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69話 ノドカとシュロウガ

 10分ほどの準備時間を挟んで、ノドカとシュロウガの決闘が行われることになった。


 二人は木剣を持ち、対峙する。

 俺は審判として間に立つ。


「いいか? 相手の意識を奪う、もしくは降参させた方が勝利だ。決闘である以上、ある程度の怪我はやむを得ないが、命を奪うことを目的としないように。あくまでもこれは決闘であり、死闘ではない」

「了解いたしました」

「はっ、甘っちょろいことを。ま、俺様としても嫁がいなくなるのは困るからな。骨くらいは覚悟してもらうが、殺すまではいかねーよ」


 一応、両者、理解してくれたようだ。


 俺は、一歩後ろに下がり、手を上げる。


「では……はじめ!」

「おらぁっ!!!」


 開始の合図と同時に、シュロウガが前に出た。


 速い。

 決して口だけではなくて、きちんとした実力を持っているようだ。


 ただ、実力を持つのはノドカも同じ。

 高速の一撃をしっかり受け止めて、剣を流し、カウンターを放つ。


 しかし、それは読まれていたらしい。

 シュロウガは余裕の笑みを浮かべたまま、軽いステップを踏むだけで回避してみせた。


「ほぉ……俺様の一撃を避けるか。ちっとはやるようになったな」

「拙者は、鍛錬を重ねていました故」

「はっ! いくら鍛錬しても、雑魚は雑魚のままなんだよ。ましてや、女が俺様に勝てるわけねぇだろ? そのことを、今から、その体にたっぷりと教え込んでやるよ!」


 最初の一撃を捌いたことで、シュロウガに火が点いたようだ。

 ここからが、改めて本当の決闘となるだろう。


 ノドカなら……と信じてはいるものの、それでも緊張はする。

 それと、別の意味でも緊張していた。


「……あいつ、女がどうのこうの……マジでぶっ殺してやろうかしら? うん、決めた。コロス」


 ……色々な意味でアルティナが危ないから、決闘だけに集中してほしい。


「おらぁっ!」


 裂帛の気合と共に、シュロウガは木剣を振る。


 彼の剣はとても力強い。

 スピードや技術を優先するのではなくて、パワーを第一に考えているようだ。


 それは間違いではない。

 一つの選択としてアリだ。

 相手の防御ごと叩き斬ることができれば、それは『必殺』となる。


「くっ……!」


 対するノドカは、スピードに重きを置いた剣だ。

 力で押し切るのではなくて、速さで相手を撹乱しつつ、隙を狙い加速して一撃を叩き込む。


 ヒット&アウェイ。

 彼女らしい堅実な戦い方で

 これも『アリ』だ。


 ただ……


「おらおらおらっ、さっきまでの勢いはどうしたぁ!?」

「うっ……」


 ノドカは防戦一方になっていた。

 シュロウガの攻撃を避ける、あるいは受け流すことで精一杯。


 最初にカウンターを放ったものの、その一回だけ。

 以降、攻撃に移れないでいる。


 シュロウガが実力者というのもあるが……

 それ以上に、ノドカの調子がわるい。


 いつもはもっと軽やかな動きをして、踊るような剣を披露しているのだけど……

 今はとてもぎこちない。

 自慢のスピードも半分以下で、剣捌きも拙いものだ。


 ……緊張しているのだろうか?


 しまったな。

 ノドカの実力なら、99パーセント、シュロウガに勝てると思っていた。

 それだけの実力が彼女にはある。


 ただ、緊張で本来の力を発揮できないとなると、ややまずい。

 勝率は大きく下がってしまうだろう。


 相手は、親に勝手に決められた婚約者。

 因縁の相手でもある。

 そんなシュロウガと戦うことになり、心の負担がかからないわけがない。


 俺のミスだな。

 そこまで考えていなかった。


 ただ……


「ノドカ、がんばって!」


 あまり心配はしていない。

 なぜなら、ノドカは一人じゃないのだから。


「大丈夫! ノドカならそんないけ好かないヤツ、ワンパンよ! ワンパン! っていうか、ちょっと動きが固いわよ。まあ、それでも、そんなバカ相手なら勝てるだろうけど」


 そう。

 アルティナが言うように、本来の実力を発揮できないとしても、ノドカなら、シュロウガに勝つことはできるだろう。


 99パーセントとは言えないが……70パーセントくらいだろうか?


 ノドカにはそれだけの力がある。

 そう信じている。

 だからこそ、俺は決闘を持ちかけたのだ。


「ノドカ、手加減なんてしてやらなくていいのよ! 遠慮なくぶっとばしてやりなさい! 日頃の恨みや不満をぶつけてやりなさい! そんなバカ、同じ女として許しちゃおけないわ」

「……アルティナ殿……」

「さあ、やっちゃいなさい!」

「はいっ!!!」

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