表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

93/190

93話 いざ突入!

 俺、アルティナ、ノドカ。

 そして、プレシアを含めた俺達四人は、エストランテから半日ほどのところにある洞窟の前にやってきた。


「ここが、悪党の隠れ家なのね?」

「許せないのでありますよ。拙者の刀のサビにしてくれるのです」

「それよりも、入り口から奥の方に向かって、爆薬を連射すればよくない? 生き埋めにしてやりましょう」

「その前に、魔物を放っておくのもアリかもしれませぬな」

「アリなわけないだろう」

「「あいたっ」」


 物騒な考えを口にする弟子二人の頭を小突いておいた。


「レミアの他に捕まっている子供がいるかもしれない。それを確認しないで、いきなり生き埋めになんてできるわけないだろう」

「じょ、冗談よ……」

「ちょっと怒りが先行しただけでござるよ……」


 この二人、たぶん、本気だったな。


 やれやれ、とため息をこぼす。


「さて……策は、ここに来るまでに話した通りじゃ。問題ないな?」

「しかし……」

「問題ないな?」

「……わかった、プレシアの言う通りにしよう」


 彼女が提案した策は、こうだ。


 まず、プレシアが一人で突入する。

 そして派手に暴れる。


 陽動だ。


 わかりやすいものだけど……

 しかし、ゴゴールは知略に優れているわけではないらしく、見抜くことはできないとのこと。

 また、憎い相手が一人でやってきたとなれば、必ず姿を見せるだろうとのこと。


 プレシアがゴゴールの相手をする。

 元魔法騎士の不始末なのだから、団長である自分が決着をつけたい、つけさせてほしい……と。


 俺達は、遅れて洞窟に潜入。

 内部を探索して、他に囚われている人がいないか調査する。


 二手に分かれての行動となる。


「くれぐれも気をつけてほしい」

「うむ。お主らこそ、な」

「ああ」


 互いに不敵な笑みを浮かべると、拳をこつんとぶつけ合う。


「……なんか、師匠とあの人、いつの間にかいい感じになっていない?」

「……うぅ、拙者達がいるのに」




――――――――――




「ふむ」


 一人になったプレシアは、洞窟の奥に向かってゆっくりと歩いていく。


 見た感じ、なんてことのない洞窟だ。

 獣や魔物が住処としていてもおかしくない。


 ただ、それは一般の感想。

 プレシアのように、魔法を極めた者が見ると、また違う視点となる。


「あちらこちらに魔法回路を巡らせておるな」


 魔法回路というのは、特定の魔法を効率よく使うために、あるいは強化するために設置する補助装置のようなものだ。

 魔力を水脈のように流して、その軌道を制御することで、力を収束させていく。

 魔力という見えないもので作られているため、一般人は気づかないことが多い。


 熟練の剣士とて、見落としてしまうことはあるが……

 それ以上の者となれば、違和感を得ることもあるだろう。


「そうじゃな。ガイならば、瞬時に看破するであろうな。さすがに、魔力回路であることはわからないじゃろうが、魔力があちらこちらに流れていることは……いや。あの男ならば、魔力回路であることも突き止めてしまうか……?」


 ありえないこと。

 ありえないことなのだけど……

 ガイならば、ありえるかも、と思わせてしまうところが恐ろしい。


「くく、本当に面白い男じゃ」


 最初は、単純な興味。

 それから、ガイがいれば魔法騎士団はさらに強くなる、という打算的な考え。


 そうして彼に近づいたのだけど……

 今は、ガイ本人のことが気になっていた。


 彼の人となりを知りたい。

 戦う理由を知りたい。

 好みを知りたい。


 興味は尽きない。


「そんな妾の気持ちを満たすためにも……さて、今回の件、しっかりと解決せねばならぬな」


 少し進んだところで罠を見つけた。


 目を凝らさないとわからないような、極細のワイヤーがかけられていた。

 その先を見ると、クロスボウがセットされていた。

 丁寧に毒も塗られている。


 ただ……


「本命はあっちじゃな」


 さらに奥を見ると、小さな魔法陣が描かれていた。

 魔力で隠蔽されているため、魔法使いでなければわからない。


 ワイヤートラップで油断させて、本命の魔法陣のトラップで敵を仕留める。

 二段構えの凝った罠だ。


 並の冒険者、魔法使いならば見抜くことはできなかっただろう。

 二段構えの罠に喰われていただろう。


「しかし、妾は超一流なのじゃ」


 プレシアは不敵に笑う。


「レビテーション。及び、シャドウステルス」


 プレシアの小さな体がふわりと浮いた。

 その上で、影に溶けるかのように周囲の景色と一体化する。


 その状態で罠をすり抜けていくのだけど……

 もしもここに魔法に詳しい者がいたら、腰を抜かしていただろう。


 異なる魔法の同時詠唱。

 そのようなことを可能としたものは、まだいない。

 世界中で研究されているものの、まだまだ実用化には程遠いという段階だ。


 それなのに、プレシアは散歩をするような気軽さで同時詠唱を行ってみせた。

 魔法騎士団、団長の肩書は伊達ではない。


「さて、この奥になにが待っておるかのう?」


 せいぜい妾を楽しませてみせろ。

 そう、プレシアは不敵な笑みを浮かべるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◇◆◇ 新作はじめました ◇◆◇
『追放された回復役、なぜか最前線で拳を振るいます』

――口の悪さで追放されたヒーラー。
でも実は、拳ひとつで魔物を吹き飛ばす最強だった!?

ざまぁ・スカッと・無双好きの方にオススメです!

https://ncode.syosetu.com/n8290ko/

GAノベル様から書籍1巻、発売中です! コミカライズ企画も進行中! こちらもよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ