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40 幼き勇者 トロン編15 全てが終わった後で


「うう……」



「ミリィちゃん!」



「ミリィ!」



「腕が……これはいかん! アリシア、回復魔法を!」



「わかったわ!」



「初級回復魔法! ……だめ! なんで?! 回復できない!」



「レイン、ミリィの両腕の状況をスキャンできるか?」



「クラスSSSの大魔法を術者のレベルを超え無理やり行使したことにより、内部にダメージが浸透、細胞が壊死し始めています」



「ふむ……ワシに任せよ」



「アリシアの回復魔法で無理だったんだ……いくら神さまでもできっこない」



呪文解放アンリーシュド・スペル



『生命のオーロラ!』



 ぼろぼろだったミリィの両腕がみるみるうちに元に戻っていく!



「き、奇跡だ……! 俺は夢でも見ているのか……?!」



「ほ~ほっほ♪ ワシは神じゃからのう、これくらいできて当然じゃっ!!」



「お姉さまが使える魔法は、時空間魔法だけじゃない……治癒と強化の魔法も超一流……」



「それにの……妹が付けさせてしまった傷じゃ……姉であるワシが治すべきじゃろうて」



「これでよし……と。あとは意識だけじゃが……まあそのうち回復するじゃろう」



「さて……メイティアよ、まだこのミリィの中におるのじゃろう?」



「さ~すがお姉さま、魔力探知はお手の物ね」



 パチリと魔力を帯びた片目だけが開き、ミリィの口が動く。



「まずは礼を言おう……ぬしの力が無ければこのミリィはやられておったかもしれぬ……だがちとやりすぎじゃ。下手をすれば両腕が一生使えぬ体になるところじゃった」



「あたしが手加減できないのはお姉さまも知っているでしょう?」



「それにあたしは信じて大魔法を撃ったのよ? きっとウィディアお姉さまが治してくれる! って」



「ああそうそう聞いてよお姉さま! この子のポテンシャルったらすごいのよ! クラスSS+の賢者になれる可能性アリ。ですって!」



「は~おぬしというやつは……」



 呆れた様子で右手で顔を覆う。



「異世界人だと今までじゃA+が精々だったのに、すごい逸材を見つけたわ~!」



「あたしの弟子に取りたいくらい……」



「やっぱり……姉妹なのね」



 じんわりとした目線でウィディアを見つめるレティア。



「レ、レティア?! な、なんじゃその目は……やっ、やめんかっうっとおしいっ」

 ていていと扇で払う様子を見せる。



「レティア姉さまも久しぶりね……元気だった?」



「なんとか……元気。あなたもいつも通りで安心……した」



「ウィディア姉さまと一緒に外界に出てきたから一瞬びっくりしたけど、そう……封印を解いていただけたのね……良かった」



「うん……あ……そういえば……メイティア、どうしてこの子の中に?」



「あたしは強い恋の波動を感じてこの子の元へ来たわ。そしたら鋼鉄とレインちゃんが居たからしばらく中で様子を見ていたのよ~それでちっこい勇者君が竜紋ドラゴニック・セイグラムに覚醒してドレーディアとお姉さまたちが出てきたってワケ」




「……なるほど。そして人質に取られて表に出てきたと」



「ほんっとあいつは運がないわぁ~わたしを人質に取るなんて千年早……あら、もうすぐこの子起きそうだわ」



 ミリィの閉じている方の瞼がピクピクと動く。



「鋼鉄、そこにいるかしら?」



「お呼びでしょうか、メイティア様」



「もうすぐ()()()()()()がそちらにお邪魔するとおもうから、よろしくね♪ あ、お土産持たせてあるから楽しんでね~それじゃあね」



 開いていたミリィの片目がゆっくりと閉じていく。



「まったく……あのお転婆妹は……」



「うう……んぅ……」



「ここは……? あれ? わたし……なんでみんなに囲まれて?」



 大魔法を使った影響だろうか、ミリィの記憶は混濁しているようだ。



「良かった……! ミリィちゃん……本当にっ……!」



 心配して涙ぐみながらミリィに抱き着くトロン。



「トロン君……わたし、怖かった……怖かっだよう……!」



「一時はどうなることかと思っちまったぜ」



「おかえりなさい、ミリィ」



「痛たっ! 腕が……!」



「あまり動かすでない、傷は治したがダメージはまだ残っておる……」



「あなたは……?」



「ワシか? ワシは宇宙三女神の長女、時空間魔法が得意技☆ ウィディアという神じゃよ~♪ キラリン★」



 尻尾をフリフリさせながらクルリと一回転して決めポーズを取る。



「神……サマ……?」



「この方がミリィの腕を治してくれたのよ」



「のじゃロリ……」



 レティアがボソッと何かつぶやいた。



「にゃふっ……? 何か聞こえたかのう?」



 さっと鋼鉄の後ろに隠れるレティア。



「次女……レティア……よろしくね」



 呟きながら右手で小さくピースサインをする。



「あ、ありがとうございます! なんとお礼を言ったらいいか……この御恩、一生忘れません!」



「い~のじゃよ礼なんぞ。可愛い我が子らの為ならお安い御用じゃ」



「さて……話をするにもここではちと落ち着かん……一度外に出るかの」



 ゴゴゴゴゴと洞窟全体が振動する。立っていられないほどの振動に抗いながらもヨロヨロとしてしまう鋼鉄たち。



「な、なんじゃ?」



「レイン!」



「このままではこの洞窟はくずれてしまうでしょう。脱出する事を推奨します」



「そういうことなら! ほっ、と!」



 両手をパッと広げると目の前に巨大な歪んだ空間が現れる。



「洞窟の外に空間を繋げておいたぞい! みなこれで脱出じゃっ!」



「トロン! ミリィを頼む! 行くぞみんな!」



「ミリィちゃん……つかまって!」



 ミリィをおんぶして脱出するトロン。アリシア、ゴルビー、メイリャンと続く



「うっ……神サマっ」



「ええいっどうとでもなれっ」



「まっくらネー!」



「鋼鉄たちもはようせい!」



 鋼鉄、レイン、レティアと空間に入り、最後にウィディア自身も吸い込まれていく。洞窟の外に出ると太陽の眩い日差しが鋼鉄たちをカッと照り付ける。長時間にも及ぶ激しい闘いは、いつのまにか日付が変わり、朝になっていた。



「にゃおっ!! まぶしっ!」



「朝ダヨ!! は~! いっぱい動いたらハラが減ったアル! 朝食にするネ!!」



「オイラ、ソーセージがいい!」



「そういうことならポトフがいいネ! ソーセージは一人三本までヨ!」



「ベーコンエッグも……付けて」



「あとはパンがあれば完璧ね」



「ほほ……元気じゃのうおぬしら」



 各々の好みの話で盛り上がりながら帰路に着く一行だったが、鋼鉄はメイティア神の言葉が気にかかっていた。



「……弟子に土産……か」



「マスター?」




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活動報告に全体のストーリーラインを上げてますので、良ければ見ていってね~! 小説家になろう 勝手にランキング
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