1-10 僕、良質な睡眠がとれなくなる(1)
試験結果がつい発表された。
教室に集まったみんなは息をのみ、成績表を見つめている。
その中で、僕の名前が堂々と一番上に載っているのは、予想していた通りだ。
満点からたった10点だけ減点されており、それは予想し、意図的に間違えた部分と完全に一致していた。
2位のグラウシュミとは、13点もの差をつけている。
注目すべきは、3位に名前を連ねるあの「リリラアンナ……」という名前の長すぎる人だ。
2位との差が30点以上もあるなんて、もう明らかに力の差が見て取れる……か?
微かな違和感を覚え、この成績が表面以上の何かを示しているのではないかという気がして、どうにも気がかりが拭えなかった。
そして、「こんなことに気づく」こと自体も、意図的に仕組まれた何かがある気がしてならないのだ。
「……」
気のせいか。
ちなみに、入学試験では魔法を主要なものとせず、戦士スキルの補助的なものとして扱っていた。
これでは、ミスを招く内容になっているのではないだろうか?
授業には魔法に関する科目がやたらと多くて、魔法や文化の授業がこれからの生活でかなり重要になるってことが、他の時間割を見て、なんだかますます確信に変わったんだ。
学校の運営側には、どんな意見の食い違いがあるんだろう……。
とはいえ、この国立総合大学の教育方針は、僕にとってはむしろ有利であることは間違いない。筆記試験での僕の成績はかなり優れているから、要求にはしっかり応えられるはずだ。
まあ、教育の公平性とか入試の効果を考えると、この入試の設計にはけっこう議論が必要だっていうのが、正直なところだ。
このクラスのメンバーは全部で12人なんだけど、少なくとも2人の名前はもう覚えた。
特優クラスに入った人たちは、特典として一人部屋の寮が与えられる。
夜が更けてきて、広い一人部屋のバルコニーの手すりに腰掛けながら、キラキラ光る星空と清らかな月を見上げていた。
キャンパス全体が柔らかな月光に包まれていて、なんだか幻想的な雰囲気が漂っている感じだ。
校舎の隅にある古い時計塔が夜空に高くそびえ、その鐘の音が毎晩、校内の隅々まで響いている。
「時計……か。まさか、ね。」
苦笑いを浮かべ、この安らぎに浸りながら、一息ついていた。
そのとき、まるで夢から現実に引き戻されるように、誰かの影が静かに僕の窓枠に飛び乗った。
グラウシュミ? いや、彼女の部屋はここから遠いし、風系魔法に適応できない彼女が、こんなところに来るはずがない。
じゃあ、誰? 特優生のほとんどは知らない人たちだし……
もしかして、僕の命を狙っている……?
すぐに魔力を呼び起こし、冷気が一瞬で集まって、固い氷の壁が目の前に現れた。第六感が警告している——この敵は、相当な攻撃力を持っている。
案の定、敵の攻撃は凄まじく、氷の壁はあっという間に粉々になった。その破壊力と、見覚えのある攻撃の感触から、ある人が頭に浮かんだ。
——オレリア。
「どうして!」
オレリアはまた刃を振りかざしてきて、僕は窓枠に飛び乗って避けた。
「どうして、どうして、どうして!」
「少し落ち着け、オレリアさん。何があった……」
「どうしてお前が……負けた!」
オレリアは再び刃を振り下ろし、僕は身をひるがえして避けながら、氷壁を展開し続ける。
「ただ……戦いたくない。」
「もう一度言ってみろ?」
するとオレリアは突然、鋭い風刃を放ってきた。
この攻撃、めちゃくちゃ巧妙で、なんか違和感があった。
反射的に防御しようとしたけど、そのすごい一撃を完全には避けきれず、風刃が体をかすめ、鋭い痛みが走った。
「……」
間違いなく、オレリアの戦闘技術は本当にすごくて、思わず彼女がこの「イザカルス国立総合大学校」に在籍していた頃からすでに軍を率い、戦場を駆け巡っていたのではないかと想像してしまう。その戦果は輝かしく、一度たりとも敗北を喫したことがないという——
もちろん、僕とのこの戦いで負けたことは別として。
「まあ、どうでもいい。」
急いで花系魔法を傷口にかけながら、さっきの戦闘で感じた不自然さについて考えていた。
人物? 地点? 時間……
時間だ!
「お前の適応データを確認した! お前は珍しく、三系の魔法に適応した魔法使いだ!なんて!」
そうだ。オレリアはまったく詠唱をしていなかった!
だからこそ、あんなにも簡単に僕の部屋に現れたんだ! 僕と戦っているときも、ずっと!
無詠唱の魔法使いは、魔法を剣に付与する際に、それが「詠唱をしない」という形で現れてしまうのだ……!
納得だ。
凄まじい風の勢いを感じた。風刃が次々と迫ってきたので、急いで寮の上に這っていたツルを使い、屋上へと引き上げられて、その致命的な攻撃を回避した。
「おいおい、オレリアさん。これって何なの? 勝手に侵入して、こんな大騒ぎを起こすなんて、明らかに殺人未遂だろ?」
意図が明らかになると、僕は反撃の気を完全に捨て、すべての力を防御に注ぎ込んだ。
「でも、さすがは雪と風、その二系統の強攻魔法を自在に使いこなす、十二歳で戦場に出てから五年間無敵を誇った……」
「ふざけるな!私がお前に負けたのに、お前がそんな奴に負けたってのか!あんな雑魚に負けるなんて、私を挑発してるのか?」
「そんなつもりはない! ただ、あまり目立ちたくないだけだ!」
今、僕たちは寮の屋上の人目のない場所に立っていた。誰もここには来ないので、遠慮せずに大きな声で話すことができた。
「筆記試験は、何度受けても必ず一位を取るよ。もし実戦でもトップを取ったら、僕の存在感が強すぎる!」
「筆記試験で簡単に一位になれるの? その自信、どこから来るの?」
「5分間で全問解き終えた。正解を間違いに変えることも含まれ。」
僕は手を広げた。筆記試験の結果は誰でも見ることができるから、特に言う必要もなかった。
「それなら、その機会を利用して実力を見せて、注目を浴びるべきだ!」
「オレリアさんも、実はその気なんじゃないの?」
僕は答えずに、オレリアの目を見つめて言った。
「何が『その気』? この五年間、戦場での戦績があるんだから、何も不満なんてない……」
「率直に言って、オレリアさんが戦場で魔法をあまり使わない理由は、詠唱なしで魔法を使える『無詠唱魔法使い』だからだと推測している。」