42話 困難を乗り越えて
予定とは色々と違ったものの……
スタンピードの核となっていた変異体を討伐することに成功した。
これにより、スタンピードは収束に向かう。
すでに街にやってきた魔物はどうすることもできないが、移動中の魔物は足を止めて、そのままそれぞれの住処に引き返していく。
あとは街に残った魔物を掃討するだけ。
万全の準備をしていたため、それはさほど難しいことではなくて……
俺達が戻る頃には掃討が完了していた。
こうして、エストランテは最大の危機を乗り切ることができた。
――――――――――
結界のおかげで街の被害はほとんどない。
冒険者や騎士、有志の人々のおかげだ。
ただ、人的な被害はどうしても出てしまう。
重軽傷者。
そして……死者。
人々は悲しみ、死者を悼んだ。
二度とこのようなことが起きないようにと願い。
死者の魂に安らぎが訪れるように祈る。
3日、街は追悼のために祈りを捧げた。
そして……
――――――――――
「「「かんぱーーーーーいっ!!!!!」」」
死者を悼み、祈りを捧げた後。
いつまでも悲しみに囚われていてはいけないと、街全体で宴が開かれることに。
広場にたくさんのテーブルと料理、酒が用意されている。
街の人々は、美味しい料理で笑顔になり。
あるいは、酒を飲んで楽しく歌う。
こういう宴は二度目だけど、やっぱり、いいな。
亡くなった人のことは忘れてはいけない。
でも、囚われてもいけない。
大事な人に心配をかけないためにも、笑顔でいることは大事だ。
「やっほー、師匠! 飲んでるぅ!?」
にっこり笑顔のアルティナがやってきた。
右手に酒。
左手にも酒。
……料理はどうした?
「ほどほどに飲んでいるよ」
「ダメよー、師匠は今回の立役者なんだから! いっぱい、いーーーっぱい飲まないと!!!」
「俺は、そこまで酒に強くないからな……」
「ならぁ、たくさん飲んで強くならないと! 1日10000杯よ!」
普通に死んでしまう。
「あまり飲みすぎないように注意しろよ? 先日のミス、忘れたわけじゃないだろう?」
「ミス? なんだっけ?」
まずい。
弟子の記憶が酒で飛んでいる。
このままだと、また大変なことになりそうだが……
「ほら、みんなも飲みなさい! あたしの奢りよ!」
「「「やったーっ!!!」」」
「酒は正義! 飲みは自由! いくらでも飲めるわ!」
……止められそうにないな。
どうしようもないので、放置しよう。
身を以て学ぶことも、時に大事だ。
「ガイ様」
聞き覚えのある声に振り向くと、セリスの姿があった。
「これは、どうも。久しぶりですね」
「なぜ、そのような口調なのですか? 以前と変わらずに接してくださいませ」
「しかし……」
あの後、改めてアルスティーナ家について調べたのだけど……
かなりの大貴族だった。
簡単に言うと、領主。
街の治世と司るトップだ。
それだけではなくて、国全体で見てもかなりの力を持つ。
今まで軽い口調で話していたが、大丈夫だろうか?
不敬罪が適用されるのでは?
……と、少し顔を青くしたものだ。
「再び、エストランテはガイ様のおかげで救われました。英雄様に跪かれては、わたくしの方が非難されてしまいますわ」
「……では、お言葉に甘えて」
「はい♪」
とても嬉しそうな笑顔。
わりと気さくな性格をしているんだよな、この子。
良い意味で貴族らしくない。
民の視線で物事を考えてくれそうだ。
セリスが領主だったのなら、エストランテはさらに発展しそうだ。
「本当はもう少しお話したいのですが、他にも挨拶をしなければならない方がいまして……」
「いや、気にしないでほしい。こうして、少しでも話せてよかった」
「まぁ♪ ガイ様は、お口が上手なのですね」
「本心だ」
「……そのようなことを言われてしまいますと、本気にしてしまいますわよ?」
なんの本気だろう?
「さて……では、また」
「ああ、また」
軽く手を振り、セリスと別れた。
「……そろそろかな」
今夜、宴の中で申しわけないがギルドまで来てほしい。
ギルドマスターからそんな伝言を預かっていた俺は、ほどほどのところで宴を切り上げて、ギルドへ移動した。
「こんばん……」
「どういうことだっ!!!?」
「……わ?」
中に入ると、耳をつんざくような怒鳴り声が響いてきた。
顔を真っ赤にしたシグルーン。
そんな彼と対峙するのは、あくまでも冷静な表情を保つギルドマスターだ。
「どういうことも、今、伝えた通りだ」
「ふざけるなっ!? 僕の……僕の冒険者資格を凍結するだと!?」
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