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49 過去編 能力否定の執行者8 レべチな女神


「動かないの? 発狂するって聞いてたけど、結構静かなのね」



 両手を握り前に出し構えをとるレティア。その構えには少し中国拳法のエッセンスが入っている。



「ヂュウ~」


 じりじりと少しずつ動こうとするがレティアの気迫に怯えているのか襲い掛かってこないオスのマッスルネズミ。いつまでも続く膠着状態に痺れを切らしたのはレティアだった。



「なら……わたしからっ!!」


 ドン!と勢いよく前方に飛び膝蹴りを食らわすが、マッスルネズミは両手をクロスさせてその攻撃を防いでいた。



「ヂュウッ!」


「くっ! なら、これでっ!!」


 レティアは飛び上がりマッスルネズミの頭上から踵落としを繰り出す。


「はあっ!!」


 しかし、その攻撃も両手をクロスさせて防ぐ。そして、そのままレティアの足首を掴むと、勢いよく地面に叩きつけた。


「きゃあっ!」ドゴォンッ!


「ヂュウウウッ!」


 地面に倒れたレティアにマウントポジションをとり拳を振り上げる。


「ぐっ、重い……っ!」


「ヂュウウゥゥッ!」ブォン!


「はあっ!!」ドゴォ!


 顔面を殴ろうとする拳を体を捻ることで回避し、そのまま反対の拳でカウンターをかます。


「ヂュウッ!!」ドンッ!!


 カウンターを食らいながらもすぐさま立ち上がり、再び拳を振るうオスのマッスルネズミ。その攻撃をレティアも同じく拳で応戦する。


「ふっ! せいっ! とうっ!」ドゴッ、バキッ、ドスッ!!

 オスネズミの拳は一発一発に重みがある。だが、その拳がレティアに当たることはない。全てレティアの拳によって相殺されているからだ。両者の実力は拮抗しているように見えたが……


「ヂュウウゥゥッ!!」ブォンッ!


「くっ!」

 マッスルネズミの渾身の一撃にレティアはガードが遅れ、地面を転がる。


「くぅぅ……強いわね……あなた」


「ヂュウゥゥッ!!」


「でも、負けるわけにはいかないっ!」

 再び拳が交わる。その戦いは長く続いたが……


「はぁ……はぁ……」

 レティアの体力が先に尽きようとしていた。マッスルネズミはまだまだ余裕がありそうだ。


「ヂュウッ!」

 レティアにトドメをさそうと拳を振り上げるマッスルネズミ。


「はぁ……はぁ……この一撃にわたしの全てをかける!!」

 レティアはその場で垂直に飛び上がり、マッスルネズミに向かって急転直下で蹴りを放つ。


「アチョーッ!!」


「ヂュウッ!?」ドゴォンッ!!

 レティアの蹴りは見事にマッスルネズミにヒットし、その巨体を吹き飛ばす。そして、そのまま地面に倒れ伏した。


「はぁ……はぁ……はぁ……やった……勝ったの?」

 レティアが恐る恐る近寄るとマッスルネズミはピクピクと痙攣していた。どうやら気絶しているらしい。


「やった……!  勝ったぁ……!!」

 両手を上げて喜びを表現するレティアだったが、少しして冷静になるとマッスルネズミから距離を置き警戒する。その判断は正しかった。次の瞬間、倒れたはずのマッスルネズミが起き上がり、怒り狂ったように突進してきたのだ。


「ヂュウゥゥッ!!」ドゴォ!


「きゃあっ!!」

 その突進は今までとは比べ物にならない威力だった。なんとか防御したレティアだが、勢いを殺しきれず吹き飛ばされてしまう。


「ヂュウゥゥッ!!」ドゴォン!


「ぐはっ!」

 壁に叩きつけられるも、すぐに立ち上がるレティア。しかし、その体は満身創痍だ。体を抑え息を乱しながらつぶやく。


「はぁ……はぁ……まだ動けるの?」


 マッスルネズミの戦意はまだ折れていない。再び拳を構えてレティアに襲いかかってくる。



「わたしのとっておきの隠し技……見せるのはあなたが初めてよっ……!!」


竜紋ドラゴニック・セイグラム!!』

 レティアの額と両手の甲に紫色の竜の紋章が浮かび上がる。

 彼女の周りに湧き上がる力の奔流!蒼と翠のパワーが、全身を包み込む!!


「まだ調整段階の竜紋ドラゴニック・セイグラム……体力的に次の一撃が最後!!」


 レティアは最後の力を振り絞り、マッスルネズミに向かって駆け出す。


「ヂュウゥゥッ!!」ドゴォンッ!!


「はああぁぁぁぁっ!!」ドゴォ! 両者の拳が交差する。そして……


「…………」ドサッ

 マッスルネズミの巨体が地面に倒れ伏す。それは戦いの終わりを意味していた。


「わたしの勝ちね……」

 レティアは倒れたマッスルネズミに近寄る。そして、優しく抱き上げるとその体を慈しむように撫でる。


「強かったわよ……あなた……」


「ヂュゥ……ヂュー」ピクッピクッ……

 その言葉に応えるようにマッスルネズミが微かに動く。しかし、その体はもう動かないだろう。


「ありがとう……」チュッと軽くキスをすると、マッスルネズミを地面に横たえる。


「それじゃあ、さよなら……」


 マッスルネズミに別れを告げ、その場を後にするレティア。その姿は勝者としての貫禄があった。

 こうして、一人の少女と一匹の獣の戦いは終わりを告げたのだった……




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活動報告に全体のストーリーラインを上げてますので、良ければ見ていってね~! 小説家になろう 勝手にランキング
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