バイト戦士ナオヤ、異世界転生で10クラス同時持ち
「……え? 俺、死んだのか?」
俺、ナオヤは自分が死んだという事実に気づいた瞬間、なんとも言えない気分になった。28歳、フリーター歴10年。10種類のバイトを掛け持ちして、何とか食いつなぐ毎日だったが、まさかこうもあっさりと終わるとは……。人生って、意外とあっけないもんだ。
で、死んだ俺が今、目の前に立っているのは――光り輝く謎の神様。
「ようこそ、ナオヤ。君の頑張りを見ていて、特別な異世界へと送ってあげることにしたよ!」
……は?
「え、異世界?」
「うむ。君のバイトで培った経験とスキル、すべてをそのまま異世界で活かせるようにしてあげる。それに……君には、特別な能力を与えることにした!」
「特別な能力……?」
俺はぼんやりと神の言葉を聞いていたが、その内容を理解するのに少し時間がかかった。どうやら、俺の過去のバイト経験――10種類ものバイトで得たスキルを、すべて同時に使える異世界チート能力を授けてくれるらしい。
「10種類のクラススキルを同時に使える『ユニバーサルクラス』だ。剣士も魔法使いも商人も……全て君のものだ!」
「お、おお……」
すげぇな。何でもできるってことか? でも、ちょっと待ってくれ。何で俺なんだ?
「まあいいや、行くしかないよな!」
そして俺は、そのまま異世界へと放り込まれた。
――――――――――
異世界に着いた俺は、まず冒険者ギルドという施設に向かった。バイト掛け持ちで培った「現場対応力」で、どんな仕事もすぐにこなせる自信はあったが、まずはどんな感じか見てみないと。
「よう、新顔か? 冒険者志望か?」
ギルドで出迎えてくれたのは、見た目40代くらいの筋骨隆々の男。何やら受付で仕事を紹介してくれるらしい。
「おう、そうだ。できれば色々な仕事がしたいんだけど、いいのあるか?」
俺がそう言うと、男はニヤリと笑って言った。
「まさか、君、そんなに何でもできるって自信があるのか?」
「まあ、なんとかなりますよ」
10種類のバイトを掛け持ちしてきた俺にとって、どんな現場でもなんとかする術は知っている。
「なら、まずは簡単な仕事を……いや、待て。魔物討伐だな。こいつは少々手強いが、君ならやれるだろう。」
そう言って渡された依頼書は「オーク討伐」。やべぇ、早速モンスター退治かよ。でも、俺には剣士としてのスキルも魔法使いとしてのスキルもある。これくらい、やってやろうじゃないか。
――――――――――
数時間後、俺は森の中でオークたちと対峙していた。
「ふぅ、いっちょやるか!」
まずは剣士のスキル。手にした剣を振りかざし、オークに斬りかかる。斬撃が鋭く放たれ、オークの一体が一瞬で沈む。
「お、楽勝じゃん!」
さらに後ろから来たオークたちに対しては、魔法使いのスキルを発動。
「ファイアーボール!」
掌から放たれた火の玉が、見事にオークたちを焼き尽くした。――これもバイトで覚えた対応力のおかげだ。色々な現場で培ったスキルを駆使すれば、オーク討伐なんて朝飯前だ。
――――――――――
ギルドに戻った俺は、見事にオークを討伐したことでギルドマスターから褒められ、早速「新人最強の冒険者」という噂が広まった。だが、それだけじゃない。今度は商人のスキルを活かして、ギルド内の商売を手伝うことになった。
「君、実は商売もうまいのか?」
俺が商店の手伝いをしていると、エリーゼという商人が興味深そうに話しかけてきた。実はバイトで商店員もやっていたから、在庫管理や接客には自信があるんだよな。
「まあ、一応ね。バイトで鍛えたもんだから。」
「バイトでここまでのスキルが……すごいわ。」
エリーゼの商店は困窮していたが、俺の知識とスキルで売上がみるみる回復していった。これも、10種類のバイトで鍛えられた俺の強みだ。
――――――――――
そして数週間後、俺は「魔王討伐」というとんでもない依頼を引き受けることになった。普通ならビビる案件だが、俺にはユニバーサルクラスがある。剣士、魔法使い、商人、職人、何でもこなせる俺にとって、魔王討伐もそこまで難しいことじゃない……はず。
「行くぞ、ナオヤ! 魔王を倒せば、世界は救われる!」
魔法使いリリス、騎士団長ガーロック、商人エリーゼ、彼ら仲間たちと共に魔王城へと突撃。魔王軍の襲撃にも、俺の多彩なスキルで次々と敵を撃破していく。
「魔王、待ってろよ! 俺はただのバイトフリーターじゃねぇんだ!」
魔王と対峙し、剣士としての剣技、魔法使いとしての魔法、さらには商人としての取引交渉術(役には立たなかったが)を駆使して、見事に魔王を打ち倒した。
こうして、俺は異世界で無双し続けることになった。10種類のバイトを掛け持ちしていた時の経験は無駄じゃなかったんだ。どんな仕事でもこなす力、それこそが俺の最大の武器だった。
「……でも、やっぱりこれ、バイトじゃねぇか?」
異世界での冒険生活は続く。今日もまた、新しい依頼が舞い込む。
「結局、俺の人生ってバイトだよなぁ……まぁ、楽しいからいいか!」
そして俺は、異世界で最高のバイト人生を歩むことになったのだった。