1-11 僕、初登校(1)
「まさか、まだ起きてないのか? それじゃあ、先に挨拶しておくか……お邪魔しまーす!」
「ちょっ……鍵をグラウシュミに渡したのか!?」
「ち・が・う! 『お邪魔します』っていうのは、つまり……暴力的に鍵をこじ開けて入ってくるって意味で!お願いだから、残りわずかな生活費のことをちょっとは考えてくれよ——!!!」
人を引っ張った反動で、外に無意識にツルを生やすための力が、グラウシュミが鍵をこじ開けようとしたその瞬間、ドアが「カチャッ」と音を立てて開いた——
そしてグラウシュミが目にしたのは、さまざまな突発的な出来事の結果、地面に膝をついていた僕と、その下敷きになってしまったオレリアだった。
「おはよう、セリホ! 起きてないかと思ったよー……って、えっ、オレリア・イサドラ様!? どうしてここに!?」
僕は苦笑しながら、鬢髪を少し巻き上げた。
なんとか誤魔化す。
「あー、これはね。前に僕に負けたこと、覚えてるだろ? それで今回は、リベンジしに来たの。」
「へぇ、そうなんだ!失敗からどんどん学んでるなんて、さすが対外戦で百戦無敗の戦神様だね!でもさ……」
グラウショーミは興味津々に尋ねた。
「彼女、なんであんなに顔が赤いの?それに、なんで倒れてるの?まさか、君に叱られて泣かされたとかじゃないよね?」
なんて純粋なんだ!!! 前世と現世で守り続けてきた清らかさ(?)が、まさかこんな偶然によって守られるなんて!!」
「う、うん……後で一緒に行くから、ちょっとだけ一人にしてくれ……」
「わかった!でも、変なことしちゃダメだよ!特に、また誰かを泣かせたりとかは絶対にダメだからね!」
そう言いながらも、グラウショーミは心配そうにオレリアをもう一度見やり、勢いよく扉を閉めた。
ひとまず安堵の息をついたが、すぐに倒れているオレリアの顔を見ると、なぜか満面の興奮を浮かべて、「……なんてことだ……こんな感覚を直接味わえるなんて……これが……」と呟いていた。まるで何かに目覚めたかのような表情だった。
……え、いやいや、まさか本当にそんな趣味があるのか!? や、やばいって!!
「ちなみに、もし拙者に実体があれば、お試しになってみたいというお気持ちになるかもしれません。」
「は!? システム???まで!? ダメに決まってるだろ! 僕の前世の顔つきを使ってるんだからな、変なこと考えるなって!!」
システムとの内心のやり取りを強制終了させた後、急いでオレリアを起こし、ふと彼女が持ってきた本に目が留まった。
……なんか、これ、恋愛小説っぽいな。
ページをパラパラっとめくってみたら、折り目がついているのは全部、男女の感情が盛り上がるシーンばかりだった。
……え、そういうことか。
「オレリア!」
僕は彼女に向かって声をかけた。
「は……」
「君の情熱や、物語から学ぼうっていう気持ちは本当に尊敬する。でも、お願いだから、創作をそのまま現実に持ち込まないでくれ!現実と創作の違いくらい、ちゃんと意識してくれよ!」
「……なるほど。」
オレリアは少し考え込み、「それなら次は夜に忍び込むことにする」と、納得したように言った。
「ち!が!う! そこじゃないんだ!」
「どこ?」
「オレリア、問題は時間のことじゃなくて、他人のプライベートとか境界をちゃんと尊重することだ。オレリアの生活は戦争とか訓練が多いから、そういう人間関係の微妙なルールには、あまり慣れてないかもしれないけど……」
「でも?」
「……自分の行動が正しいって、一方的に決めつけて他人の生活に勝手に踏み込むのは、良くないんだ。正直に言うと、それはちょっと困るなあ。」
「そっか……じゃあ、またあとでね。」
オレリアはそのまま窓から身をひるがえし、屋根へと飛び去っていった。
「……『またあとで』って、そうじゃないんだよ! ああ、もう……どうしてこうも通じ合わないんだ……歯も磨けてない……」
階段を降り、教室へ向かう途中、ある元気な声が耳に飛び込んできた。
「おはよう!」
振り返ると、そこには満面の笑みを浮かべたグラウシュミがいた。
「初登校の日だよ! おはよう!」
「おはよう、グラウシュミ。すごく元気そうだね。もしかして、初めての登校でテンションが上がって、早起きしちゃったの?」
「もちろん! 今日は新しいクラスメイトにいっぱい会えるんだよ? ワクワクが止まらない!まぁ、一度か二度、剣で挨拶したかもしれないけど……顔は全然覚えてないや! 緊張する——!」
「まあ、それが普通だ。一度しか会っていない顔なんて、覚える方が難しいかも。むしろ、道を覚える方が実はかなり挑戦的なことだよ。」
一姉は方向音痴だからね。
朝の運動と朝食を終え、教室へと歩いて行く。予想通り、クラスの筆記試験1位・実技試験2位の僕と、筆記試験2位・実技試験1位のグラウシュミが、教室に一番乗りしていた。
「1位と2位が揃うなんて、これはおめでたいことだ。」アシミリアン先生が教壇に立ち、厳格な表情で言った。
「9時の授業に8時から登校するとは、さすが数年に一度の優等生だ。」
「習慣です。21日続ければ身につくんです。」僕は淡々と答えた。
「あ、先生、今日は森林での実地研修があるんじゃないですか?」
「そう。他のクラスは今日は森林学習を行うことになる。しかし、君たちは特優生なので、今日は少し違うプランがある――」
言い終わるか終わらないかのうちに、教室のドアが「バァンッ!」と勢いよく開かれた。
紫色の長髪を姫カットにし、後ろ髪を二つの輪っかにまとめてヘアゴムで留めた少(?)女が、信じられないほど派手なスライディングポーズで滑り込んで、
「じゃじゃーん!今日の余は誰よりも早く登場っ――!!!」
と大声で高らかに宣言した。
そして、その言葉に反応して、彼女はそのまま教壇に激突し、頭をぶつけて、額に二つの大きなたんこぶを作ってしまった。
「いたたたたっ!……って、あれ?ま!さ!か!!!!余が一番じゃない!!!!!もう二人も来てるの?!!!!!!」
グラウシュミは突然の乱入に驚き、一瞬たじろいだが、すぐに礼儀正しく「えっと、こんにちは?」と挨拶した。
「やっほー!おっはようー!みんな、おはようー!今日は天気がいいから、ぜーーんぶまとめておはようううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!!!」