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ラルシェニ-過去の日常(1)

 日の光が木の葉っぱの間からキラキラ降り注いで、庭の芝生にポカポカと落ちている。

 ラルシェニは庭の真ん中にある大きな石にちょこんと座って、手に持った小さな木の剣を一生懸命いじくり回してた。目はキラキラしてて、無邪気だけどどこか自信たっぷり。

 少し離れたところでは、リツイベットが緑のワンピースのスカートを風になびかせながら立ってた。笑いながら、ちょっと得意げな顔。彼女は胸を張ってラルシェニの前に歩いてきて、目に挑発的な光を浮かべてみせる。

 ラルシェニは木の剣をいじるのをやめて、ニヤリとしながら顔を上げた。

「なあ、リツイベットさん!」ラルシェニがちょっと幼いけどやたら自信ありげな声で言う。「知ってるか?俺、この庭ぜーんぶ氷で覆えちゃうんだぜ!」

 ——もちろん、それはただの大げさな話。

「はぁ?それがどうしたのよ!」リツイベットは口をとがらせて、でもちょっと得意げな笑み。「わたくしはね、すっごい強い風を呼べるんだから!みーんな吹っ飛んじゃって立てなくなるんだからね!」

 ——こっちも、もちろん大げさすぎる話。

 ラルシェニはリツイベットを見上げて、ふっと笑いながら言った。

「俺ならその氷を空に飛ばして、雪みたいに降らせられるんだぜ!そしたらみんな、びっくりしてポカーンだろ!」

「はっ、アホくさ!」リツイベットは鼻で笑いながら、さらに胸を張って言い返す。「雪なんか、風に飛ばされてめちゃくちゃになるだけでしょ!全然きれいじゃないし!」

 子供たちの無邪気な言い合いが、暖かい日差しの下で続いていくのだった。

 ラルシェニは負けずに顎をキュッと上げて言った。

「少なくとも俺の氷は超かっこいい!カッチカチで、誰にも壊せないくらい頑丈なんだぜ!」

 リツイベットは髪をふわっとかき上げて、挑発的な目でにやりと笑う。

「ふん、雪なんて柔らかくて軽いから、私の風で一瞬で吹き飛ばせちゃうわ!」

「吹き飛ばせるって?」ラルシェニは唇を尖らせながら言い返す。「俺の氷雪はもっとすごいんだ!遠くまで飛ばして、夜空の月や星まで全部凍らせるんだから!」

「星?それで私よりすごいって言いたいの?」

 リツイベットは眉をキュッと上げて、小さな声で勝ち誇ったように言った。

「私はね、あんたのその魔法の雪なんか全部吹き飛ばしちゃうんだから!」

 ラルシェニは跳び上がり、手をブンブン振り回しながら魔法を見せつけるような仕草をした。

「へん!俺は全然怖くないね!氷雪でなんだって作れるもん。例えば……氷雪のお城!中には氷雪の階段とか、氷雪のドアとか、氷雪の窓とかさ!」

 リツイベットは腕を組んで、余裕たっぷりに笑った。

「そんな氷雪のお城なんて、私の風がちょっと吹いただけでバラバラになっちゃうよ!」

「はは、それで?じゃあ君の風、氷の彫刻とか作れるのか?」

 ラルシェニは自信たっぷりにくるっと回りながら言った。

「俺が作る氷の彫刻、動くんだぜ!どうだ、ここで小さいワンちゃん作ってやろうか?」

「動く彫刻?ふん、別にいらないわ!私の風は飛ぶんだからね、鳥みたいにビューンって空を飛び回るの。それにね、風は歌もうたえるんだよ、ウウウーって!」

 リツイベットは得意そうにラルシェニをちらっと見ると、鼻を鳴らす。

「それで?あんた、本当に雪が風よりすごいとでも思ってるの?」

 ラルシェニは一瞬だけポカンとしたけど、すぐにまた自信たっぷりな顔に戻った。

「じゃあさ、勝負しようぜ!どっちの魔法がすごいか、はっきりさせてやる!」

「いいわよ!」

 リツイベットはパンと手を叩き、クルリと跳ねるように回った。スカートがふわっと舞い、彼女は笑顔で言い放った。

「でも気をつけなさいよ!私の風はね、容赦しないから!」

 離れたベンチでは、家族の召使いたちがのんびりと話をしている。その視線は庭のあちこちに向いているが、目の前で繰り広げられようとしている「魔法対決」には全く気づいていない。

 ラルシェニは小さな手をピンと伸ばし、目をぎゅっと閉じた。今朝覚えたばかりの呪文を使って、思い描く氷の魔法を何とか形にしようとしている。

「えいっ!」

 子供らしい高い声で叫ぶその瞬間、キラキラとした小さな氷の花びらが空中に現れた。

 日差しを受けて青白く輝く氷の花は、ふわりふわりと舞いながら地面に落ちる。

 透明で冷たそうなその氷の花びらが芝生に降り積もり、周囲にひんやりとした空気を漂わせている。

「どうだ!」

 ラルシェニは胸を張りながらリツイベットを見た。顔には勝ち誇った笑みが浮かんでいる。

「これが俺の氷雪だ!風よりずっとすごいだろ!」

 リツイベットは驚いたそぶりも見せず、むしろ余裕たっぷりの笑みを浮かべた。まるでこの挑発を待っていたかのようで、彼女はスカートの裾を軽く揺らしながら、ラルシェニへと歩み寄った。

「ふーん?氷雪が風よりすごいって本気で思ってるの?」

 そう言いながら、リツイベットは両手をさっと広げた。指先にふわりと風が集まり、その流れは徐々に強さを増していく。目を閉じた彼女は、風の感触を楽しむように微笑み、空中に浮かぶ氷の花へと狙いを定めた。

 突然、軽やかな風が吹き抜け、氷の花びらは宙を舞い始める。まるでリツイベットに操られているかのように、花びらは彼女の周囲をくるくると踊り出した。風は自由に彼女の手の中を駆け回り、その光景は、迷子の雪が風に乗って戯れているかのようであった。

「ほらね、風は雪よりも自由よ。」

 リツイベットは誇らしげに微笑んだ。

「どんな形にもなれるし、どこへでも行ける。それが風の力よ!」

 ラルシェニは少しムッとした顔でリツイベットを睨んだ。

「ふん、風だけでどうにかなると思うなよ!」

 彼は地面をドンと踏み鳴らし、小さな木の剣を振りかざした。そして低い声で何やら呟くと、最後に力強く叫んだ。

「封じろっ!」

 その瞬間、空気が急に冷たくなった。ラルシェニの手から溢れ出す氷雪が周囲を覆い始める。

 そして、氷雪は空中で舞い上がり、小さな城の形を作り始めた。尖った氷の塔、透き通った窓、そして細かい模様が刻まれた扉……それはまるで夢の中の氷の城だ。

 ——実際はたった10センチ×10センチくらいのいびつな三角形だったけど、彼の中では完璧な城だった!

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