60 魔王城への道すじ
吹雪が仲間に加わり、昼食を取るため宿屋へ向かった鋼鉄たち。
宿屋のロビーにはトロンとミリィ、そしてなんとゴルビーとアリシアがお互い抱きしめ合っていた。
「いま戻った……一体どういうことなんだこれは」
二人が無言で抱き合っていることに驚く鋼鉄。
「あ……おかえり~鋼鉄の兄ちゃん……実はね~」
~遡る事10分前~ 宿屋ロビー
ロビーにて言い争うゴルビーとアリシアの二人。これからの旅についてのことのようだ。
「だから! これ以上の旅は危険だから付いて行くのはやめましょうって!」
「俺は……俺はあいつらを見捨ててはいけない……付いて行くっ」
「そんな?! もうこれ以上は無理なのよ! 魔王軍四天王の配下になんか見つかったら、もうお終いよ!?」
「それでも……俺は……」
アリシアが必死に説得するも、ゴルビーは頑なに拒否する。
そんな時、トロンとミリィが二人の元へやってきた。
「あの~二人ともどうしたの?」
「あ、トロン! ゴルビーが旅についていくって聞かないの!」
「ゴルビーのおっちゃん……どうしてもオイラたちの旅に同行するの?」
「……俺は……おまえらを放ってはおけない」
「そうなんだ。でも……」
ゴルビーは必死の表情で言う。
「俺はおまえらと一緒に旅をする、そして魔王軍と戦う」
アリシアはまたも説得しようとするが、それより先にミリィが言った。
「なぜ戦うのですか? もう戦う理由はないと思うです」
「……俺がトロンの勇者パーティに入りたかった理由は……家族を魔王軍に殺されたからだ……」
「…………」
ゴルビーが自分と同じ境遇だったことに驚きを隠せないミリィ。自然と両手をぎゅっと握りしめる。
「俺にはちょうど、トロンとミリィくらいの弟と妹がいた。買い出しに馬車で村を離れた間だった……村は魔王軍の襲撃を受け……」
「すでにお前たちは家族のようなもの……だから俺は……もうこれ以上家族を失いたくないんだ……」
「…………」
両腕をぐっと抱きしめ涙ぐむアリシア。すると必死に涙をこらえながらアリシアが感情を露わにする。
「私だって……あなたを失いたくない……! ゴルビー!!」
ゴルビーの胸の中に飛び込むアリシア。驚きながらも抱きしめるゴルビー。
「分かったわ……一緒に行きましょう」
「ありがとう……」
二人は抱き合ったまま、静かに涙を流した。
「オイラも、ゴルビーのおっちゃんとアリシア姉ちゃんが一緒で嬉しいな~♪」
「そうですね! 二人がいないと盾役と回復役がいませんから!」
そんな二人の様子をトロンとミリィは笑顔で見つめていた。
~現在に戻る~
「……なるほどな」
「それであのような状況になっていたのですね」
「あたいもびっくりしたよ!」
「……なんか、すごいロマンチックアルな…」
ゴルビーとアリシアは、トロンに促されて席に座る。
「さっきはすまなかった……取り乱してしまって」
「いえ、大丈夫です」
「私もごめんなさい……」
「仲直りできてよかったですね」
「うん! そうだね!」
トロンが全員分の料理を運んでくる。そしてみんなで食事を始めた。
ゴルビーとアリシアも交えての楽しい食事会となった。
「……そうだ、みんな聞いてくれ、私はこれから、魔王軍の四天王であるドーウィンを倒すことに決めた」
「なに?!」
「兄貴、本当かい?!」
「いきなりすごい目標を決めたネ!」
「……でも、どうして?」
「そういえば紹介がまだだったな、この子は吹雪、私の妹だ。訳あってこれからの旅に同行することになった」
「初めまして! アタイは吹雪! 鋼鉄の妹です!」
元気よく椅子から立ちながら自己紹介する。長いポニーテールが翻る。
「朝の買い出しの途中に戦い、出会ったのだ。この子は元魔王軍だったが、配下にさせられていたところを助けた……」
「吹雪には隷属の魔法刻印がかけられている。それを解くためにはドーウィンと魔王を倒すしかない……」
「吹雪、魔王城への道のりは知っているか?」
「魔王城へはこの東の大陸からは渡れないよ……北、西、南と渡ってようやく到達できるんだ。しかも……」
さきほどまで元気だった吹雪の表情が曇る。
「魔王城は四天王が持っている4つの鍵を同時に回さないと開かないんだ……」
一同「?!」
「厳しい旅になりそうだな……」
「マスターの決断なら、私はどこまでも付いていきます」
ゴルビーとアリシアも驚いた表情を見せる。そしてトロンが嬉しそうに言う。
「オイラも鋼鉄の兄ちゃんについて行くよ! なんたってオイラは聖剣を持つ勇者だからね!」
「わ、私も一緒に行きます! 攻撃魔法はまかしてください!」
「私も付いて行くわよ、回復役がいないと困るものね」
「あたいも兄貴の行くところならどこへでも行くよ」
「もちろんアル! ワタシも鋼鉄について行くネ!」
みんなの意思を聞いた鋼鉄はうなずく。そして食事会を終えた後、旅の準備をすることになった。
数日後、鋼鉄たちはゴルビーとアリシアを連れ、魔王軍四天王ドーウィンのいる近くの遺跡へ向け出発した。
ゴルビーとアリシアが再び仲間に加わり、さらに旅は賑やかになった。そして妹である吹雪も、トロンたちと共に旅へ同行することになった。
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