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163話 魔剣


 アロイスが持つ剣。

 それは、見覚えがある。


 いや。

 正確に言うと、同じものを見たことはないのだが……


 ただ、まったく同じ雰囲気の剣を見たことがある。


 剣がまとう闇は、あまりにもアレとそっくりで。

 忘れられるはずがなくて。

 思わず背中が震えてしまう。


「……アルティナ、ノドカ」

「なに? 油断なら絶対にしないから、安心して」

「すぐに、とっちめてやるのでありますよ」

「すでに油断している」

「えっ」

「それは、どういう……」

「あの剣……忘れたか? 見覚えはないか?」

「剣って……あっ!?」


 アルティナは、思い出した様子で大きな声をあげた。

 次いで、ノドカも目を大きくして驚く。


「まさか、そんな……」

「……あたしの勘違いとか、考えすぎとか、そういう可能性は……」

「だとしたら嬉しいが、今は、最悪の可能性を考えるべきだろうな」


 一人、事情を知らないユミナは、キョトンとしていた。


「ねえ、みんな……どうしたの? アロイスの持つ剣がどうかしたの?」

「あれは……たぶん、魔剣だ」


 強大な力を持つけれど、使い手を狂わせる呪われた剣。


 ただ、死者の怨念が宿っているとか、そういう単純な話ではなくて……

 人類の天敵とされている、魔族の力が与えられた剣だ。

 故に、魔剣。


「魔剣って……えっ、アレ、実在したの? 魔剣も魔族も、おとぎ話の世界の話じゃないの?」

「だったら、どれだけ嬉しいことか」

「ちゃんと実在するわ」

「拙者達は、実際に戦ったことがあります故」

「魔剣……まさか、アロイスがそんなものに手を出しているなんて……」


 ユミナは、とても苦い表情だ。

 たぶん、俺も似たような顔をしていると思う。


 以前に一度、魔剣を持つ相手と。

 そして、魔族と戦うことがあった。


 どちらも恐ろしい強敵で、勝てたのが奇跡と思えるほど。


 あの日が特別なだけで、魔剣も魔族も、もう二度と出会いたくないと思っていのだけど……


「これは偶然なのか? それとも……」

「さっきから、なにをごちゃごちゃと……!」


 アロイスは、痺れを切らした様子でこちらを睨みつけてきた。

 目は血走り、それでいて顔は青い。

 魔剣の影響を受けていることは間違いないだろう。


「お前達は、この私が直々に罰を与えてやろう! 光栄に思うがいい!」

「待て! その剣の正体を知っていて……」

「うるさいっ、黙れぇっ!!!」


 アロイスが獣のように吠えて、突撃してきた。


 くっ、説得は不可能か……!


 予想外の展開に動揺してしまうものの、しかし、ここで負けるわけにはいかない。

 こちらも応戦する。


「アルティナとノドカは兵士達を! ユミナは、俺の援護を頼む!」

「了解! ちょっと物足りないけど……」

「ありったけ暴れてやるのでありますよ!」


 アルティナとノドカは、それぞれ剣を抜いて、兵士達を迎え撃つ。


 数の差は圧倒的。

 一人で三人から四人を同時に相手しなければいけない。

 しかも、相手は連携がとれていて、数が多いことで混乱することなく、人数差の有利をしっかりと使いこなしている。


 ただ。


 それでも、アルティナとノドカの方が上だ。


 アルティナは踊るように、華麗に攻撃を回避して。

 そのまま反撃に転じて、確実に敵の数を減らしていく。


 ノドカの剣は、さらに技に優れていた。


 剣に込める力は、ほんの少し。

 相手の攻撃は、刃を斜めにして、そっと押し合わせることで受け流して。

 そのまま、返す刃で流れるような攻撃を叩き込む。

 柔に優れた動きだ。


 そして、俺は……



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