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91話 姉っぽいことをしたい弟子達

「わぁ……! お二人は、英雄様の弟子さんだったんですね!」


 しばらくして、レミアが目を覚ましたと聞いて、俺達は、再び医務室に足を運んだ。


 そこで、今度はアルティナとノドカも自己紹介をした。


「ええ、そうよ。あたしが、一番弟子」

「むぅ……拙者が、二番弟子でありますよ」


 ノドカが、ちょっと残念そうに言う。


 一番も二番も関係ないと思うが……

 どうやら、彼女達の間ではとても大事なことらしい。


「あたしは、アルティナ・ハウレーン」

「ノドカ・イズミでありますよ」

「はい。よろしくお願いします、アルティナお姉ちゃん、ノドカお姉ちゃん」

「「はうっ!?」」


 レミアがにっこり笑うと、アルティナとノドカは、胸元を押さえるような仕草をしてよろめいた。


「……アルティナお姉ちゃん……」

「な、なんという破壊力なのでありますか……」


 どうやら、お姉ちゃん呼びが嬉しかったらしい。

 二人は妹が欲しいのだろうか?


「えっと……ご、ごめんなさい。気安くお姉ちゃんなんて呼んで……なんか、そんな感じがして、つい……」

「いいのよ、気にしないで。というか、むしろお姉ちゃんと呼んで!」

「拙者達も、レミアのことは妹のように思うのでありますよ!」

「……ありがとうございます、お姉ちゃん達」

「「はぅんっ!」」


 ばたり、と倒れる二人。

 そこまでなのか……?


「えっと……レミアは、体調の方はどうだい?」

「あ、はい。大丈夫です。何度か寝たおかげで、すっかり元気です!」


 レミアは笑顔を見せて、軽く体を動かしてみせた。


 無理をしている様子はない。

 本当に問題はないのだろう。


「なら、部屋に移動しようか」

「部屋?」

「しばらくの間、レミアは、この魔法騎士団支部で預かることになったから」

「そうですか……」

「ちなみに、俺達も一緒だ」

「そうなんですか!?」


 一気に顔が明るくなる。

 やはり、知らない場所に一人、というのは堪えるのだろう。


 その後、元気になったレミアと一緒に客室に移動した。

 ベッドが三つある、三人部屋。

 俺の部屋は、その隣の二人部屋を使わせてもらうことになっていた。


「レミア、お腹は空いていない?」

「よければ、拙者達がなにか作るでござるよ」

「ほんと!?」

「なにかリクエストはある? あたしはお姉ちゃんだから、大抵のものは作れるわよ」

「拙者もお姉ちゃんでありますからな! 遠慮はいらないでござるよ」


 二人共、『お姉ちゃん』の部分を強調していた。

 妹が欲しい年頃なのだろうか?


「えっと、えっと……パンケーキ!」

「「パンケーキ?」」

「うん! ふわふわのパンケーキが食べたいです!」

「「……」」


 キラキラ笑顔のレミア。

 対するアルティナとノドカは、気まずそうな顔に。


 ……作り方、よくわからないんだな。


「それじゃあ、ここで待っていてくれるかい? 俺が作ってこよう」

「英雄様が!?」

「これでも、料理はそれなりに得意なんだ」

「えっと、でも……」

「遠慮はいらない。なにか、好きなトッピングは? フルーツをいっぱい乗せるとか、生クリームをたっぷりとか」

「えっと……ぜ、全部、欲しいです……」

「よし、わかった。特製のスペシャルパンケーキを作ろうじゃないか」

「わぁ……! 英雄様、ありがとう!」


 レミアはいっぱいの笑顔を浮かべて、俺の腰の辺りにぎゅっと抱きついてきた。


 素直に可愛いと思うが……

 妹という感じはしないな。

 娘という感覚の方が近い。


「「あぁ……」」


 アルティナとノドカが羨望の眼差しを向けてきた。

 同時に、なぜ自分はパンケーキを作れないのか? という自責の念も感じた。


 大げさな……と、苦笑してしまう。


「じゃあ、待っていてくれるかい?」

「れ、レミア! 待っている間、あたし達と一緒に遊びましょう!?」

「拙者、曲芸などできるますぞ!?」

「ううん。英雄様がパンケーキを作るところを見たいです! いいですか?」

「え? ああ……それは構わないけど」


 ちらりと、アルティナとノドカを見る。


「「……」」


 絶望、という言葉がぴったりと似合う顔をしていた。


 二人は子供好きなんだな。

 苦笑しつつ、でも、微笑ましい気持ちになる。


「それじゃあ、みんなで一緒に作ろうか?」

「「っ!?」」

「はい、みんなで作りたいです!」

「そういうわけだから……アルティナとノドカも、手伝いを頼めるか?」

「「師匠ぉ~~~」」


 アルティナとノドカは、レミアのように抱きついてきた。

 助け舟を出したのがよほど嬉しかったらしい。


 娘が三人になった気分だ。


 その後……

 みんなでパンケーキを作り、楽しい時間を過ごすのだった。


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