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1-12 僕、迷宮で危険にあった(3)

 僕は適当に返事をしてからシステムを起動し、隠れた一角に滑り込んだ。

 システムの指示通りに調べてみると、純粋なサファイアが鉱脈の中に眠っているのを発見した。

 慎重にサファイアを鉱脈から取り出し、鍛えた風の刃で周囲の気流を操って、信じられないほど精密にこのサファイアを彫り上げた。

 そして、風の影と光の中で、舞い踊るように生き生きとした、蝶の形をした髪飾りが完成した。

「大変見事だと存じます。」

「褒めてくれてありがとう、システム!」

「いえ、とくにそのようなことはございません。」

「おかしいね、システム。」

 元の場所に戻ると、オレリアはチームの他の二人を守っている――リリラアンナはどこかへ行ってしまい、デルガカナはぼんやりしている。

 グラウシュミは、このサファイア鉱脈の壮大な景色を夢中で記録している。

 きらめくサファイアと彼女の髪が重なり合い、とても美しいコントラストを描いている。

 僕はそっとグラウシュミに近づき、声をかけた。

「グラウシュミ、これ、見て。」

 僕は手にした作品を彼女に見せた。

「これは……?」

 グラウシュミは不思議そうに僕の手元を見つめていたが、少しして驚いたように叫んだ。

「蝶だ!すごく綺麗!」

「これ、君にあげる。」

「本当にいいの?」

 グラウシュミは少し驚きつつも自然に髪飾りを受け取り、自分の髪につけた。

 その時、どこからともなく現れたリリラアンナが、まったく遠慮なく冗談を言った。

「あらあら、恋愛初心者っぽい姿が本当に純粋で可愛いわ〜」

「……?」

 それ、どう見ても恋愛とは言い難い。それは絶対に、リリラアンナのただの意地悪だ。

 精神年齢の差が大きすぎて、そもそも恋愛感情が芽生えるような関係ではない。むしろ、普通の兄や父が、娘や妹を気遣うような、親愛や保護に近い感情だ。

 本当に好きなら、やっぱり莫辞遐とか、一姉にならわかるけど、まだそんな気持ちにはなっていない。そう考えると、やっぱりただの意地悪に違いない。

 さて、どうやってやり返そうか……

「そもそも君だって恋愛をしたこともないし、恋愛軍師をやったこともないでしょ?」

 僕はそう言いながら、グラウシュミの頭にあるサファイアの蝶の飾りを調整し、「ここをもう少し傾けて、もう少し後ろに……」とつぶやいた。

 細かい調整を終えると、それはグラウシュミの髪の中で、さらに生き生きと輝きを増した。

「うん、これで完璧だ。」

「センスがいいね」と、オレリアが言った。

 もしかして、また自分を攻略しようとしているんじゃないか……そんな気がした。

「オレリア様」と、デルガカナが突然発言した。「あの、ちょっとお聞きしたいことが……」

「どうしたの?」と、オレリアは振り返った。

「この空間、非常に異常です。」

「もちろんよ。この空間自体が、普通ではない」とオレリアが答えた。

「え?」

 その瞬間、地面が崩れ、強いエネルギーの波が空気を震わせた。

 オレリアは僕たちに背を向け、まるで堂々とした壁のように立ちふさがり、後ろから現れた不気味で恐ろしい巨大な化け物を遮った。

「誰だ——?」

 その化け物は、すごい唸り声を上げながら叫んだ。

「ハハ。おかしいね。」

 リリラアンナは、僕たちが何が起こったのかわからないまま、突然、感情のない声で口を開いた。

 その化け物は、形や大きさの異なる無数のクリスタルが組み合わさってできており、クリスタルの隙間は、想像を超えた力によってつながっているようだった。

 光が当たるたびに、クリスタルはキラキラと輝き、まるで生きているかのように感じられた。

 また、一部には未知の生物の不完全な肉体が混ざっており、そのせいで全体が、奇妙でありながら華やかな生命力を放っていた。

「システム、鑑定。」

 僕は急いでシステムを起動し、鑑定を始めた。

「承知しておりました。」

 結果が表示された。

 化け物の体はかなり硬く、魔法でも物理攻撃でも簡単には通じないという。魔法にも物理攻撃にも強く、数値も驚くほど高かった。

「迷ったな……」

 このデータはおかしい。

 ……待って、なぜ僕はこんな反応をしているんだ?

 心の中で混乱が広がり、何かが引っかかる。

「懐かしい。」

 え?

 これほど強力な存在に直面して、普通なら恐れや不安が先に立つはずなのに、どうして「懐かしい」という感じがでるの?

 これは一体、どういう意味?

 頭の中がぐるぐると回る中、僕はさらに考え込んだ。

 いくつかの奇妙な映像が脳裏に浮かび上がり、妙な声が混ざって聞こえてきた。

 誰かが奇妙なことを話している。

 誰かが意味不明なことを言っている。

 でも、それが気に入らなかった。

 たぶん、システムのエラーだろう。

 あの化け物は頭が大きく、目はまるで二つの輝くクリスタルのようにキラキラしていた。

 大きな口が開くと、サファイアでできた鋭い歯が見え、その唸り声や怒鳴り声には、普通の人でも思わず恐れを感じるほどの威圧感があった。

 化け物の四肢は太くて力強く、そこに埋め込まれたクリスタルは、それぞれ異なる特徴を持っていた。

 爪は刃のように鋭く、軽く一掴みするだけで獲物をがっちり捕まえられそうで、背中には鋭いクリスタルの棘が生えており、まるで棘の鎧のようだ。

 長い尾も力強く、鱗にはクリスタルがびっしりと並び、危険な光を放っていた。

 オレリアは足を軽く地面に着け、風を巧みに利用して、一気に空中へと舞い上がった。

「いくぞ!」

 彼女の声が響くと、冷酷な剣風が化け物の弱点を狙い撃つように放たれた。

 化け物はその巨体ゆえに反応が遅れ、まるで動けないかのように見えた。

 その瞬間、鋭い魔法が一瞬にして数か所を直撃した。

「グオオオオッ!」

 化け物は苦痛の咆哮を上げ、周囲の空気が震えた。

 オレリアの手に握られた大剣が、化け物の硬い棘のある鱗に衝突し、耳をつんざくような衝撃音が響き渡った。

「やっぱり、こいつはただの化け物じゃない!」

 オレリアは剣を引き抜き、さらなる攻撃を仕掛ける。大剣が振り下ろされるその瞬間、その刃はまるで豆腐を切るかのように、化け物の硬い棘の鱗をいともたやすく斬り裂いていった。

「もう一発!」

 すると、剣が化け物の身体の核心部に深く食い込み、深い傷を残した。

「すごいです。」

 デルガカナがそうつぶやいた瞬間、化け物の身体はすでに傷だらけで、クリスタルの破片が周囲に飛び散っていた。

 オレリアは一瞬の迷いもなく大剣を構える。

「見ててね、これで終わらせるから!」

 その目は真剣そのもので、強い攻撃の意志に満ちていた。オレリアは風の魔法をまとい、全身全霊を込めて最後の斬撃を放った。

 剣が空を切り裂き、まるで運命を決定づけるかのように、化け物の身体に深く入り込んでいった。剣の刃が化け物の硬い鱗を貫通し、オレリアの心臓の鼓動が高鳴った。

「これが私のすべて!」と、彼女は心の中で叫んでいた。

 剣が化け物の核心部に到達すると、そこから鮮やかな光が放たれ、まるで爆発するかのように周囲を照らした。

「うわぁっ!」と、驚きの声を上げる中、化け物は一瞬の静寂の後、悲鳴を上げて倒れ込んだ。

「よし。」

 オレリアが大剣を収めると、安心した表情を浮かべた。

「脅威は解決。これでこの層は完全に安全になった。」

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