38 幼き勇者 トロン編13 神々の闘い
「お主じゃな?! ヴェロニカをそそのかしオーク兄弟にアーティファクトを与え、兄弟の内部に融合魔術を埋め込んだのは!」
ウィディアの右手から魔法の光弾がいくつも射出され、ドレーディアに降り注ぐ。
全速力でシャカシャカと大きく腕を振り走り、体をくねらせながら躱すドレーディア。異様に柔らかい体がその気持ち悪さを助長していた。
「いかにも! ヴェロニカさんは良くやってくれたようですが、この兄弟はなんとも言えない結末でしたねぇ! 哀れとはこのことを言うのです!」
「悪趣味……」兄弟の躯を見て口を抑えるレティア。
「戦闘中に余所見とは、いけませんねぇ! ふんっ!!」
ドレーディアがレティアに渾身の一振りを仕掛けると、ブゥンと言う音と共に攻撃が歪んだ空間へと吸い込まれていってしまう。ウィディアの空間魔法、次元歪曲によって無力化されていた。
「なんと?! 一体どのような魔法を使ったのです!」
「ほほ~♪ 空間魔法のちょっとした応用じゃよ」
「レティアよ、コンビネーションドライブじゃ! ワシがガード、おぬしがアタック。よいな?」
「わかったわ……お姉さま」
「させませんよぉ!」
「ふっ! (ガシィ)!!」
ドレーディアの拳を足で受けるレティア「あなた……そんなおしゃべりだったっけ? 500年前のことだから、よく覚えてないけ、どっ……!!」
レティアの蹴りを受け吹き飛んだ体を起こしながら口を開くドレーディア。
「ぶほぉ! ご、500年経って口調が変わったのですよ……!」
「ふぅん……まあ、いいけど」構えを取り直すレティア
「あれが……神々の闘い……!!」右の拳をぎゅうっと握りしめる鋼鉄
「すごいや……へへ、オイラもあんな風になれるかな?」
「ああ。きっとなれるさ、トロンなら。だからよく目に焼き付けておくんだ、この戦いを」
「やはりこのままではいけませんねぇ……わたしも少し本気を出すとしましょうか!」
「空気が変わった……何か来る!!」
「目標の魔力上昇、危険域に到達」
「魔術解放!」
「あれは……! 呪文解放か!!」
「あなたがもっとも得意とする肉弾戦で勝負を付けて差し上げましょう……500年前のあの苦しみ……存分に思い出せぇ! レティアあああああ」
ドレーディアが発動した身体強化の魔法が、自身の筋肉をモリモリと飛躍的に増幅させていく。かろうじて人の形は保っているが、そこには美しさなどひとかけらもない、とてつもなく歪な形をしていた
「姉さま、この戦い、私にまかせて」
「因縁……じゃからのう。まあよいじゃろう」
「レティアよ、わかっておるとは思うが、今のおぬしは……」
レティアの周りの空気が変わる。額と両手の甲には紫色の竜の紋章が浮かび上がる。蒼と翠の色をした静かな怒りのパワーが、彼女の全身を包み込む。
「力加減……でしょ? わかってるわ。形が残るくらいに……丁寧にぶっ壊す!」
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