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150話 いざエルフの国へ

 ユミナは、エルフの国……イルメリアに行ったらしい。

 そこから先の情報は得ていない。


 ここから一週間ほどの距離。

 急げば四日か五日ほどで行けるだろう。


 ただ、イルメリアは鎖国的なところがあり、簡単に入国することができない。


 過去、人間とエルフは戦争をしていたことがあり……

 その影響が今に続いているせいだ。


 通行証があればいいのだけど、ただの冒険者に発行はされていない。

 『剣聖』の称号を持つアルティナでも、イルメリアの通行証は得ていない。


 イルメリアに入国できるのは、良質な物を扱う商人や高い身分にいる人くらいだ。

 一般人が気軽に立ち入ることはできない。


 ならば、どうするか?


 答えは簡単だ。


「……と、いうわけで。これから、こっそりと忍び込むぞ」


 五日かけて、イルメリアのすぐ近くまでやってきた。

 イルメリアは森の中にある国なので、簡単に姿を隠すことができる。

 今のところ、誰にも見つかっていない。


 そんな中で、こっそりと作戦を話し合う。


「忍び込むのはいいんだけど、どうやるの? エルフって、気配を探ることに長けている、とか聞いたような? あ、もしかして、いつかのように光を斬るとか?」

「光を斬る……??? なんでありますか、そのおかしな言葉は?」


 それは追々な。


「忍び込む方法は、わりと簡単だ」

「簡単……でありますか?」

「気配を消して、そっと入る」


 通行証がなければ門をくぐり抜けることはできない。

 持たないものは必ず追い返される。


 ただ、言い換えれば、一度入ってしまえば中で厳重な検査などが行われることはない、ということだ。


「忍び込めば、俺達の正体がバレることはそうそうないだろう」

「……師匠、あたしの言葉、聞いていた? エルフは、気配を探ることに長けているのよ? どれだけ静かにしても、絶対にバレちゃうわ」

「長けていたとしても、気配が完全に消えていれば探ることもできないだろう? ……このように、な」

「「えっ」」


 アルティナとノドカが驚きの声をあげた。


 文字通り、俺が気配を『完全に』消したからだろう。

 二人からすれば、突然、俺がいなくなったように感じているに違いない。


「こうして気配を消せばいい」

「あっ……!?」

「も、戻ったでありますよ……今のはいったい?」

「山で暮らして、いつも獣を相手にしていたせいだろうな。いつの間にか、気配を消すのがうまくなっていたんだ。そのうち、獣もだませるようになった」


 エルフがいかに気配を探ることに長けていたとしても、獣に勝てるほどではないだろう。

 獣は、人間やエルフの何十、何百倍も感覚が鋭いのだから。


 そんな獣を騙せるのなら、エルフも騙すことができるはず。


「これは、俺の数少ない特技だ」

「師匠の特技はめっちゃ多いじゃない」

「少ないとかいう嘘はいけないのでありますよ」


 嘘ではないのだが……なぜだ?


「まあ、師匠のすごさはわかったけど……そんな気配の消し方、あたし達はできないんだけど」

「ものすごく興味はあるし、習得してみたいとも思うのですが、さすがにすぐには……」

「大丈夫だ。まず、俺が中に入る。それから近くの裏口を開けてくるから、二人はそこから入ってきてくれ」

「なるほど……ええ、了解よ」

「ガイ師匠、気をつけてくださいなのでありますよ!」

「ああ、行ってくる」




――――――――――




 イルメリアは森の中に存在して、国を守るため、ぐるりと巨大な塀で囲われている。


 東西に出入りのための門があり……

 その合間に、兵士などが使うための小さな扉がいくつか設置されていた。


 アルティナとノドカは、そのうちの一つの近くに移動して、じっと息を潜めて扉が開くのを待つ。


「……」

「……」

「ねえ、ノドカ」

「なんでありますか、アルティナ殿」

「さっきの師匠の気配の消し方、あれできる? 今じゃなくて、鍛錬をすれば、っていう意味で」

「……弱音を吐くつもりではないのですが、難しいと思うのでありますよ」


 そう答えるノドカは渋い表情をしていた。


「目の前にいるのに認識することができない……気配というか、もはや存在そのものを消し去っているのであります。あのような技は、とても自分には……」

「そうよね……はぁ」


 アルティナは足元にある石を軽く蹴る。


「どうしたのでありますか?」

「んー……師匠がすごい人っていうのはわかっているし、嬉しいことなんだけど、ただ……」

「ただ?」

「あそこまでとんでもないところを見ると……見続けていると、追いつけるのかな、ってちょっと不安になるの」

「それは……そうですね」

「がんばらないといけないんだけど、でも、弱気なところもちょっと……あー、モヤモヤするわ!」

「……がんばるのでありますよ、アルティナ殿」


 ノドカが明るく言う。

 無理をしている様子ではあるが、アルティナはそこを指摘するつもりはない。


「拙者達ならばいつか。そう信じて、剣の道を進むだけでありますよ。それが……きっと、一番なのでありますよ」

「そうね……ん、ごめんね。変なことを言って」

「いえいえ」


 納得の表情を見せるアルティナ。

 ノドカも笑顔になり……


 二人は、『いつも通り』に戻った。



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