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2-20 不意の刑(6)

 どれくらい時間が経ったのかはわからないが、システムが再びリンクを復旧させた。

「本当に、貴殿はお変わりになられたのですね。」

 耳元にはまだ叫び声が響いていた。

「もともと、こちらには正しい答えが存在するわけではございません。彼らには、こちらで命を落とす以外の選択肢はございません。」

「ヴィーナはどこに? 彼を……」

「現在の貴殿が、ご自身の立場を十分にご理解なさっているかどうか、拙者は疑念を抱いております。」

「……ここは、どこ?」

「こちらは、ステファリの森の奥深くにございます天文台でございます。以前、貴殿もこの近辺にお越しになったことがおありかと存じます。彼は、過去の転生者たちが元の世界と繋がろうと試みた場所を、『獅駝嶺』と申す場所に作り替えたのでございます。」

「……ここ、が……」

「その通りです。先ほどのご質問にお答え申し上げますと、ヴィーナは十遊秤たちを守るために重傷を負われ、ファンレンカゴウは無事に離脱し、ランシブは死亡いたしました。」

「……やはり。」

「ランシブは命をかけて、わずかな力でグラウシュミの死を少しでも安らかにするため尽力いたしました。耳の痛いお話かもしれませんが、それはすべて貴殿のために行われたことです。

 ゆえに、貴殿がその代償をお支払いになるべきでございます。」

「……」

「貴殿は『普通』ですか?」

「普通だ。」

「では、なぜ貴殿はこれほど多くの選択権をお持ちなのでしょうか。

 なぜ貴殿は、彼をお選びになったのでしょうか。

 なぜグラウシュミとデルガカナは亡くなられたのでしょうか。

 なぜリリラアンナが植物状態になられたのでしょうか。

 あるいは、なぜ貴・殿がお亡くなりにならねばならないのでしょうか。」

「それは、私は……」

「ただの普通の人間だ」

「……」


「まだ着かないのか!!!」

 リリラアンナはスマホを握りしめながら叫んだ。

「警備が厳重で、まったく厄介だ……ゴホッ! 監獄を天文台の形にするとは、なんという新奇な発想だ!」

「リリラアンナさん、こちらラ――【電流ノイズ】。三十名の部隊が天文台の西側に配置され、側面から攻撃の準備をしています。」

「了解」

「リリラアンナ様、ブレウッズから援軍が到着しました。安心して作戦をお任せください。」

「余計なことは言わず、すぐに行動で見せろ!」

「ゴホン……リリラアンナ様、『十三行』――【電流ノイズ】です。ご要請により、天文台包囲作戦の支援に参りました」

「戦闘中か? 気をつけろ。」

「リリラアンナ様……」

「リリラアンナ様……」

「リリラアンナ様……」

「リリラアンナ様……」

 ……

「ふん。」

 リリラアンナは通信を切り、「次からは『様』などと呼ばせるのはやめさせなければならない。不気味で耳障りだ。」

 エフィラトス――このクソゴミ。多少は軍隊の指揮権を握っているが、スティヴァリの森はどの国にも属さない地だ。

 見ていろ、他人の手を借りて人を殺すグズめ。


 ……

 白いシャムロック。

 記憶を宿すシステムの実体が、ついに姿を現した。黒髪、赤い瞳、ポニーテール――

 劉柳留。

 前世の姿が、再び目の前に現れた。全く同じ姿をした擬態だが……

 ……笑える。

「痛い?」と、彼女が尋ねた。

 少しだけ頭を横に振った。

 数日間にわたる苦痛により、もはや痛みは感じなくなっていた。

「でも、このままここに居続けるのは良くないんじゃない?」

 彼女は前にしゃがみ込み、「逃げ出したくはない?」

「今は、その力がない。」

 何とも情けない。

「でも、私は持っている。」

 彼女は傷だらけの手にそっと触れた。

「過去のすべてを、今から全部葬送し/受け入れ、そして再構築しよう。」

 彼女は頭を撫で、「この髪、まるで枯れ草みたいだね」と言った。

 それは、昔の私なら口にしていた言葉にそっくりだった。

「すべて?」

「あなたに影響を与えるすべてを。塗り固めた偽りを断ち切り、操り人形の糸を断つように。」

 体はぐったりと地面に崩れ落ち、首を垂れたままだ。

「私こそが魔法だ。あなたの命と魔力は、グラウシュミの死体を経て著しく向上した。ならば、完全な魔法霊体と魂を持つ私なら、あなたがもっと多くの能力を得る手助けができるはずだ」

「でも――」

 目の前の「私」は「私」ではない。

「『でも』?どうして?試験中の他の受験者たちに対して、あなたはどんな気持ちだった?記憶を読み取ってみましょうか?」

 前世の自問。

「ただ、彼らに勝ちたいと思っていただけ。」

 私/僕/私は、いったい、誰。

「どうして?彼らはあなたに何の害も与えていない。」

 同じ顔をした者が本物の本人に向かって訴えている。

「試験会場では、私たちは皆、競争相手だから。」

「成功したの?」

「成功した。」

「なぜその成功にそこまで執着する?」

「生きるためだけ。絶えず勉強して、賞状をもらって、試験に合格すれば大学に注目されて、直接入学できる可能性もある。注目されなくても、また次の試験を受けて、もっと高い学位を取れる。

 そんな環境の中で、私が唯一得意なのは、絶え間なく試験を受けることなんだ。」

「それで?」

「それで、親に罵られることもなくなるし、家を追い出される心配もなくなる。40度の高熱で道端に捨てられることもない……」

 いつものことになっていた頃、一姉に拾われた。

「なるほど、そんな状況の中で、試験に対する執着が極限に達して、他人の絶望を見ても目を逸らすことができる。その中で、あなたの名声がかなり大きな役割を果たしている。」

「……」

「そんな生き方を大切にしているのに、どうして交通事故で命を落としたのか?」

 肉塊。

「それなら、なぜ大型トラックに轢かれて死んだの?」

 死の瞬間がフラッシュバックする。

「誰かに突き飛ばされて、車の下で命を失ったんだ。誰もが生き延びたいと強く願っていた。あの競争の激しい環境で、すべての人がかすかな生き残りの希望を抱き、極端なやり方で一番強い相手を排除することも、理解できる。」

「……」

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