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29話 宴と添い寝

「では、ドラゴン討伐と、みなさんの無事と……そして、ガイさんに」

「「「かんぱーーーいっ!!!」」」


 後日。

 ドラゴン討伐を祝い、冒険者達の間で宴が開かれることに。


 もちろん、俺とアルティナも参加していた。


 というか、強制的に参加させられたというべきか……

 朝。

 たくさんの冒険者がやってきて、強制的に連れてこられたんだよな。


 まあ、宴は嫌いじゃない。

 酒も好きだ。

 みんなで一緒に楽しむことにしよう。


「ようっ、ガイ。ちゃんと飲んでいるか?」


 ドラゴン討伐で一緒になった冒険者が話しかけてきた。


「ああ、飲んでいるよ」

「そうかそうか、たくさん飲めよ。この宴の費用はギルド持ちだからな。飲み放題だ、はっはっは!」

「そいつは素敵な話だ」

「あっ、ガイさんだ!」

「ねえねえ、ドラゴン討伐の話を聞かせてちょうだい?」


 今度は若い子がやってきた。

 この子達は、後方支援を担当した冒険者だろう。


「しかし、まぐれで討伐できた話なんて、聞いても楽しくないだろう?」

「「「ドラゴンはまぐれで倒せるような相手じゃない」」」

「あ、あぁ……」


 ぴたりと息を揃えて、その場にいる全員に否定されて、妙な圧に飲まれてしまう。


「えっと、あの時は……」


 話を求められたので、ややぎこちないものの、記憶を掘り返しつつ話をした。


 すると、皆はキラキラと瞳を輝かせる。


「はー……すごいな、あんた。俺だったら、そんな真似、絶対にできねえよ」

「素敵です! 体を張って、勇者と弟子を守るなんて……!」

「私、ガイさんみたいな立派な冒険者を目指します!」

「おいおい、俺の方がランクが下なんだけどな」

「そのことですが」


 リリーナがやってきた。

 彼女も飲んでいるらしく、ちょっと頬が赤い。


「今回の件を受けて、ガイさんのランクアップが決定しました!」

「「「おーーーっ!!!」」」

「Fランクへの昇格、おめでとうございます!」

「「「おめでとうっ!!!」」」

「いや、その……ありがとう。皆にそう言ってもらえて、嬉しい」


 こんな風に、たくさんの人から祝福されるのは初めてかもしれない。

 涙腺が緩んでしまいそうだ。


 いかんな。

 歳をとったせいか、ちょっとしたことで感情が動かされてしまう。


「ガイさん、これからも当ギルドをよろしくお願いしますね♪」

「ああ。こちらこそ、よろしく頼む」


 リリーナとエールの入ったグラスをこつんとぶつけて、笑顔を交わした。


「ししょーーー!!!」

「アルティナ? って、すごい酒臭いな」


 アルティナはものすごい酔っていた。

 普段の凛々しい姿はどこへやら、今は立っているのもやっとの様子でふらふらだ。


「やったねー、ししょー! 昇格できて、あたしも嬉しいわ! えへへ~♪」

「おい、こら。抱きつんじゃない」

「いいじゃん、いいじゃん。弟子からの喜びの抱擁だよ? ぎゅーーー♪」


 絡み酒なのか?


「ほんと、よかったぁ……ドラゴンは討伐できて、あのバカ勇者も撃退できて、良いことばかり!」

「まあ、否定はしないが」

「だーかーらー、もう一回、ぎゅ~♪」


 ダメだ。

 アルティナは、かなり酔っ払っているな。


 酔いが覚めた時、記憶が残っていたら、悶絶するのではないか?

 その前に、二日酔いになりそうな勢いだが。


「……あたし、嬉しいんだ」

「アルティナ?」

「師匠、どこか影があるっていうか、心の底から笑えていない気がしたから……」

「それは……」

「でも、今は本当に楽しそうで……だから、よかった♪」

「……ありがとう、アルティナ」


 俺が今、笑えているのは、それはアルティナのおかげだ。

 アルティナが俺をここまで連れてきてくれた。


 俺の方こそありがとうと、感謝の意味を込めて彼女の頭を撫でた。


「にゃー♪ ししょー、なでなでしてぇ?」

「今度は幼児化しているな、まったく……ほどほどにしておかないと、明日、地獄を見るぞ?」

「平気だもーん、あたし、酒に強いしー」


 ……なんて言っていたアルティナだけど。


「すぅ……すぅ……」


 ほどなくして、落ちてしまった。

 俺に寄りかかり、寝息を立てている。


 アルティナをおんぶする。


「俺は、この辺にしておくよ」

「なんだ、もう帰るのか?」

「もっと飲みましょうよー」

「誘ってくれるのは嬉しいが、アルティナがこの調子だからな。ひとまず、寝かせてくるよ」


 皆と別れて、宿に移動した。

 彼女が使う部屋に入り、ベッドに下ろして……


「むにゅ……」

「うお!?」


 ぐいっと引っ張られた。

 突然のことなので抵抗できず、アルティナと一緒にベッドに倒れ込んでしまう。


 アルティナの顔が目の前に。

 とても綺麗で、愛らしく……

 まるで宝石を見ているかのようだ。


「あ、アルティナ……?」

「えへへー、ししょー……」

「……なんだ、寝ぼけているだけか」


 こんなおっさんをドキドキさせないでほしい。

 というか、俺が俺を律するべきか。

 大人として、しっかりしないとだな。


「じゃあ、おやすみ」


 ベッドから離れようとして……

 しかし、アルティナにガッチリと掴まれているため、離れることができない。


 くっ、なんて力だ!?

 万力のように体が固定されているぞ。


「まいったな……これ、どうすればいい?」




――――――――――




 結局、アルティナに掴まれたまま離れることができず、翌朝を迎えた。


 こうなると、


「きゃー、師匠の痴漢ー!?」


 と叫ばれるパターンなのだけど……


「あ……師匠、おはよう……」

「あ、ああ……おはよう」

「……」

「アルティナ? どうしたんだ?」

「……きぼちわるぃ……」

「えっ」


 ……その後、なにがあったのか。

 アルティナの名誉のため、ここは伏せてさせてもらおう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 盛大に二日酔いになってるw
[一言] あ〜、ゲ◯ったんやな!w
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