39 幼き勇者 トロン編14 神龍紋と三女神
レティアの額と両手の甲に紫色の竜の紋章が浮かび上がる!
『竜紋!!』
彼女の周りに湧き上がる力の奔流! 蒼と翠のパワーが、全身を包み込む!!
「やっと……身体……あったまってきたっ」
ぐっぐっと腕を伸ばし屈伸をして、体操を少ししたかと思うとその場から消え去りドレーディアと相対するレティア。音を置き去りにし、衝撃だけがその空間に残る。バコォン! ドゴォン! と音だけが遅れて聞こえる。打拳同士がぶつかり合いとても大きな音となっていた。
「奇遇ですねぇ! 私もデスよ!」
魔術解放で強化した肉体は確かにレティア神に届きうるものであった。力は互角、だが時間経過により徐々にそのスピードに差が出てきてしまい、押されていくドレーディア。追い詰められた彼は姑息な手を思いつく。
「やはりスピードではかないませんか!! ならばこれは如何かな?!」
「ぐっ!! これは……関節技!」
チョークスリーパーの態勢に入られたレティアだったが、すんでのところで腕を首の前に回しており、完全には入っていなかった。
「人間の技……ちゃんと知ってるのね……なら私も、おもしろい技見せて上げる……ねっ!!」
密着した状態でドレーディスの体がドォン! と上に大きく浮き上がる!!腹部がボコんと凹むほどの衝撃!
「がはぁっ!!」
『龍気寸勁、極!!』
大きく体をくねらせ勁を練り、背中と肘を同時に相手にぶつける。最小の力で最大のダメージを与える中国拳法の極意、寸勁を応用した技だ。
「あなたを倒してから500年間……私は狭間の神として地球を見守ってきた……でも、今日は元の私で……力と破壊の神として、あなたを倒す!」
「私が500年の修行で手に入れた力……あなたに見せて上げる……!!」
空気が重くなっていく。レティア神が包み込まれている蒼と翠のオーラが、金色へと変貌し、額と両手の甲の紋章、眼の色までもが金色に変わっていく!
『神龍紋!!!』
ドラゴデウス・セイグラムにより光と同等の速さを手に入れたレティア神。その拳力とスピードはドレーディスとは比べ物にならないくらい飛躍的に上がっていた。その圧倒的な強さの前にはなすすべなく、全てが粉砕されていく。気が付けばドレーディスの両腕は宙を舞っていた。
「こんなものなの? 500年前のあなたはもっと、強かった」
「こんな結末認めないぃ! わたしはぁぐぼぉあ…あの御方のお役に立つまではぁ、はぁ~こんなところで終わる訳にはああああああ!!」
欠損した体をぐにゃぐにゃと動かしながら嘆くドレーディア。
「鋼鉄よ、疲労困憊の身で苦しいとは思うが……」
「……了承しました」
鋼鉄が剣を抜きながら近づこうとすると、ものすごい速さでミリィに近づくドレーディス。
「きゃあっ!」
ミリィを抱え人質に取り、両足で頭を持ち脅迫するドレーディス。
「ふは……ふひひっ! これ以上近づいていけません! この子の首がへし折れますよぉ!」
「ミリィちゃん! こいつ……!」竜紋を発動しようとするトロン。
「止めるんだ! トロン!」
「そ~です! 変な動きを見せてはいけません…この子の命が大切なのでしょう? ふふふ……」
「いや! やめて! 離して!!」
「お黙りなさいぃ!! 今いいところなのです! それ以上喋るとあなたを……」
「チッ……ハナセっつてんだろ、このイカレクズヤローがっ」
ドスの利いた低い声。気弱だったはずの彼女の雰囲気がガラリと変わり、暴力的な顔つきになる。まるで別人になったように。その瞬間、ドレーディアは異様な気を感じ取る。
「なっ! なんだこの魔力は?! これはっ!!」
『エニヒレーション・ノヴァ!』
無詠唱。突如としてミリィの掌から尋常ではない量の魔力が後ろのドレーディアに放たれる。突然の死角からの攻撃にバタバタと苦しがり、ふと、ある一人の女神を思い出す。
「ぐあああああ! 馬鹿なああありえない! この膨大な魔力、そしてその口調! 恋と因果の……女神ぃ……!!」
「あ~ら、この体、ノヴァを撃てるのね。そのかわり腕が一本ダメになってしまったけれど……まあいいわ~ん」
「この子、すごい大魔法使いになるわよぉ~」
ミリィの左腕が焼きただれ、ダランと力なく下がる。
ウィディアとレティアが揃えて声を上げる「メイティア!」
「はあ~いお姉さまたち、久しぶりぃ♪」
ひらひらと手を振りニコリと笑顔を見せる。確かに姿はミリィなのだが、声はどうやらメイティアという人物のようだ。
※恋と因果の神メイティア 宇宙三女神の末妹であり、魔法、大魔法、極大魔法といった魔法のスペシャリスト。魔力量では姉妹の中では一番高い。常に究極のイケメンを探し求めており、そこら中の世界をイケメン探しの旅と称して飛び回っている。精神感応、精神操作の魔法も得意。実は生粋のメカ狂いでもある。
「ど、どういうことじゃメイティア! なぜおぬしが……説明せい!!」
「精神感応の呪文で外界からこの子の精神に入り込んでたのよ☆今は私がこの子を操作しているわ」
「この子の中から一部始終見ていたけれど、一番人質に取っちゃイケない人を取ったわねぇ。あなた、運が無いわ」
「か……あが……わだし……を」
メイティア「あ~ら、何か言いたげね? 罰せられるから神は神を倒せないでしょ? って? いいこと教えたゲル★ 体が人間なら精神に神が居てもいいのよ? ふふ…知らなかったでしょ…じゃあね、クズヤロー」
眼を閉じ、右手を天に掲げ集中する。意識を自身の力の源である太陽に向ける。
「恋と因果の神メイティアが告げる! 彼の者を照らす裁きの光……その力は、純粋なる暴力、煌々と輝く真夏の太陽!『ジャッジメント・サマー』!!」
巨大な火柱が獄炎を巻き上げながら立ち上がる。ミリィの小さな右腕で放つその大魔法は、ドレーディアが展開した魔法障壁を瞬く間に破壊し、その体を焼き尽くす。辺りには人体が焼ける匂いが漂っていた。強大な魔力によりドレーディアは完全に焼失してしまい、ミリィの右腕が犠牲となって、そのままミリィは気を失い倒れるのだった。
「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価をよろしくお願いします!
していただけたら作者のモチベーションが上がります!




