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1-14 僕、みんなにチヤホヤされてる(1)

「首領である貴方が、外の何十匹かの蛇に絡まれるなんてことがあるのか? 余にはちょっと信じがたいねぇ。」

「リリラアンナ、君は知っているはずです。首領の存在は、四系の首領以外には基本的に知られていないものです。」

「無詠唱の風系首領として、魔法の原理を完璧に理解している君が、ここで余を黙らせるつもりかい?」

「そんなことをするわけがありません。約束しましたから。」

「その『約束』って、誰としたの?」

 初めての学校、こんなにハラハラドキドキしながら過ごした。

 幸いなことに、他のチームではまだ誰も怪我をしていないみたいだ。

 まあ、当然と言えば当然かも。

 だって、一番厳しい環境で、障害物の多いチームですら全員が無事だったんだ。

 でも、他のチームも迷宮を探索していたけど、探検から帰ってきた後は、みんな体調を崩している様子だった。

 原因は、主に回復役の不足だと思う。

 花系魔法で回復できるヒーラーが少ないんだ。

 たとえ比較的安全な20層とか10層で活動してたとしても、隊員たちはどうしても未知のエリアの影響を受けて、SAN値が下がっちゃった。

 このようにして、ヒーラーの重要性がはっきりと浮き彫りになった――しかし残念ながら、彼らはそれを十分に理解しているとは言い難く、むしろ「なぜオレリアが僕たちの指導役なのか?」という点ばかりに注目していて、チーム編成における回復役の不在という根本的な問題にはあまり踏み込んでいないように思える。

 確かに、オレリアはその圧倒的な攻撃力で知られているが、火力だけに頼っていては、多様で厳しい状況には対応しきれない。

 実際、状況が厳しくなるほど、ヒーラーという存在の価値はどんどん増していくのだ。

 初日の訓練だけで、全身がバラバラにされたような感覚で、体中が痛くて、力なんてまったく残ってなかった。

 フラフラしながらなんとかシャワーを浴びて、ほとんど這うようにベッドに倒れ込むと、もう何も考える余裕もなく、そのまま意識が遠のいていった。

 特優クラスのカリキュラムは実戦訓練がメインだから、毎日激しい練習が当たり前になっている。

 体調のためにも早寝早起きを心がけて、鐘の音と同時にすぐに眠りについた。

 ……

 ……

「ここは……?」

 ぼんやりとした意識の中で目を開けると、まわりは不思議なほどの静寂に包まれていた。

 視界には霧が漂い、空間全体がかすかに白く染まっている。

 すべてが淡く、夢と現実の境界があいまいで、ここがどこなのか見当もつかない。まるで自分が霧の中に溶け込んでいくような、不思議な感覚だった。

 そのとき、視界の端にひとつの影が見えた。

 白い短髪だけがただひとつ、視界の中でくっきりと浮かび上がり、ほかのものとは異なる存在感を放っている。

 しかし、その人物の顔も輪郭も、何もかもがぼやけていて、「白髪の人影」という曖昧な形でしか認識できなかった。

 そして、その人影が突然話しかけてきた。

「手動式エレベーター、廃墟の地下都市、捨てられた工場……これらすべて、どこか異様だと思わないか?」

 意味のわからない不安が、じわじわと体中に広がっていく。

「……」

 何かを答えようとしたけれど、喉が詰まったように言葉が出てこなかった。

 無意識のうちに、ひとつの疑問だけが口をついて漏れた。

「お前は……誰?」

 問いかけに対し、白髪の人影は一瞬、こちらを見つめていた。

 視線が合ったその瞬間、まるで心の奥まで見透かされているような、奇妙な感覚がこみ上げてくる。

 しかし、彼の顔は相変わらずぼやけたままで、その表情すら読み取れない。

「僕は……」

 その人影が何かを答えようとした、その瞬間――

 不意に視界が暗転し、無数の数字と記号が脳裏に浮かび上がった。

「00#00?00 00??000# @//0!0*0 00\\0000 0\/\00!( 0)//000、」

「?!!」

 謎のコードが頭の中で繰り返され、意識はますます混乱していく。

 まるでその数字と記号が脳内を締めつけ、何か大切な記憶や真実に迫っているかのようだった。

 景色がぼやけ、視界の端からじわじわと闇が広がってくる。

 そして、すべてが静かに消えていった。

 白髪の人影も、立ち込めていた霧も、まるで霧散するかのように、ふっと消え失せた。

 残されたのは、空間に漂う妙な冷たさと、胸の奥底に残る得体の知れない感情だけ――

 言葉にできない、なんとも言えない不安が、いつまでも心に引っかかっている。

 どこかで意識が途切れ、暗闇が一気に自分を包み込んだ。

 浮遊感に包まれながら、そのまま引きずり込まれるように、深い闇の中へ堕ちていく。

 次に目を覚ましたとき。目を開けて周囲を確認しようとするが、なぜか胸が重い。

 さっきまでの幻がまだ残っているかのように、あの白髪の人物の言葉が耳の奥でこだましていた。

「廃墟の地下都市、捨てられた工場……」

 ゆっくりと体勢を整えようとしたが、なぜか仰向けだったはずの体が、いつの間にか横向きに変わっていた。

 そして、ふと胸元に、妙にリアルで柔らかな感触を覚えた。驚いて確認すると――

 ……グラウシュミだった。

 だ、誰っ!?

 グラウシュミがこちらに向かって、すやすやと寝息を立てている。

「?!」

 そして、後ろにも……何かいる?

 いや、正確には「誰か」がいる……?

 体を反転させ、恐る恐る振り返ってみると、そこには――

 デルガカナ。

「……?」

 え?

 何?

 えええーーーー?????

 もはや頭の中はパニック状態で、どこから突っ込めばいいのかわからない。

「両手に花」とはこういうことを言うのか……いやいや、今はそんな冷静に分析している場合じゃない!

 グラウシュミとデルガカナが、まるで息を合わせたかのように、僕を左右から抱きしめているなんて……

 冗談にもほどあるね……。

 もはや夢としか思えないけど、これが現実だとしたら……いったいどうして、こうなった?

 ここは男子寮だぞ!?しかも、今の僕は男の子!!女の子じゃない!!

 最近、頭の中が疑問でいっぱいで、もう「いっぱい」って感じしかしない。

 いやいやいや、それも当然だ。こんな状況、普通じゃない。

 特に、デルガカナの抱きしめる力が意外と強いのが、また意外だった。

 寝てるのに、どこからそんな力が湧いてくるのか?

 まるで腕に吸盤でもついているかのように、ぎゅっと僕にしがみついて離れない。

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