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207話 わがままを言わせてほしい

「ソーンさん、アルティナ、ノドカ、ユミナ」


 剣を構えつつ。

 振り向かず、後ろに声をかける。


「まずは、俺一人でやらせてもらえないだろうか?」

「ちょっ……!?」


 アルティナの慌てる声が聞こえてきた。


「なにを言っているでありますか!?」

「そんなヤツに、律儀に一対一をする必要なんてないよ!」


 すぐにノドカとユミナも反対する。

 ただ、ソーンさんの反対の声は聞こえてこない。


「……なぜ一人を望む?」


 ソーンさんの静かな問いかけ。

 語るべき答えは持っている。


「わがままです」

「……」

「それと、俺はこいつとは違うと……そう示しておきたく」

「ふむ」


 俺も剣士だ。

 ただ、ノアと同じと思われたくない。

 血を見るために戦うなんてこと、欠片も考えたことはない。


 だから。


 俺は違うと、戦いで証明して。

 真正面からの勝負で、ノアを打ち破り、彼の剣の在り方を否定する。

 そうすべきと思ったのだ。


「……任せよう」

「ちょっと!?」


 アルティナが非難めいた声をあげた。

 ただ、ソーンさんは聞こえないフリをして後ろに下がる。


 すみません、わがままを言って。

 そして、ありがとうございます。


「むぅぅぅ~~~」

「えっと……」


 アルティナがものすごい目で睨んできた。

 本気で怒っている様子。

 少し恐ろしいな。


「アルティナ」

「……」

「納得してほしい……というのは難しいだろうし、すぐに気持ちを切り替えることも難しいだろう。それと、俺が言っていることは無茶で、ただのわがままであることも理解しているつもりだ」

「それなら、どうして……!?」

「俺は剣士でありたい」

「それは……」


 アルティナの非難めいた視線が消えた。

 ノドカとユミナも似たような感じだ。


「俺が俺であるために。そして、剣士であるために……この答えではダメか?」

「……あーもう!」


 アルティナはヤケ気味に大きな声を出した。

 そして、びしっと指をさしてくる。


「いい!? 絶対に勝たないと、師匠だからって許さないんだから!」

「アルティナ……ああ、わかっている。勝つさ」

「まったくもう……本当に、師匠は師匠なんだから」


 文句をこぼしつつも、アルティナはソーンさんがいるところまで下がってくれた。

 完全に納得してくれたわけではないけれど、理解を示してくれた。

 ありがたい。


「ノドカ、ユミナ」

「うぅ……そのようなことを言われたら、拙者、なにも言えないでござるよ……」

「お兄ちゃんって、こう見えてけっこう頑固なところがあるんだよね……」


 二人、同時にため息をこぼす。


「ガイ師匠、絶対に勝ってくださいでありますよ! それが条件です!」

「私は、後で美味しいスイーツでも奢ってもらおうかな? お兄ちゃんが顔を青くするくらい、いっぱい食べるからね♪」

「わかった。みんなで祝勝会といこうか」

「絶対だからね?」

「じゅるり……」


 二人も後ろに下がる。


 ありがとう。

 心の中でお礼を言いつつ、ノアに向き直る。


「待たせたな」

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