45 過去編 能力否定の執行者4 オドロキチキンの照り焼き ハリサケ木の実のスープ レーズンバゲット
「おいおまえら! メシができたぞ~って……あー! てめぇ! その空きビン……! まさか……!?」
「もぐもぐ……おいしいね…これ」ボキッ! ゴリッ! と骨が砕かれるような音がレティアの口から聞こえる。ほんわかしたメシの顔をしているのだが、驚いているリーシャなど歯牙にもかけぬ様子だった。
「俺が楽しみに取っておいたマッスルネズミの蜂蜜漬けぇ~!!!」
「高価な蜂蜜で漬けた10年物だっだのにぃ~ばああああ!!」
空き瓶を抱きしめ泣き崩れるリーシャ。涙と鼻水を垂らし顔がぐちゃぐちゃになる。それを見たメイティアはゾクゾクと己を身震いさせながら喋る。
「泣き崩れた顔もイケメンねぇ~はあぁ~眼福ぅ」
「こ~れ! レティア! はよう謝らんか! おぬしはま~だニンゲンの頃の癖が抜けぬようじゃな~」
「むぐ……! ごめん……なひゃい……れろ」
急いでゴクリとネズミを飲み込みちゅぱちゅぱと蜂蜜が付いた指を舐めながら謝る。反省してるのかしていないのかよくわからない顔だ。
「……いかだ」
「……え?」
「追加だ……」
「クエスト追加だコノヤロー! ついでにマッスルネズミも捕獲してこい! ううう~恨むからなてめぇら~!」
ブン! と空き瓶をレティアに投げると部屋の隅に座り込みしょんぼりとしてのの字を書いているリーシャ。イールミが慰めようとするがウィディアがやめとけと言わんばかりに肩を掴み首を横に振っている。
「じゃ、じゃあ僕らはお先に料理をいただいておきますね~」
キッと振り返りギロリとこちらを睨むリーシャ。涙がにじんだその顔は、まるで鬼のような形相をしていた。
「は、早くいくぞおまえらっ」
いそいそと居間をあとにするイールミたち。リビングに出ると、鼻をくすぐるとてもいい匂いが充満していた。
「んほっ♪ んん~! い~い匂いじゃの~」
「あら~おいしそうねぇ」
「この甘い匂い……テリヤキ……じゅる」
本日の夕食 『オドロキチキンの照り焼き ハリサケ木の実のスープ レーズンバゲット』
「それでは皆で~? いただきま~す!!」
「はむっ! むふ~!! これはなんとも……こんがりと焼き目が付いたチキンに甘辛ソースがよくからんで……上品な味じゃあ~」
「スープもやさしい味で沁みるわ~」
「ガツガツガツっ! シュバババ! ズゾゾゾ! ……おいしい」
「食ってるか? あ~あもう……口に付いてるぞ……まあそう焦って食うな……おかわりもあるから」
なんとかメンタルを立て直しリビングに出て来たリーシャ。その手には大きなワインボトルを持ち、みんなに喋りかける姿があった。
「ほら、ガッツリブドウの果実酒だ。うめぇぞ?」
トプトプトプとグラスに果実酒を注ぐ。少し濁った暗い紫色、芳醇で引き立つ香りが脳を刺激する。
「ゴクッ……?! うん。これはいい酒だな。味と渋みのバランスも僕好みだ」
「っぷはぁ~!! ああ……すばらしく豊かなブドウのすっきりとした味わい…どこまでも広がる草原の風景が浮かんできそうじゃわい」
「お姉サマ、食レポうまいわね」
「ゴクッゴクッ! おいしい……ペロリ」
「ふっふっふ……酒で驚いているようじゃ、こいつをチキンにかけたらどうなるかな?」
一同「そっそれは……! 『ティルティルソース』!!」
一同「こ、これ以上まだうまくなるというの~!?」
「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価をよろしくお願いします!
していただけたら作者のモチベーションが上がります!




