表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/177

8話 本当にケルベロス……?

 剣を失った女性にケルベロスの牙が迫る。


 女性は剣を失いながらも、まだ諦めていない様子だ。

 体術で迎え撃ち、もう一度、武器を取り戻すために剣に視線をやる。


 でも……


 無茶だ。

 剣を失っているだけではなくて、体勢も崩している。

 うまく乗り切れたとしても怪我は避けられない。

 負傷したらさらに体の動きが鈍くなり、そのまま……


「ダメだ!」


 俺は、四十のおっさんだ。

 おまけに、冒険者になったばかりの初心者。


 普通に考えて、ケルベロスを相手になにもできず、倒されてしまうだろう。


 だとしても、このまま見過ごすことはできない。

 俺のようなおっさんでも、時間稼ぎをすることはできるかもしれない。


 俺にやれることを。

 ここで逃げることはしたくない!


 そう決意した俺は抜剣して、女性とケルベロスの間に割り込む。


「えっ……!? あ、あなたは……」


 女性は驚いて、


「グルルル……!」


 ケルベロスは低い唸り声を響かせつつ、動きを止めた。

 そのまま足を止めて、こちらを睨みつける。


「ケルベロスが警戒している……? って……そうじゃない! どこの誰か知らないけど、逃げて! 殺されるわよ!?」

「でも、俺が逃げたら、あなたが殺されてしまう」

「えっ」

「だから、逃げない」


 剣を構えて、ケルベロスを常に真正面に捉える。

 ヤツの一挙一足、その全てを見逃すな。

 攻撃のタイミングを計れ。

 1秒たりとも気を抜くな。


 己に言い聞かせつつ、ケルベロスと対峙すること1分。


「ガァッ!!!」


 先にケルベロスが動いた。

 後ろ足で大地を蹴り、前足をこちらに叩きつけてくるのだけど……


 遅くないか?


 ヤツの動きをハッキリと視認することができた。

 それだけじゃなくて、攻撃の軌道を読むことができて、簡単に回避できてしまう。


「あぶなっ……え、嘘!? 今の一撃を回避するの!?」


 女性は驚いているが……ふむ?


 なぜだろう。

 俺は、このケルベロスがそこまでの脅威とは思えなかった。


 こうして対峙してわかったのだけど、怖くない。

 恐怖で体がすくむことがない。


「こいつは……本当にケルベロスなのか?」

「あんた、いきなりなに言っているわけ!?」

「いや、しかし。ケルベロスは災厄と呼ばれているほどの脅威と聞いていたが、しかし、それほどの脅威とはとても思えないのだが」

「ケルベロスがそれほどだったら、他の魔物ぜーんぶどうでもいいってレベルになるわよ!? あんた頭おかしいんじゃない!?」

「……さすがに、その台詞はひどくないか?」

「あんたがおかしなことを言うからでしょ!? っていうか、あたしと話なんかしていないで、ケルベロスに集中しないとやられ……やられていないわね」


 女性と話している間も、ケルベロスは猛攻を繰り広げていた。

 前足で薙いで、三つの頭で噛みついてきて、巨体を叩きつけてきて……


 でも、その全てが軽い。

 そして、遅い。


 女性と話をしながらでも、片手間に十分対応できる。


「ど、どういうこと……? このあたしでさえ苦戦したケルベロスを赤子扱いするなんて……」

「実際、こいつはケルベロスの赤ちゃんなのではないか?」

「そんなわけないでしょ! それだけの大きさで赤ちゃんだったら、大人になったら大怪獣になっちゃうじゃない!!!」

「なら、ケルベロスに似た、ケルベロスもどき、という魔物の可能性は……」

「ないわよ! そんなの聞いたことないわ! っていうか、そんなどうでもいいことを考えるくらい、あんた、余裕なのはどういうことなのよ!?」


 俺も謎だ。


 ケルベロスを相手にしているのだから、死を覚悟していたのだけど……

 なんとかなっていた。


 やはり、こいつはもどきなのではないか?

 そうでないと納得できないのだけど……って、いかんいかん。

 女性が言うように、余計なことを考えている場合じゃない。

 今はまず、この魔物の討伐を第一に考えよう。


「ふっ」


 頭部の一つを蹴り、吹き飛ばしてやる。

 同時に俺は後ろに跳んで、距離を取る。


「……」


 剣を上段に構えた。

 高く、高く、高く……

 天を突くかのように刃を振り上げる。


 全身の力を使い。

 ありったけの力を込めて。


「終わりだ」


 叩きつけるように剣を振り下ろす。


 キィンッ! という甲高い音。

 風を、音を、空間を断つ。


 そして……


「……」


 断末魔の悲鳴をあげることも許されず、ケルベロスは縦に両断された。

【作者からのお願い】


「面白い」「長く続いてほしい」と思っていただけたら、是非ブックマーク登録をお願いします

また、広告下の『☆』評価で応援していただけると嬉しいです(率直な評価で構いません)。

皆様の応援が作品を続けるための大きなモチベーションとなりますので、よろしくお願いします!


ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◇◆◇ 新作はじめました ◇◆◇
『追放された回復役、なぜか最前線で拳を振るいます』

――口の悪さで追放されたヒーラー。
でも実は、拳ひとつで魔物を吹き飛ばす最強だった!?

ざまぁ・スカッと・無双好きの方にオススメです!

https://ncode.syosetu.com/n8290ko/

GAノベル様から書籍1巻、発売中です! コミカライズ企画も進行中! こちらもよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ