57 昔話 1000年前の真実
ー現代 宿屋2階 ミリィの部屋ー
「そしてワシらはリーシャが子を産むまでの間は惑星フォールに滞在し、その後はヌヴィ・エンデを加えたパーティーで他星での転生者との熱き闘いの連続……を経て、1000年前の大きな戦、覇神戦争へと至るというわけじゃ……」
懐かしむように言った。
語る内容は、鋼鉄の予想を遥かに超える規模の話だった。
「話には聞いたことがあります。地球で大きな争いがあったと」
ウィディアは頷く。
ウィディアが語る内容は、鋼鉄の予想していた転生者の経緯とは根本的に異なるものであった。
しかし……
ウィディアは、その大きな闘いを生き抜いた転生者であり、そして神である。
ならば、その闘いの結末も知っているはず。
鋼鉄はその答えを求めた。
鋼鉄の問いに対し、ウィディアは答える。
ウィディアが知る、覇神戦争の終わりとその後の顛末を……
それは、1000年の時を隔て、転生者によって再び戦火に晒される地球で、鋼鉄の心に一石を投じるものであった。
話によると、覇神戦争は古代から現代に至るまで続く転生者の歴史の中でもっとも大きな闘いであったという。
その闘いの発端となったのが覇王アヴァロンであると、ウィディアは言った。
元々はアヴァロンが、その圧倒的な力を持ってして他の神々を圧倒したことが始まりだった。
そして、そのアヴァロンは、数多の快進撃によって当時、神の玉座に就いていた神々の頂点である至高神アルマに挑もうとするが、神の玉座の部屋の前で英雄イール・ミーヤと3女神によって阻まれる。
しかし、その闘いの中でアヴァロンは神殺しの力を発動させる。
「まさか、その闘いでイール・ミーヤ様は……」
「そうじゃ、イールミはワシら3女神を守って……死んだ」
鋼鉄は、ウィデアが語る話の内容に驚きを隠せない。
「イールミとアヴァロンはかつて友達じゃった……幼いころはお互い剣神を目指していたのじゃよ……おぬしと同じじゃな、鋼鉄よ」
「じゃが、アヴァロンはその後、気が付くとズタズタに引き裂かれておった……ワシら3女神はイールミを殺された悲しみによって、『アバターヴィジョン』を引き起こしていたのじゃ……その時の記憶はワシら3女神には無い……おそらく、一方的な虐殺だったのじゃろう」
「…………」レティアは下を向きうつむいている。
鋼鉄は、アヴァロンの死に様を聞かされ、ただ愕然とする。
語り口は淡々としたものだが、その内容は無慈悲だった。
覇王アヴァロンはまさしく転生者そのものだったのだと、ウィディアは言った。
「アヴァロンが死んだことによって転生者の軍勢は戦意喪失。至高神アルマの命により神々が転生者を屠り、この争いは幕を閉じた」
「それが1000年前の事の顛末じゃ……その後ワシら3女神は各々の転生の間にて転生者を生む職に就く…それが現在じゃな」
「ほお~1000年前にそんなことがあったアルか……」
「にょわっ?! おぬしらいつの間に!! おったなら何か喋らぬか!」
いつの間にか、鋼鉄たちの会話に混ざっていたメイリャン。下の食堂で朝の食事を終えたトロン達がミリィの部屋に集まっており、レイン、ゴルビー、アリシアと口を開いた。
「ごちそうさまでした、マスター」
「いやあ、壮大な話をしていたもんで、口をはさむ気にならなくてなぁ」
「そうよ、あそこで私たちが口を挟んだら台無しだわ」
「えへへ…オイラの聖剣にそんな誕生秘話があったなんて……」
トロンは聖剣を眺めながらウットリしている。
「すごいお話でした……あ! ウィディア様! リーシャさんの子供はどうなったんでしょうか?」
ミリィの質問にウィディアは一瞬嬉しそうな顔をして答えた。
「リーシャの子は、今も惑星フォールで二代目『神の如き鎚』として元気に働いておるようじゃぞ、名はライノス、千鬼刀匠ライノスじゃ」
「ほっ……良かった……元気でいるんですね……」
ミリィは安心して胸をなでおろした。
「まあ1000年も経ってるからもういい年のジジイじゃがな!」
「あ、あれ? でもオイラの聖剣、炎みたいなのなんて出てないよ? どうしちゃったんだろう……」
聖剣作成時に魔力刃に付与していた炎が消えている事に気付いたトロン。それに対して頬をポリポリと搔きながらウィディアが話し出す。
「にゃはは……まあさすがに1000年経っておるからのう……聖剣に込められた魔力が完全に抜けてしまっておるようじゃ。そのままじゃとただのよく切れる剣になっておる」
「魔王に挑む前にはライノスの元へ行き、聖剣に魔力を込めてもらうのじゃぞ。聖剣が元の輝きを取り戻せば必ずやトロンのチカラになってくれるじゃろうて」
「わかったよ! ありがとう! ウィディアおばあちゃん!」
「おばっ……!! わ、わしはまだ一億歳いっとらん!! おねーさんと呼ぶのじゃっ! よ、い、な~?」
「ひぃっ!! わ、わかったよ……ウィディアお姉さん……」
ウィデアの鬼のような形相に怯えてしまうトロン。
「まったく……おおそうじゃ、鋼鉄よ、おぬしのディフュージョンスーツもライノスの元でメンテナンスしてもらうのじゃぞ。どうやらこの3年でだいぶそのスーツを酷使したようじゃからのう」
「わかりました、ウィディア神。しかし、惑星フォールにいくにはどうやって……?」
「それはじゃな……よっと」
ゴソゴソと自分の懐をあさりだしたウィデア。何かを見つけると勢いよく取り出した。
「とくと見よ!! 転移の神格紋珠、20個セットじゃっ!!」
ビー玉よりも少し大きな珠が袋にジャラジャラと入っている。
鋼鉄たちは『転移の神格紋珠20個セット』を手に入れた!!
「その珠を一つ取り出し、魔力を込めながら空に放り投げ、「マニフェス」という呪文を唱えるのじゃ……そうすればワシの転生の間にすぐ転移できるぞい」
「そこからフォールにつながる転移の扉をだしてやろう。いたずらに使うでないぞ? よいな?」
「了解しました。それでは私たちは一度、魔王城への道を探してみます」
「うむ……ではワシらも一旦転生の間に戻るとするか……行くぞい、レティアよ」
「じゃあね……みんな」
「おっと……忘れておった。これはワシら二人からのおまじないじゃ」
ウィデアとレティアが二人そろっておまじないの言葉を唱えはじめた。
ウィデア&レティア「目を閉じ、右手を天に、意識を星に……あなたたちに、女神の加護があらんことを」
「うむ! ではのう! 皆の衆!!」
部屋の中央に次元の狭間が開き、その中に入って行くウィディアとレティア。二人が消えて行った後、魔方陣がスッと消えた。
そこにはしばしの静寂が流れていた…
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