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1-7 僕、入学試験の予習をする(3)

「また的中した。」

「セリホ、学ぶのが早いね。すごいわ。」

 グラウシュミは、僕が夜中に書き出した昔の算数ドリルを手にしながら言った。

「まあ、人それぞれペースが違うからね。ただ、時間があれば本を読むのが好きで、気づいたら覚えちゃうんだ。」

「でも、そんなに時間がないのよね。試験もすぐそこだし。」

「今からでも、時間をうまく使えば、まだまだ学べるよ。たとえば、学習計画を立てて効率的に勉強すればいい。グラウシュミは元々優秀だし、僕の臨時先生を引き受けてくれる時点で、その才能は十分だと思う。」

「そう? なんだか、気持ちが少し軽くなったわ。」

「無理しすぎないことだよ。まずは簡単な問題から少しずつやってみて、それから徐々に難易度を上げていけばいいんだから。」

「うん。ありがとう、セリホ!」

「大丈夫大丈夫。お互い様だから。」

「そういえばセリホ、必修科目の剣術って、まだ習ったことないわよね?」

「弓術?」

「違うわよ! 剣!」と、グラウシュミは紙に「剣」と大きく書き込んだ。「これ、必須の実技試験科目なんだからね!」

「ああ、そういえば、そうだった。」

 前世では、ただのひ弱な書生で、毎日「莫辞遐」の代わりに一姉に使われていた。莫辞遐という人こそも、一姉が青いコンになった原因だ。

 ……いや、むしろ、一姉のために青いコンになったと言った方がいい

 さらに、一姉からは何度も「瞳をつけてコスプレしろ」と命令された。あの時は全力で拒否したけれど、今なら、ついそのまま受け入れてしまいそうな自分がいる。

「セリホ、剣を持ち歩いたほうがいいかもしれないわね。」

 グラウシュミは真顔でそう提案してきた。

「グラウシュミが剣術を教えてくれる?」

「無理無理!!実際には剣術のテストで、そこまで厳しい基準があるわけじゃないのよ。ただ、1対1の戦いで相手を倒せればいいだけだから。」

「おや?」

「たとえば、魔法で身体を強化するのもありだし、武器に魔力を込めるのもアリ。」

「なるほど。」

「ただし、魔法で直接攻撃するのはダ!メ!よ!」

「なるほどなるほど、そういうことか。」

「だから、本当はあと数日後に言おうと思ってたんだけど……セリホなら、魔力を強化できる剣さえあれば十分だと思ってたの。」

 グラウシュミは拳をギュッと握りしめて、まるで僕にエールを送るような仕草を見せた。

「セリホって、頭もいいし魔力もあるから、そういうところで他の人を圧倒しちゃうんじゃないかな?」

「剣を作るなんて、手間がかかりそうだな……待ってる時間もないし、既製品じゃダメか?」

 武器は、ただの道具ではない。

 使い手の技術が優れていて、魔法やスキルが極まっていれば、紙だって強力な武器に変えられる。

 そう考えると、わざわざ専用の剣を作る意味ってあるのか?――そんな気がしてくる。

「うーん、確かに手に馴染むものが一番だけど、なかなかうまくはいかないよね。でも、剣を作るのにそんなに時間はかからないよ?」

「でもさ、既製品でちょうどいいのがあれば、それでいいと思うんだ。今から探しに行って、ついでに移動中に勉強もできるし!」

「え?そうね!」

 7月14日。晴れ。

 今日もまた、賑やかな王都の中心に足を踏み入れた。夏祭りほどの人混みではないけれど、それでも行き交う人々の活気は、まったく衰えていない。

 狭くて曲がりくねった路地を抜けると、ようやくたどり着いたのは、さまざまな武器を扱う長い商店街だった。

 だが、店先に並ぶ武器を一通り見渡してみると、どれも外見だけの飾り物ばかりで、平凡な人間なら満足するだろうが、僕にはどれもいささか物足りなく思えた。

 やっぱり、自分で鍛え上げた剣を手に入れるのが最良だと実感するな……ん?

「ちょっと待って。」

 不意に視線の片隅に捉えた、一見すると地味でひっそりとした隅の店。

 その奥には、どうやら宝物が隠されているような予感がした。

「向こうを見てみるのはどう?」

「馬車は入れないみたいね。」

「じゃあ、歩いて行こう。」

 僕は先に馬車から飛び降りた。

 予想通り、目立たない一角に小さな路地が隠れていて、奥に進むと、少し古いが雰囲気のある武器屋があった。

 店の前はやや寂れた印象を受けるが、入口に吊るされた一本の剣が強く目を引く。

 この剣、硬さがちょうどよくて、実用性もバッチリだ。

 なるほど、これはきっと腕のいい店主がいる証拠だ。

 その剣の下には、シャンチーの盤が飾られていて……

 え? まさか、シャンチーの要素まであるとは……。

「ここかしら?」

「そう。この店なら、何か見つかる気がする。」

 武器屋に足を踏み入れた瞬間、時間が止まったような、奇妙な感覚に包まれた。

 店の中の飾りはちょっと変わっていて、でもどこか古くて重厚な雰囲気がある。

 壁には錆びた鎧や古い地図がかかっていて、まるで何百年も前の戦争の痕跡がそのまま残されているかのようだった。

 棚に並んでいる武器も、時間の経過を感じさせる佇まいで、古代ギリシャやローマの彫刻のように、優雅でありながら力強い美しさがあった。

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