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1-7 僕、入学試験の予習をする(4)

「すごい……まるで美術館……」

 歴史の雰囲気に浸っていたその時、店主が手に持っていた剣を磨く手を止め、こちらをじっと見つめた。

 その目には、年齢を重ねた分だけの鋭さと温かさがある。

「武器を買いに来たのか?」

「はい、そうです。こちらに並んでいる武器は、どれも形がユニークで、技術の高さが感じられます。ぜひ、自分にふさわしい一振りを見つけたいと思っています。」

「少し見せてもらおうか。」

 彼の視線を感じながら一歩前に出ると、奥の棚から装飾の美しい剣を取った。

 剣の刃は厚く、宝石が輝いていて、店の灯りを受けてキラキラと光っていた。

 グラウシュミはその剣に見入っていた。どうやらこの剣が持つ独特な雰囲気に引き込まれたようだ。

「……」

 店主はその剣を手に取ると、少し自慢げな口調で話し始めた。

「これは、ただの剣じゃない。これは、昔の伝説が詰まった神聖な武器だ。」

「かつて不屈の戦士が使っていたこの剣は、どんな金属でも切り裂き、強大な敵の攻撃さえも跳ね返したと言われている。」

 話し終えると、店主はその剣を僕に手渡した。グラウシュミも期待に満ちた目でこちらを見つめている。

 でも、いざ手に取ってみると、どうも手に馴染まなかった。

 考えた末、少し慎重に尋ねてみた。

「すみません。他に何かありますか?たとえば、唐大刀とか環首刀のようなもの……」

 グラウシュミはその言葉に困惑した表情を浮かべたが、店主は少し驚いたように僕を見て、にっこりと笑った。

「ほう、見る目があるな。残念ながら本物は再現できないが、模倣品ならいくつかある。いわば『類唐大刀』ってやつだ。これらは本物には及ばないが、使い勝手も悪くない。」

 そう言って彼は、棚から慎重に数本の類唐大刀を取り出し、卓上に並べた。

「これがそうだ。唐大刀に似せて作ったものだが、十分実用的だし、見た目も悪くない。」

「そうですか……ありがとうございます。」

 僕は少し息を吸い込み、目の前に並んだ「類唐大刀」を一つひとつ、じっくりと見ていった。どの刀にもそれぞれ異なる特徴があり、手に取ると、まるでその刀の魂が伝わってくるような感覚がした。

 時間が経つのも忘れていた。ついに一本の類唐大刀に指が触れた瞬間――

「ん? この刀……?」

 無数の刀の中で、この一本だけが、まるで運命に引き寄せられるように手にぴたりと馴染んだ。長い時を経て、ようやく出会えたかのような感触に、胸が高鳴った。

 これが、僕がずっと探していた刀だ! 今、ここに、確かに存在している!

 その類唐大刀を慎重に抜き、じっと見つめた。

 刀の長さは大体3尺2寸くらいで、手に取った瞬間、その重さが絶妙で、まるで力が手から伸びていくような感覚だった。でも、驚くほど操作もしやすいんだ。

 刀身は銀白に輝いていて、まるで月が霜の上に積もったように純粋で冷たく、それでいて品がある。刀背から刃へのラインは流れるように美しく、山や川の曲がりくねった様子を思わせる。工芸品としての完成度と美しさがしっかりと表現されている。

 持ち手には上質な木材が使われていて、細かい木目が心地よく、全体のデザインとぴったり調和している。それに、柄の彫刻は精緻で、刃に沿って走る曲線が、まるで昔の物語を語りかけてくるように感じられる。

「これ……素晴らしい!」

 思わずシステムの鑑定機能を使って、詳細に分析してみた。すると、切れ味と耐久性が際立っており、重さとバランスも完璧に調和していることが判明した。

 その様子を見たグラウシュミも驚き、目を輝かせながら言った。

「こんなに完璧な刀……店主さん、これは一体どうやって作られたんですか? 私もすごく欲しくなっちゃいました!」

「残念ながら、この刀は偶然の産物で、同じものを再現することはできません。」

 店主は淡々と答えた。

「そうですか……」

 でも、これ……なんて素晴らしい! この刀、絶対に手に入れなければならない!

「店主さん、この刀、おいくらですか?」

「どうやら、この刀はお前さんと縁があるようだ。だから、特別に無料で譲ってやろう。」

 店主は少し考えたあと、穏やかにそう言った。

「え?」

 グラウシュミも、すっかり気に入った直剣を手に持ちながら、「じゃあ、この剣……?」と、ワクワクした様子で尋ねてきた。

「そうさ。君たち二人とも、この店の武器と見事に息が合っているようだ。だから、どちらも無料で譲ろう。」

「え、ええっ……でも、なんだか申し訳ないような……」

「いいんだ。この武器たちにとって、君たちのような主に出会えたことが、何よりの幸運さ。」

「あ、ありがとうございます!」

 何度もお礼を言いながら、僕たちは馬車に飛び乗り、帰路についた。

 店を出たあと、店主は再び自分の手元に目を落とし、先ほどまで手にしていた作業を見つめ直した。

 そして、ゆっくりと椅子に腰を下ろしながら、深い思いを込めて呟いた。

「五百年か……。代々受け継がれてきた家訓を、こうして見届けることができた。」

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