幼き勇者 トロン編12 女神達の思惑
「術者の呼吸停止が確認されました。魔術発動、融合を開始シマス」
「これは……融合魔術……! 体内に仕込んでいたのか……!!」
ボゴボゴと音を立てながら融合していくゴッジとロクッジ。余りにも見ていられないようなおぞましい光景が辺りに広がっていき、次第にその姿を形成していく…もはや、それは人型と言えるものではなく、合成魔獣となり下がっていた。ミリィとアリシアはその姿を見て悲鳴を上げる。
「ひっ!」
「ば、化け物……!」
「ヒューッ ヒューッ ゴヒュ ゴビュ ごんな……がずじゃ……」
よろよろとしながら何か訴えているようだが、言葉もまともに発せていないようだ。こちらが敵であることはわかっているのか、必死に体を動かしトロンに攻撃を浴びせようとする。
だが、トロンはトン……と少しだけ上に飛ぶと、空中で右手を握りながら引き、高速で突きを繰り出す。
「龍血真 天衝」
渾身の一撃を食らい、合成魔獣はワナワナと苦しみだす。体中から血が噴き出し、ついにはバラバラに砕け散って絶命した。
その一撃で力を全て使い果たしたトロンは、その場で気を失い倒れてしまう。
ー狭間の世界ー
次元カメラで一部始終を見ていたウィディア神が驚く「なんじゃあの技は?!」
「おぬし……あんな技を使えたのか!?」と言うと咄嗟にレティア神
「知らない……私が覚醒させたのは竜紋……だけ」
「竜紋は純粋なる身体強化の力、額と手の甲の紋章により自身の能力を飛躍的にアップさせる……」
「でも、あの拳筋……まさか!」
二人合わせて言葉が出る「直撃……魔法?!」
「鋼鉄の技を見ただけで再現したというのか?!!」
トロンの可能性に軽く引く二人。顔が少しひきつっている。
「だ~から言ったじゃろう! イールミに似ていると!」
「ワシが転生させたのじゃ~ふふ~ん♪」
「でも……育てたのは、鋼鉄ね……」
「しかしまさかの逸材に巡り合えたの~!! ではこの子もわしの弟子に」
「待って、弟子は一神につき、一人。でしょ?」
「そ、そうじゃった……ではおぬしが弟子に取るかの?」
「私は狭間の世界を見守る身……育てることはできないわ」
「ふ~む。ではメイティアか……しかしあやつは……」
「あの子は昔、イケメンしか弟子は取らない! とか言ってたはず」
「困ったの~今頃どこで何をしてるのやら……まったくあのお転婆妹は……」
「う~む! しかたないのう! ほれ!」
ウィデア神がパチン!と指を鳴らすと、レティア神の手枷と足枷がバキッと音が鳴りボロボロと崩れ去る。
「姉さま……? なぜ……?」
「刑期はとっくに過ぎておる。もういいじゃろう。それに、おぬしの力ならば自分でその枷を外すこともできたはずじゃ」
「それは……」
悲しそうに斜め下を向き、レティアは口を開く。
「きっと私は、心のどこかで、あの枷を戒めにしていたのかも知れない……」
「もうよいのじゃ、あの時、ぬしが倒さなければワシがやっておった……罰を受けていたのはワシの方だったかも知れぬ……」
「さて、それでは二人で、わしらの可愛い我が子たちにちょっくら会いに行くとするかの」
ヴォン! と次空が歪み、そこに入って行くウィデアとレティア。二人のその足取りは、どこか嬉しそうだった。
ーゴブリンの洞窟、最奥部ー
「トロン! 無事か?!」
「トロン君! 大丈夫?」
「へへ……オイラ、強くなったでしょ……? いででっ」
「無理に動くな……生身で純正の竜紋を使ったんだ、死んでいてもおかしくはない」
「純正……?」
「そうだ。わたしが使う竜紋は赤色、トロンが使ったのは蒼と翠。まぎれもない純正の証……」
「そして、それを使えるということは、君は半神だということ」
「?!」
「神の血を受け継いでいるということだ」
「お~やおや? それは聞き捨てなりませんねぇ!」
「誰だ?!」
「私は神……欺瞞神ドレーディア!!」
鳥のような仮面を付け、黒いマントに身を包んだ大柄の男が、両手をぶわっと横に広げポーズを取る。
「神だと……?! それにその名前……500年前にレティア神に倒された神と同じ……」
「おおっとその名を口にしてはなりません! ハラワタが煮えくり返ってぇぇ……ふんっ!」
「ぐっ……!」不思議な力で一気に壁まで吹き飛ばされる鋼鉄。
「神は不死! 神は不滅! で、あるからして~」
ドレーディアが次の攻撃に入ろうとした次の瞬間、朱くどす黒い殺気がドレーディスを包み込む。
「おぬし、消え去る準備はできておるかえ?」
ぐにゃりとした次元の歪みから声が聞こえた。とてつもなく冷たい声が。
「ひえっ……」経験したことのない殺気に怯えるドレーディア。
「外なんて、500年近く見てないから……新鮮」
髪をかき上げながら歪みから出てくるレティア神。
「可愛い我が子らに会いに来てみれば……随分好き放題しておるようじゃな? ドレーディアよ」
「いやそれとも、ドレーディアを騙る別の神……かの?」
「あいつは、私が500年前に存在ごと消し去ったはず……」
「考えられるとすれば……」
「そう!! 私は蘇ったのです! かの至高神の手によって!!!」
「本当かのう? あの御方が無能を再生させるとは思えんが……まあよい、その仮面を剥いでみればわかることよ」
「そうはいきません! あの時よりも私はパゥワーアップしているのです!」
ドレーディアの筋肉がゴリゴリと盛り上がっていく。
「ほ~ほっほ♪ 我が妹、レティアよ! 久方ぶりの闘争じゃ……!! 準備はよいかの?」
ドヤ顔をし扇を口に当てながらほほ笑むウィデア。
「当然よ、お姉さま」
左手を前、右手を腰に据えた構えを取りながら言葉を返すレティア。
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