46 過去編 能力否定の執行者5 スィードマンモス討伐
ー北の山ー
一夜明け、朝早くから北の山に向かったイール・ミーヤと三女神一行は、高さ10メートルはあろうかと思われる巨大なマンモスと対峙していた。
「バモオオオオオオオオ!」
太く長い鼻をぶんぶんと振り回し自身の強さを誇示するかのようにその場でドシンドシンと足踏みをする。そのあまりの体の大きさを目の前に驚きを隠せない一同。
「うぉ……でっかっいのう!!!」
「すごく……おおきいです。じゅるり」
「こいつが……スィードマンモス!」
「出たわねっ……ここはあたしの魔法でっ……」
「や、やめんかメイティア! おぬしのバ火力じゃとこの山ごと吹き飛んじまうわい!!」
「あ~ら、残念ね、せっかく『スッキリ』できると思ったのにぃ……」
「レティアよ、加減して相手をしてやるのじゃ」
「わかったわ……お姉さま」
その場から一瞬にして消え去ったかとおもうと、マンモスの顔の横に移動し軽快にクルリと右回し蹴りを放つレティア。バコォン! と重々しい音が鳴り響く。マンモスの頭が凹むほどの衝撃、引き続き第二撃をお見舞いしようとするのだが、急に鼻息が荒くなり顔が震え口から湯気を出すマンモス。
「バモッ! バモモモモモ!」
体中の皮膚が徐々に硬質化していく。赤熱により赤色から始まり黒色へと変色していくその様は、まるで体全体にマグマの甲冑を纏ったかのような感覚だった。
「む……この子……いきなり硬くなった」
拳で二撃目を入れると、ガィン! とその攻撃は弾かれてしまう。自身のあまりの攻撃の強さでズザザザザと後ろに飛ばされてしまうレティア。手をプラプラとさせ痛そうにしている。
「スィードマンモスの形態変化だ! 硬質化してる部位は物理が効きにくいぞ!」
「イールミよ! あれを使うのじゃ!」
「わかった! 頼むぞ……『神格紋珠』(シンカクモンジュ)!」
懐から色々な紋章が刻まれた少し大きなビー玉のような大きさの珠を取り出す。珠には各々異なった色が付いており、紋章によってその色は様々だった。
「その朱は、血を現す深紅色……クリムゾンエクスプロード!」
深い血のような朱い色をした珠を取り出して上空に高く掲げる。中に封じられしは爆発の紋章。太陽に照らされてキラキラと輝いて見える。すでにスィードマンモスを倒す方法を思いついていたイールミは、レティアに策を伝えようと少し張った声で話しかける。
「レティア! マンモスの口をしばらく開けさせてもらえるか?!」
「それ……けっこう……タイヘン……」
「まあ……やってみる……けどっ!!」
マンモスの顎をドカン! と上に蹴り上げ無理やり口を開けさせる。歯と歯の間に入り込み自らの体をつっかえ棒のようにし背を伸ばしグン! と力を入れる。
「イールミぃ~! 開けてるから早くしてっ!!」
ギリギリと歯に力を入れ耐えるレティア。その言葉が聞こえ終わる頃には、すでにイールミは紋珠をマンモスの口に投げ込んでいた。
「ムゴッ?! ムグモゴ……」
「入った! 離れていいぞ! レティア!」
紋珠がマンモスの体内に入りレティアが離れた事を確認すると、イールミは右手の親指と中指でパチンと音を鳴らし呪文を唱える。
「マニフェス!」
イールミが呪文を唱えるとマンモスの体が輝き出し、ドゴォン!! とマンモスの体が一瞬、宙に浮くほどの爆発が起きた。体の中から内臓全体を焼かれたマンモスは、ついに我慢できなくなり、その場で断末魔を上げ、絶命した。
「バォ……グモォ……グモッ……バモモモモモモォ!」
巨体がズシーンと横に倒れる。地面が揺れるほどの衝撃で一同の体が一瞬宙に浮く。硬質化していた体が徐々に解けていくと、元の茶色の肌に戻っていく。一個目のクエストクリアに喜ぶイールミだったが、ある問題に気付く。
「よしっ! スィードマンモスの討伐、完了だ! あとはこいつを……」
「どうしたの……? イールミ」
「ど、どうやって持って帰ろうか……あはは……」
「こ~んなデカブツ、わしの空間には入りきらんぞい」
「あたしの軽量化魔法なら少しは重さを軽くすることはできるわよぉ~ん」
レティアに期待の眼差しが向けられると、レティアは自分が運んでもいいがとある条件を出す。
「わたししかいないなら……運んでもいいよ……けど、みんなのお肉、三分の一、もらうね?」
二ヤマリ、と不気味な笑みを浮かべている。よほど追加で肉を食えるのが嬉しかったのだろうか、眼が肉のマークになっており、よだれを少し垂らしているレティア。
ー古代の森 魔女の家 入口ー
ドカーン!ドカーン!と一定の間隔で音が近づいてくる。周りの木をなぎ倒し動物たちは悲鳴を上げて逃げていく。地震かと勘違いしたリーシャはなんだなんだと外に慌てて出てくる。
「なっ、なんだぁ? 地震でも起きたのか? この星で地震なんてめずらし……?!」
「よいしょっ! ……けっこう……重かった」
ズシーン! とマンモスを家の前に置く。どうやら音の正体はスィードマンモスを運んできたレティアの足音だったようだ。
「お、おまえら……! スィードマンモスを丸ごと一頭持って帰ってきやがったのか!!」
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