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1-13 僕、前世の一部を明かす(3)

 言語が戻った。

「セリホ? 何話してるの?」

「くだらないことだ。」

「それなのに、二人ともわざわざ詠唱語で話してるんだね。」

 グラウシュミが、少し拗ねたように腕を組んで、可愛い姿を見せた。

「私には、全然わかんないことばっかり言ってさ。」

「余が思うに、たとえ普通の言葉に訳したとしても、君には難しいんじゃないかな〜。」

「むぅ!」

「あいつは、ただ余のことを面白おかしく話してただけだよ!」

 リリラアンナは、グラウシュミをからかうのが好きらしい。

「うぅ……」

 オレリアの隣にいたデルガカナが、まぶたをかすかに動かして金色の瞳を開け、こちらを見た——まるで蛇のような目だった。

「おい! 起きたのか?」

「動かないで。」

 僕はオレリアを制して、急いで近づきながら言った。

「せっかく腕や足を治したばかりだから、まだ小さな傷が残ってる。痛いだろうし、無理に動かさないほうがいい。」

「デルガカナ、感謝しています……。それに、前の3位決定戦の試合も……ありがとうございます……」

「今こんなこと話すの、ちょっと場違いかもしれないけど……さっき、何があったんだ?」

「あ、ああ……」

 デルガカナは頭を抱え、頭の中に響く消えない声と必死に戦っているようだった。

「デルガカナ……デルガカナの中に……何か声が……混乱してて……怖くて……それがデルガカナを乗っ取っていって……他の人にも……ごめんなさい、ごめんなさい……」

 デルガカナは、それ以上そのことを考えたくないようだった。すごく苦しそうだった。

 そっと、デルガカナの頭を撫でた。

「大丈夫だよ。今はみんな無事なんだから、もう考えなくていい。誰も君を責めてなんかいないから、気にしないで。」

 その言葉に、デルガカナは一瞬目を見開いたが、すぐに下を向いて唇をかみしめた。

「過去のことがまだ引っかかってるかもしれないけど、未来は『今』の選択と行動で作っていくんだ。」

「……っ、う、うあぁ……!」

 デルガカナは、我慢していた涙を一気にこぼし、小さな声で泣き始めた。涙が頬を伝い、声が震えていた。

「……うん!」

「えっ? まじで……?」

「……デルガカナには……過去なんてない!」

 彼女は落ち着いたようで、顔を上げて無邪気に言った。その瞳は純粋で、まるで子供のようだった。

 そう、デルガカナはただの子供だ。本当の子供!そう!

 忘れかけていたけれど、ここにいる五人のうち、一人は17歳だし、もう一人も実は17歳。それに、21歳の人もいるから……つい、本物の6歳児が二人いるってことを忘れそうになってしまうんだ。

「過去にとらわれず、人間はいつも前を向いて生きる。」

「うん、デルガカナ、わかった。デルガカナ、今を生きる。デルガカナ……セリホとリリラアンナのために生きる。」

「はあああああああああああああああああああああああ?」

「?」

「大!間!違い!だ!君は誰かのために生きるんじゃない!特に僕のためなんかじゃないんだぞ!」

「デルガカナ、わからない。誰かかも、知らない。ただ、セリホが、優しいことは、知ってる。」

 違うんだって!!君たち、理解力が足りなさすぎる!

 もし君たちが、僕とリリラアンナの前世の世界にいたら、どうやって読解力を鍛えてたんだ?国語のテストはもちろん、雅語の試験だって、リスニング以外は全部長文の難解な問題だぞ!ちゃんと理解してないと解けないんだ!

「僕のために命を懸けるなんて、絶対に許さない!自分のために生きてくれ。分かった?僕のせいで、そんな重いものを抱える必要なんてない!」

 ああ、こんな感じで読解力を出すなら、どうやって答えるんだよ、本当に!

「デルガカナ……こんなに、優しくされたの、今まで、なかった。デルガカナ……ただ、優しくされ、そのまま、優しく、生きたいだけ、望んでいる……」

 このセリフ、少し言い回しに違和感がある……

「だから、デルガカナは、セリホと、リリラアンナのために、生きる。でも、これからは、違う、生き方をする。だから、特に、セリホ……どうか、デルガカナを、見捨てないで……」

 このセリフ、なんだかどこかで聞いたことがある感じだ。

 最後の「見捨てない」って言葉、確か、ある高位魔物のスライムが言ってた気がする。

 ヴィーナ? これどう思う?

 ……ヴィーナは答えなかった。まあ、いいか。

 上に上がる途中で、人間関係を整理してみようと思った。

 今のところ、周りの人たちが僕に近づいてくる理由はそれぞれ違っていて、なんだか変な感じがする。

 まず、グラウシュミ。

 この世の長い付き合いの幼馴染だ。まあ、「普通の幼馴染」って感じじゃなくて、彼女には僕に対してちょっと支配欲がある気がする。」

 次はオレリア。

 あの戦いで何度もぶつかってきたけど、彼女にとっては、僕がグラウシュミにだけ勝たせなかったことが引っかかっているみたいだ。

 なんか、複雑な感情が変な方向に行ってしまったのか、それとも何かきっかけがあったのか……

 はっきりとは分からないけど、普通じゃない気がして、ちょっと不気味だ。

 正直、認めたくはないけど、状況を見る限り、リリラアンナこそが唯一、普通の人なんじゃないかって思う。

 他の連中が変なことをしている中で、彼女だけはなんか違う。「好き」って言ってくれるけど、その言葉が軽くないというか……なんか、距離感があって特別だ。

 いつも近すぎず、でも冷たくもない。その絶妙な感じが、めっちゃ心地よく感じられた。

 それに、同じ元の世界から来ているから、彼女も僕と同じように、あの世界の理屈や価値観を引きずって、この異世界の変なルールや感情に飲まれずにいられるのかもしれない。

 デルガカナのことを考えると、赤ちゃんや子供の頃に、かなりのトラウマがあったみたいだ。それが影響して、依存心が強くなっているんだろう。

 困ったときに助けてくれた人に、どうしても頼らなきゃいけない。でも、それが逆に、他の人との距離を作ってしまっているんだと思う。

 ある意味、この気持ちは分からなくもないな――

 って、違うって!

 心の傷を「面白い」とか「新しい」とか「憧れ」なんかにしちゃダメ!

 痛みから生まれるのは、暗い影と不健康さなんだぞ!

 それに、萌え要素をリアルに持ち込むんじゃねー!

 安易に「黒化」とか思ってんじゃねー!

 ……ほんと、お願いだからちゃんと線引きしてよ! 二次元と現実は、全然違うんだからさ!

 仮想(二次元)と現実をごちゃ混ぜにして、二次元の好みで人の中身を判断しようなんて──

 そもそも、その考え方自体がおかしい。

 こういう人、マジで脳神経科に行ったほうがいいんじゃないかって思う。

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