思わない?」と、グラウシュミがふいに口を開いた。
「今回は確かに研修の一環で、自主探索のチームだけど……危険すぎるかもしれない。
アシミリアン先生は私たちをかなり遠くまで行かせ、ブレウッズで地元の生活感を味わわせ、さらにその先のルートは下水道を通らせるなんて……」
「下水道の魅力を感じさせようとしてるのかもしれない。上手だね、隠れるのが。」
「下水道は……都会の良心だから。」
「?!」