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1-14 僕、みんなにチヤホヤされてる(2)

「いやぁいやぁ、まったく罪深い男だねぇ~。まるでゲームの主人公みたいに花に囲まれて~まさにハーレムものの王道だよ~! まさにこの展開通りってわけだな~。あはははは~! 余はさすが……」

 この「余」の一人称、耳に残るこの軽薄な調子、わざとらしいくらい浮かれた言葉の選び方、そして、彼女だけが使いそうな、元の世界の単語……。

 もう、誰だか確信してしまった。

 この声の主は、間違いなく――

「リ、リ、ラ、ア、ン、ナ!」

 僕は声を低く抑えて言った。

「君までなんでここにいる! それに『罪深い』だの何だの言っておいて、こうやって他人から見たら、余計にヤバいじゃないか!」

「おやおや、簡単な話さ。『遠くの親戚より近くの他人』ってやつだろう? こうして近隣の様子を見に来るのに、何か問題でも?」

「男子寮と女子寮、ちゃんと分かれてるはずだろ?!」

「そんなの、形式的なものじゃないか~?窓の向かいが余の部屋だって、まだ気づいていなかったのか、お前?」

 リリラアンナが、ニヤニヤと笑みを浮かべながら言った。

「は?どこが近いんだよ?こっちは生死の境を越えてるんだぞ……!」

 と思わずため息をついた瞬間、もう一つの声が耳に飛び込んできた。

「いつも早起きだね。」

 別の女性の声が響いた。

 ……オレリア。

 振り返ると、彼女はベッドの横にちょこんと座っていて、こちらに微笑んでいる。

 まあ、前回も突然の襲撃だったし、「二度目は慣れたもの」ってやつだ。

 だから今回、彼女が来ても前ほど驚かなかった――いや、むしろ前回の奇襲があったからこそ、今、ベッドに女の子が三人いるという状況でも、あの時のようにパニックにはならなかった。

「それにしても、オレリア。またここに?」

「おやおや?『また』だって? まさに花園の中心、羨ましいなぁ~」

「今日は週末で、最近は平和だから戦争もない。だから、ここに来る時間ができた。」

「週末か?ああ、確かに。」

 やっと安らぎの時間が来たっていうのに、どうにも落ち着かないのは――前世の学生時代の名残かもしれない。

 あの頃は、週末だというのに、朝5時から夜中の25時まで予定がぎっしり詰まってたっけ。

 詰め込み教育の犠牲者って、まさに僕のことだろう。

 ふと、隣にいたオレリアが何かを言いかけ、空気がピリッと変わった。

 彼女の目が鋭くなり、さっと身を翻した。

「悪いな、セリホ。急用ができた。」

「ごゆっくり……」

 オレリアは窓から出ていった。

 僕の背後で、また何かが動く気配がした。

「……ん? デルガカナ?」

「はい……」

 デルガカナが目をこすりながら、「あ、すまない……あと、おはよう、セリホ……」

「やっと目が覚めたか。……それにしても、なんで君まで僕の部屋にいるの?」

 僕は少し不機嫌そうに尋ねた。

「デルガカナ、怖い。デルガカナ、夜が、怖い。」

 と、デルガカナが言った。

「分かる分かる、夜が怖い。……じゃあ、なんで数年前は平気だったんだ?」

「数年前、リリラアンナが、いた。」

「どういうこと?」

 ベッドの端で頬杖をついていたリリラアンナが、ニヤリと笑いながらさらに身を乗り出してきた。

「彼女にとって、余がいれば十分なのだ。ほら、半分くらいは回復役の役割を担っているようなものだし、それに――この余が、彼女をここに連れてきたのさ。」

「おや?」

 僕はとっさに共通語に切り替えた。

「それで?彼女は君が『転生者』のこと、知ってる?」

「さぁねぇ。」

 リリラアンナは肩をすくめて、少し大げさな口調で続けた。

「誰にも言ってないけど、ヒントは出したけど、彼女はちょっと鈍いから、きっと気づいてない……かもしれない。たぶん、いや、きっと……おそらく……まあ、たぶん、分からないね!」

「……それで、君らはいつまで僕のベッドを占領してるつもり?」

「そんなに嫌そうな顔をするなよ〜 枕は柔らかいし、余は枕の上にいても構わないだろ?」

「デルガカナ、セリホのそばに、いたい。デルガカナ、セリホを、とても大人だと、思う。」

「そう、その『とても大人』っていうのが、まさに的を射てるのよ!」

 リリラアンナは親指を立てて、得意げに言った。

「いい加減に――」

「う、う、あ、あ……お、おはよう、セリホ!」

 グラウシュミが突然目を覚まし、慌てて布団の中に潜り込もうとした。

「わ、わ、私、ただ、朝に、その……」

「朝じゃないだろ?」

「うぅ……夜に、ほんの少しだけ……」

「また無理やり鍵を壊して入ってきたのか?」

 僕は半ば諦め顔で身を引き、頭上にいるリリラアンナと、隣のデルガカナの存在を暴露した。

「一夜にして突然その二人も僕の周りに現れた。どうやらその犯人は君だったようだ。」

「ええ、あんたたちも来てたのね!みんなセリホを探してたの?それは良かったわね!」

 とリリラアンナが笑顔で言い、枕からゴロンと転がり落ちると、ベランダのカーテンをサッと開けた。

「二十一歳のおばさんが、そんなこと言うのはやめようぜ」と、僕はわざと共通語で返した。

「は? 二十一歳のどこが『おばさん』なのよ? ミルク臭いガキのくせに、女の子のこと分かったような口を——」

「なんか私、ただチェスやってただけで『おばさん』って呼ばれたことあるんだぜ?」

 これを聞いて、リリラアンナは微妙な表情で僕を見て、ゆっくりと面白がるように語尾を引き伸ばして言った。

「『私』?へぇ〜? あ〜〜! そ〜う〜〜な〜ん〜〜だ〜〜!」

「なんでそんなにニヤニヤしてる? もういい。私、朝のトレーニングに行くから。」

「おい、グラウシュミ、グラウシュミ! こいつ、毎朝トレーニングしてるって!? めちゃくちゃ律儀じゃん!」

「そうよ、私も毎朝、彼に付き合って一緒にトレーニングしてるよ!」

 と、グラウシュミがにっこりと自慢げに言った。

 入学試験に実技試験が含まれると聞いて以来、僕はグラウシュミと一緒にトレーニングを重ね、戦闘技術を磨きながら、必要な筋力トレーニングも取り入れてきた。

 そのとき、突然デルガカナが口を開いた。

「デルガカナも、仲間に、入りたい。デルガカナも、オレリア、みたいに……第二の、オレリアに、なりたい……」

 彼女の声はどこかためらいがちで、心の中の想いを適切な言葉にしようと、慎重に言葉を選んでいるようだった。

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