幼き勇者 トロン編11 勇者、覚醒!
「ぶふぅ……おまえは後でやってやる……まってろ」
バキィ! と容赦なく剣の柄で殴られるトロン 大きく横に吹き飛ぶ
薄れていく意識の中、トロンは何度も叫び続ける鋼鉄と仲間たちを見つめながら、深く深く落ちていく……
ー狭間の世界ー
トロン「あれ? ここは? そうだ……オイラ、洞窟でオーク兄弟と戦ってて……それで……」
意識を失い倒れたトロンは、魂のみが狭間の世界に赴き、ある女神と邂逅を果たす
「トロン……思い出して……自身に眠る力を」
「き、君は?」
「私はレティア。宇宙三女神の一人、狭間の世界の神」
「あなたは、私の血を受け継いでいる。だから使えるはず……ドラゴニック・セイグラムを」
「ドラゴニック・セイグラム……」
「どうしたの?」
「オイラ、みんなを守りたくて……でも、力が無くて……」
「その気持ちがあれば、大丈夫。私を信じて」
「左手を出して? そう……私の手を握って。強く念じるの……みんなを守りたい、助けたいと」
「うん……」
「彼の者に眠りし竜の力……祖たる我が解き放つ……狭間の神、レティアの名のもとに…!!」
レティアがトロンの胸の中心に右手を当て、呪文を唱え始める
トロンの額と両手の甲に、竜の紋章が浮かび上がる!
レティア「目をつむり、右手を天に、意識を星に。あなたに、女神の加護があらんことを……!」
トロンの姿がスゥっと消えていく……
「終わったかの?」
「姉さま……居たの」
「ほ~ほっほ~「居たの」とはまた冷たいのう……この姉であるウィディアが妹の雄姿を見守っていたというのに」
「盗み見てた……の間違い」
「ほほほ……♪で、力は無事起きたのかのう?」
「大丈夫、ちゃんと覚醒さしたわ。あの力をどう使うかは、あの子次第だけど」
「優しいのう……おぬしは」
「姉さまだって」
「ほよ?」
「聖剣ブライトホープ……イールミの剣でしょ、あれ」
「およ……ばれたか」
「見ればわかる……特殊金属レーンベッツ鋼で生成された、クラスSSS+(トリプルエスプラス)のアーティファクト。大戦の英雄イール=ミーヤの剣」
「うむ……」
「わかった……あの子地球人でしょ……? だから、特別な転生特典、あげた」
「いや、名も知らぬ星の子じゃ」
「だったらなぜ?」
「イールミに言われておったのじゃ、転生ポイントを武器に全部つぎ込むようなバカがいたら、俺の剣を渡してやってくれ、とな……」
「でも姉さま、あの剣は……」
「わかっておる。だから鋼鉄を側に付けた、それに……」
「?」
「どことなく似ておるのじゃ。トロンは……ワシらと共に旅をしておった、あのころのイールミに……」
ーゴブリンの洞窟 最奥部ー
空気が変わる。倒れていたトロンの体がふわりと宙に浮きあがり、額と両手の甲に紫色をした竜の紋章が浮かびあがる。ほとばしる力の奔流が、突如として周りに湧き上がる!蒼と翠のパワーが、全身を包み込む!!
「馬鹿な! この力は……!!」
「あああああああ!!!」
カッと目を見開き叫びだすトロン。辺りには雷鳴がひしめき、彼の全身から溢れ出る蒼と翠のオーラが地面を揺れ動かし、岩を隆起させる。空間にビリビリと亀裂が走る。
「きゃあ!」
「なんなのよこれは!」
「あれはほんとうにトロンなのか?! いったいどうなっているんだ……!」
「間違いない……このオーラは、竜紋……! しかも私のとは違う、純正の蒼と翠……!」
刹那、地面に亀裂が入りバゴッ!と円を描いて凹むかと思うと、いつのまにかトロンは消えていた。否、速すぎて見えなかったのだ。この場の誰もその姿を捉えることができなかった。
次の瞬間、ズドン!と鈍く重い音と共に空間が揺れたかと思うと、ロクッジの腹にトロンの右腕が深々と肘までめり込んでおり、なおかつ、ロクッジの体は後ろに吹き飛ばない。ダメージと衝撃は全て中に浸透していた。
魔法耐性を有するアーティファクトの鎧もバキバキに砕き割られている。悲鳴を上げる暇もなく、ロクッジは白目を剥き意識を失っている。だが、意識を失ってもなおロクッジはゆっくりと前に倒れながら兄のゴッジに言葉をかける。
「あにじゃ……逃げ、ろ……」
「ロクッジぃ!! そ、そんなばかな……! 話が違うぞ魔術師! おまえの言う通りにしたの、にぃ↓」
焦りを見せたかと思うといきなり空へと話しかけるゴッジの首が、あらぬ方向へと曲がる。
トロンの蹴りがゴッジの顎にクリーンヒットしていた。そのままの勢いで体がクルクルと回りだすと、力なくストン、と両膝を地面に付いたゴッジの体の内部から突如音声が辺りに鳴り響く。
「術者の呼吸停止が確認されました。魔術発動、融合を開始シマス」
「これは……融合魔術……! 体内に仕込んでいたのか……!!」
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