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57話 師匠と弟子

「……硬いな」


 化け物にダメージを与えることはできたものの、こちらの手もわずかに痺れていた。

 それほどまでに強靭な装甲だ。


「このぉっ!」


 続けて、アルティナが攻撃を仕掛けた。


 急所一点狙い。

 アルティナの刃が、化け物の首をはねようとするが……


 やはりというべきか、浅い傷をつけただけで終わってしまう。


「師匠、こいつ、めっちゃくちゃ硬いわ!」

「ああ、身を以て理解したよ。ただ……いつかのオーガデビルのような再生能力はないみたいだな」


 傷口を見ると、そのままだ。


 いや。

 ゆっくりとではあるが、再生が始まっている。

 ただ、その速度は遅い。

 オーガデビルのように、切断した腕が元に戻る、というようなことはなさそうだ。


「まずは、ヤツの武器を奪う」

「オッケー!」


 その一言で、アルティナは俺の考えていることを理解してくれたみたいだ。

 頼もしい弟子だ。


 俺とアルティナは同時に駆けた。

 こちらの接近に気づいた化け物は、威嚇するように吠える。


 空気がビリビリと震えて、全身を揺さぶられているかのようだ。

 でも、耐えられないことはない。

 気合で我慢して、さらに突撃。


「これでも……」

「喰らいなさいっ!」


 俺とアルティナは、同時に、武器を持つヤツの腕に斬撃を叩き込む。

 刃を交差させるかのような同時攻撃。


 刃が化け物の骨に届く……けれど、切断には至らない。


「師匠っ、あいつ、めっちゃ硬い!? 手が痺れるぅ……!」

「あまり剣を強く握らない方がいい、ダイレクトに衝撃が伝わってくるからな。適度に力を抜いて、でも、剣は絶対に離さない。それがコツだ」

「難しい注文をしてくれちゃって……こうかしら!?」


 アルティナが再び斬りかかる。

 今度はうまくいったらしく、ニ度、三度と続けて斬撃を繰り出していた。


「すごっ……あの一瞬で対策をすぐに思いつくとか、さすが師匠ね♪」

「それを言うなら、少しのアドバイスで自分のものにできるアルティナは、さすがだ」


 互いに、ニヤリと笑う。

 いい感じだ。

 この調子なら、アルティナと完璧な連携を繰り出せるだろう。


 そうなれば……

 このような化け物、敵ではない!


「オォオオオオオッ!!!」


 化け物が吠えて、大木のような剣を叩きつけてきた。

 もはや斬るというよりは叩き潰す、だ。


 ただ乱雑に振るのではなくて、ちゃんとした技術が乗せられている。

 速く、鋭い。


「師匠っ、避けてカウンターを……って、師匠!?」


 俺は、あえて化け物の剣を受け止めた。


 いや。

 正確に言うと、受け止めるフリをして捌いた。


 インパクトの瞬間、ありったけの力を込めて衝撃を受け止めて。

 同時に、剣を少しずつ、正確に斜めに。

 そうやって化け物の剣を受け流した。


「ぐっ……アルティナ!」


 思っていた以上の負荷に体が悲鳴をあげるものの、気合で我慢した。


「まったく……師匠ってば、隙を作るために無茶しすぎ! でも……」


 アルティナはニヤリと笑い、剣を入れ替えた。

 虹色に輝く刃を持つ剣……聖剣を抜く。


 あまりの威力の高さ。

 そして、持つだけで魔力を使用するという特性のため、ここぞという時にしか使えない。

 彼女の切り札だ。


「これならどうっ!?」


 アルティナは、あえて化け物の急所を狙わない。


 切り札を使い、急所を狙う一撃必殺を繰り出してくる。

 化け物がそれを読んでいるだろうと推察した上での行動だ。


 アルティナが狙うのは、ヤツの足だ。


 全体重をかけた一撃を俺に叩き込んだ直後のため、足に負荷が集中していた。

 そこに強烈な攻撃を受けてしまうと……


「オオオオオォ!?!?!?」


 アルティナの聖剣が化け物の膝を砕いた。


 人の姿をしている以上、膝を砕かれては、まともに立ち上がることはできない。

 化け物は悲鳴をあげつつ、よろめいた。


 その拍子に剣にかかる圧力も消えて、脱出することができた。


「良い一撃だ」

「もうっ……あんな無茶をしないで。見ててヒヤヒヤするわ」

「無茶じゃないさ」

「え?」

「アルティナを信じていたからこそ、できたんだよ」

「……そ、そう」


 アルティナは、ふいっと横を向いた。

 ただ、その耳は赤い。

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