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38話 天災との戦い

 ついに朝が訪れた。

 今日、天災級のスタンピードがエストランテを襲う。


 魔物の群れは、推定で1万以上。

 対する俺達は、冒険者と騎士、有志の部隊を集めて300人。


 絶望的な戦力差ではあるものの……

 ただ、やれるだけのことはやった。


 人間は強い。

 勝てるはずだ。


 そう信じて、前に進む。




――――――――――




 作戦は、大きく分けて二つ。


 まずは、籠城戦だ。


 王都から届いた結界の魔道具を使用して、街の安全を確保。

 その上で、東西南北に四つの出入り口を作り、魔物を誘い出す。


 急造ではあるものの、小さな砦を建設して。

 バリケードを作り。

 そして、ありったけの罠を配置した。


 障害物と罠。

 そして、結界をいいように展開することで、突撃する魔物の数を一定数以下に絞ることができる。


 ギルドマスターや、その他、戦術に詳しい人の分析によると、これで3日は耐えることができるという。

 2日経てば王都から援軍が届く予定なので、十分な時間だ。


 ただ、戦場では常に不測の事態に備えなければいけない。


 籠城戦がうまくいくとは限らない。

 予想外のトラブルで魔物の勢いが増して、防衛網が突破されてしまう可能性もある。


 故に、もう一つ、作戦が用意されることになった。


 スタンピードは、核となる魔物がいる。

 その魔物は、主に異常な進化を遂げた『変異体』と呼ばれている。


 通常の魔物ではありえないほど濃密な魔力をまとい、強大な力をてにしている。

 その変異体に突き動かされる形で、他の魔物達が暴走を始めてスタンピードが発生する……簡単に説明すると、こんな仕組みだ。


 変異体を倒せばスタンピードは収束する。


 ただし、変異体は恐ろしく強力だ。

 そして、スタンピードの中心にいるため、辿り着くためには魔物の群れを突破しなければいけない。


 一見すると不可能だけど……

 今回は、それを可能とする策があった。


 エストランテは上下水道が完備されている。

 それは街の南まで伸びていて……

 それを利用することで、スタンピードの中心地点に一気に移動することが可能だ。


 もちろん、安全に移動できる保証はない。

 変異体のすぐ近くに移動できる保証もない。

 それでも、賭ける価値はある。


 ギルドマスターはそう判断して、一部の精鋭達が送り込まれることになった。


 メンバーは……

 俺、アルティナ、シグルーン。

 それと、ギルドマスター本人も参加することになり、四人だ。




――――――――――




「……魔物の群れ、見えてきました!」


 魔道具で街の南方を監視するリリーナは、遠くから迫る魔物の群れを見つけて、大きな声をあげた。


「全員、戦闘準備だ!」

「門を閉じろ! 結界も、作戦通りに展開しろ!」

「皆、砦とバリケードの内側へ! まずは、遠距離攻撃とトラップで、できる限りの数を減らして粘るぞ!」


 冒険者と騎士。

 そして有志の者達が武器を構えた。


「「「……」」」


 誰も言葉を発しない。

 緊張で汗が流れる。


 それでも、逃げ出すような者はいない。

 恐怖に折れる者もいない。


 街を守る。

 皆の想いは一つだ。


 そして……


「「「グォオオオオオーーーーーッ!!!」」」


 魔物の群れが、ついにエストランテに到達した。


 全てを飲み込み、破壊する津波のよう。

 普通に考えて抗うことは不可能。

 それでも、人々は挑む。

 大事なものを守るために、武器を手に取る。


「皆、いくぞっ!」

「「「おおおぉっ!!!」」」


 エストランテの歴史に刻まれる戦いが始まった。




――――――――――




 薄暗い地下道を、ランタンの明かりを頼りに進む。

 時折、地図を確認する。

 そして、再び足を進める。


「皆、大丈夫だろうか……?」


 本当なら地下道を一気に駆け抜けたい。

 ただ、あまり広くないため、それは難しい。


 それに大きな音を立ててしまうと、地上の魔物に気づかれる可能性もある。

 早足で移動するしかない。


「まったく、酷い臭いだ……なぜ、この僕がこのようなところを」

「うるさいわね。これ以上文句を言うようなら、そこの下水に叩き落とすわよ」

「……キミは、本当に女性かい? その野蛮な言動、なかなかに酷いね」

「よし、叩き落とすわ」

「アルティナ、よしなさい」

「ぶぅ……」


 膨れるアルティナをなだめつつ、先を目指す。


 先頭を進むのは、ギルドマスターだ。

 彼が一番、この地下道に詳しい。

 なんでも、地下道の製作に関与した経験があるらしい。

 その話は興味あるのだけど、今は、無駄口を叩いているヒマはない。


 ひたすらに前に、前に進む。

 そして……


「着いたぞ」


 とある出口の前で、ギルドマスターが足を止めた。


「計算では、この上にスタンピードの中心となる変異体がいるはずだ」

「本当なのかい?」

「あくまでも計算だ。誤差はあるだろう……ただ、何度も何度も計算を繰り返した結果だ。近くにいるはずだ」

「なるほど、それは……素晴らしい情報だね」

「シグルーン? お前は……」

「では、後は僕に任せてもらおうか! はははっ、ライト!」

「なっ……!?」


 シグルーンが魔法を唱えて、閃光が狭い通路を飲み込む。

 咄嗟に目をつむるものの、完全に防ぐことはできず、視界が閉ざされてしまう。


 扉が開く音。

 遠ざかる足音。


「くっ……!」


 少しして視界が元に戻る。


 アルティナとギルドマスターはいるが、シグルーンの姿はない。

 それに気づいて、アルティナは憤怒の表情に。


「あのバカ勇者っ……!!! 手柄欲しさに、一人で暴走したわね!?」

「愚かな……! 変異体は、確実に仕留めないとならんというのに!」

「二人共、怒るのは後にしよう。すぐに追いかけないと」

「あんなヤツ、放っておけばいいんじゃない?」

「怒る気持ちはわからないでもないが、それでも、貴重な戦力だ。このまま見捨てるわけにはいかない。それに、彼が変異体を倒してくれるというのなら、それはそれで構わない。大事なのは手柄ではなくて、いかにしてスタンピードを収束させるか、だ」

「それは……はぁ、わかったわ。師匠の言う通りにする」

「ありがとう」

「ただし! あのバカ勇者は、今回の件が片付いた後、なんらかの処分を下して! できるわよね、ギルドマスター?」

「ああ、そうしよう。さすがに、今回のスタンドプレイは見逃せない」

「なら、よし♪」


 途端に機嫌を良くするアルティナだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 喚き散らす「しぐるーん」を無理やり選出した感が・・・(苦笑)
[良い点] 勇者のメンタルが強すぎるなぁ(笑)
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