2-8 秋夕遺札(1)
秋は、どんどん景色が移り変わり、静かな気持ちになれる季節だ。
日が経つにつれて、太陽の光も和らぎ、少し涼しくて過ごしやすくなる。
喫茶店の隅でペンを走らせていると、考えごとも自然に文字となって紙の上に留まっていく。
古いオウゴンソウが季節の訪れを感じたのか、金色や赤褐色の葉が午後ののどかな陽射しの中でゆっくりと舞い落ちる。まるで歳月から届いた手紙のように、時間の物語を運び、静かに地面へと降りていく。
枝に残っている葉は、まだ時間に抗っているが、自然の法則にはかなわない。色は次第に暗い褐色へと変わり、夕日の残照のように大地へ帰ることを知りながらも、なお粘り強い生命力を示し、生命の最後の輝きと壮大さを演じている。
この秋、この瞬間に人々の目を最も引くのは、間違いなく赤と黄色が織りなす落ち葉の絵巻だ。
ブレウッズも季節ごとに新しい姿へと変わり、かつては濃い緑だった木々の葉も減り、その姿に年月の跡が刻まれている。風に揺れる枯れ葉は、まるで大地からの別れの手紙のようで、生命の循環と変化を静かに語りかけてくる。
ペンの動きは、ふと止まった。
思考は糸が切れたビーズのように滑らかにつながらず、一つの流れを成さない。
そして、視線は旦那さんのほうへ落ちていった。
旦那さんは、自分だけの特別な作品をつくるかのように集中している──そう、旦那さんらしい水出しコーヒーを淹れているのだ。
彼の両手は、まるでアーティストが絵筆を握るように、フィルターとコーヒー豆を丁寧に扱っている。
選び抜かれた豆は細かく挽かれ、フィルターに均一に広げられ、職人の手で美しく整えられる。指先がコーヒー粉の表面をそっとなぞる。
この細部へのこだわり──どこかで見覚えがあるような気がするのに、思い出せない……。
旦那さんは慎重にコーヒー粉を新しい冷萃器具に入れ、冷水を注ぎ、温度と割合を完璧にコントロールしている。
やがて、長い待ち時間が始まった。
低温でゆっくりとコーヒーと水が混ざり合い、エッセンスが静かに引き出されていく。
ついに冷萃器の蓋が開くと、爽やかな香りがふわりと顔に触れる。
きらめく水出しコーヒーがカップに注がれ、その一杯には、彼の腕前と職人としての情熱が詰まっている気がした。
その瞬間、なんか昔のこと思い出された感じがした。
この目で見ているのは、ただのコーヒーマスターではなく、腕利きの武器職人のように見えた。
細部へのこだわりは、金属の肌を極限まで追い求める感覚に似ている。
温度と割合を絶妙にコントロールするのは、まるで武器を鍛えるときの火入れ加減を正確に見極めるようなもの。
そして、コーヒーと冷たい水が低温でゆっくりと混ざり合い、エッセンスが引き出されるのを待つのは、炉の中で鉄塊が静かに溶けていくのを見守るのに似ている。
やがて、鋭い一振りが完成した。
「あなたの水出しコーヒーです。」
「ありがとうございます。おいくらですか?」
「代金は結構です。」と旦那さんは笑った。
「これは新しく出す予定の一品で、まずは人に試してもらいたいんです。あなたには手伝ってもらいましたから、料金なんて取れません。味が合うかどうかが、いちばん大事ですから。」
僕は軽くカップを持ち上げて一口飲んだ。
「本当においしい。静かで深い味わいが詰まってる。冷萃の技術が柔らかくても豊かな味わいを与えてくれて、まるで静かな場所を見つけて、静かに一つのチェスを楽しむことができるようだ。」
「それに、なんか武器職人みたいに落ち着いてて、粘り強い感じがする。」わざとその職業を言及した。「コーヒーの抽出ってのは、鍛冶屋がナイフを丁寧に鍛えるのと同じで、時間をかけて温度をコントロールして、芸術的な味を引き出してる感じがする。」
「おっしゃるとおりです、若い人。」旦那さんは微笑みながら、「私は確かに鉄を叩いて武器を作る家族に生まれました。炎と鍛冶の音と共に舞う日々は、今は遠くなりましたが、その愛情と集中は血に染み渡っています。」
彼の言葉思わず尋ねてしまった。
「もしよろしければ……旦那さんには、兄弟……のような方はいらっしゃいますか?
性格も技術も、さらには外見までよく比べられるような方です。
幸運にも、そんな話を耳にしたことがあります。
こういう家族では、技術を受け継ぐことに同じくらいの情熱を持っているものかもしれません。
一人は鍛冶屋の道を選び、もう一人はその精神をコーヒーの世界に引き継いでいる──そんな物語です。」
「ええ、あなたの言うとおりです。」
彼の目には、複雑な感情がちらちらと浮かんでいた。
「私は確かに、同じ顔立ちで、性格も技術もよく似た兄がいました。しかし、運命は私たちを異なる道へと導いたのです。
家族には五百年にわたる古き約束があり、それは目に見えない壁のようなものでした。血縁によって結ばれてはいても、それぞれの責任と憧れのために、私たちの間には隔たりが生じました。」
「はい……」
「私は彼の選択を理解できなかったし、私の粘り強さは彼にとって困惑の種となりました。
それでも、私はずっと信じています。あの表面的には遠ざかった関係の裏で、私たち兄弟は技術への愛と尊敬、そして家族の伝統を守るという一点において、確かに通じ合っていたのだと。」
「旦那さんは……彼の現在の状況を知りたいとお考えでしょうか? もし彼がすでに亡くなっていたとしたら、その衝撃にどのように向き合われますか?」
僕は鬢髪を指で少し巻き上げながら、そう尋ねることにした。
旦那さんはコーヒー豆を挽いていた手を思わず止め、その手が不意に震え始めた。そしてマシンから目を離し、窓の外へ視線を向けた。
しばらく沈黙した後、旦那さんは静かに言った。
「もし彼がすでにこの世を去っているのなら、彼のために一杯のコーヒーを淹れ、和解できなかった過去を黙って悼むかもしれません。」
そう言って、彼は軽くため息をつき、どのようにしてこの衝撃を受け入れ、向き合うべきかを考えているようだった。
「人生は碁盤の対局のように、攻めもあれば守りもあり、進むこともあれば退くこともあります。そのなかには、後悔と安らぎとが交錯する瞬間もあるのです。」