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1-11 僕、初登校(4)

「最高だ! ラッキー!」リリラアンナが大喜びで叫んだ。

「それじゃあ、迷宮ってどんな場所なのかな?」

 おいおいおい、思いっきり知らんぷりしてくれてるけど、さっきの自己紹介で家の事情とか、全部バラしてたじゃないか。この程度の迷宮のことくらい、知らないわけないだろ?

「本当に知らないんだもん〜! 知ろうと思えば知れるけど、知らないの〜!」

 と、まるで誤魔化すかのように言い訳してきた。

「?!」

「このセリフ、なんだか僕に言ってるみたい。でも、僕はまだ一言も喋ってないのに……どうして僕がそう考えてるってわかったの?」

「迷宮というのは、広大で謎に包まれた地下空間で、全100層の深さがあります。各層ごとに異なる謎や危険が待ち受けています。」

 と、オレリアが説明を始めた。

 グラウシュミは真剣な顔で話を聞き、重要な情報をすべてメモしている。

「最初の59層には、茂みが生い茂る森や、廃墟となった地下の工場、そして長い間誰にも訪れられず、かつて人々が住んでいたとされる場所があります。高くそびえる石の壁、空を覆う鉄の構造物、地中に埋もれた古びた道、未知の力で動く装置など、迷宮にはそうしたものが数多く存在し、現在のところ、そのあたりまでしか探索は進んでいません。」

 まるで夢のような場所だ。

「えー、それだけ?」とリリラアンナが口を挟む。「百層もあるのに、なんでさらに探索しないの~?」

「迷宮の各層には、それぞれ独自の生態系や特異な生物が息づいており、層ごとに謎やルール、試練が待ち受けています。すべての仕掛けを解き明かし、強力な階層ボスを倒さなければ、次の層へは進めません。」

「じゃあ、どうやって迷宮の中を進んでいくの? 一層ずつ階段で下りたりする?」

「いいえ。探索を完了した層には、その層の入口と出口を結ぶ手動式エレベーターが設置されています。これを起動すれば、解放済みの層間を簡単に行き来できます。」

「なるほど。」

「ただ、まだ攻略されていない深層では、新しい層に到達するたびに、そのエレベーター装置を見つけ出さなければならない。」

 とオレリアが説明を終えると、先生が続けて言った。

「そうそう、これの説明を忘れていました。」

「だいたいその通りだ。これから皆さんを小グループに分け、迷宮を探索してもらう。隊長について行き、迷子にならないように気をつけてください。」

 その後、僕とグラウシュミ、リリラアンナ、そして遅れてきたデルガカナが同じグループになり、僕たちの指揮官にはオレリアが就任することになった。

 他のチームからは不満の声が上がっていた。

 特に、ブレランカイスニという名門家の青白い髪の少(?)女と、彼女に従うランス家のリツイベットが、小声で愚痴をこぼしていた。

 ラルシェニも何度かうなずいていたが、すぐにおとなしくなった。入学試験の影響かもしれない。

「で、なんでわたくしとあんたが同じグループになるの?彼女にすら勝てないなんて、恥ずかしくないの?もうオレリアからの指導は受けられなくなった!」

「それはですね……」

「言い訳するな。全部あんたのせいよ!それと、彼女と一緒にいるのを邪魔しないで!」

「はっ、わかりました。リツイベットさん、ご安心ください。」

「それは……本当に、『男の人と女の人が話しています』って感じだね。」

「黙れ。オレリア、今日はどの層から探索する?」

 リリラアンナを無視して、オレリアに早く出発しようと促した。

「もちろん、六十層」と、オレリアが微笑んだ。

 その視線に、一瞬背筋が寒くなった。彼女は何か話すとき、時々こんなふうに照れくさそうな表情を浮かべることがあって、たまらない。

「でも、一緒に行くんでしょ?安全性とか、ちゃんと確保するよね?」

「セリホ、私のこと忘れたの?剣術ではあなたに負けたことがあるけど、それ以外では負け知らずなんだから……」

 オレリアはそう言って、風系の持続魔法を唱えるふりをしながら、手動エレベーターの操作を始めた。

 エレベーターが重々しく動き出し、その揺れとともに、まるで眠りから覚めた巨獣の腹に飲み込まれるような感覚が広がる。

「それに、見てみて。このパーティ編成、すごくバランスがいいと思わない?」

 と、リリラアンナが不思議そうに声をかけてきた。

「バランスがいい? どういうこと?」

「簡単だよ~!文系も理系もこなせるタフな人が一人、実戦に強い人が一人、文武両道で超回復もできる大ヒーラーが一人、そしてもう一人は……誰でしょう~?」

「リリラアンナだ。」

 少し皮肉を込めて答えた。

 要するに、簡単に言えば、メインアタッカー、ヒーラー、サブアタッカー、タンクの四人構成。四人パーティーとしては、確かに完璧なバランスだ。

「正解……じゃない全然! でもね、普通なら特優クラスって毎年十人しか採らないのに、今年は珍しく十二人もいるんだよ? なんでかわかる?」

「それなら十三人とか十六人にならずに済んでありがたい。」

「おや? その感情、嫉妬?」

「……そんなはずある?」

「私たちは実力で入ったんだから!」と、グラウシュミが誇らしげに胸を張った。

「自分にそんな実力がないからって、嫉妬の感情を他人に押し付けるのは、そろそろやめてくれないかな。」

「もちろんもちろん~、実力って大事だよね~! 余は全然嫉妬しないよ~。でも、ちょっと経験がプラスされるとさ~」

「ぴゅる。」

「どうしたの、ヴィーナ?」

「ここは、なぜか少し『懐かし……くない』感じがする。」

「ここから?」

「気のせいかも。でも、それが大事なことだと思ったから、主人には伝えなきゃいけない。」

「分かった。それは確かに……」

 心の中の対話を終え、リリラアンナの冗談を無視して、オレリアに尋ねた。

「オレリア。」

「何のこと、セリホ?」

「今日、この六十層での目標って、具体的に何かある? たとえばスライムを何匹倒すとか。」

「目標は、その時が来たら教える。でも……『スライム』?」

 聞いてはいけないことを口にしたような気がして、オレリアは少し驚いた。

「どうしてスライムのことを知ってる? あれは中級魔物で、普通なら君たちはまだ知らないはず。光を放つ高級な個体もいるの。」

「……リリラアンナから。口が軽いから、仕方ない。」そう言って、鬢髪を少し巻き上げた。

「そっか。」

 エレベーターの揺れが次第に落ち着き、世界がしんと静まりに返ったようた。重力に引かれた鉄の鎖がかすかに揺れ、深い地底で静かに音を立てていた。

 オレリアがエレベーターの開いたドアの前に立ち、わずかに身を屈めて、僕に手を差し伸べた。」

「ようこそ、六十層へ。」

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