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145話 許さない……けど

「……お兄ちゃん……」


 ガイ達と別れたユミナは、一人、街を歩いていく。


 振り返りたい。

 ガイ達のところへ戻りたい。


 そんな衝動が湧き上がるものの、


「……っ……」


 ユミナは、キュッと唇を噛んで耐えた。


 ガイ達とは、たまたま依頼を一緒にこなしただけ。

 それ以上の関係ではない。

 それを示さないといけない。


 なぜなら……


「つまらない真似を……!」


 エルフは魔法の扱いに長けている。

 それは、人間と異なり、魔力の波長や流れを視覚で捉えることができるからだ。


 故に、人間よりも魔法を扱いやすい。

 故に、魔法を発動しようとすれば、誰よりも先に気づくことができる。


 今。


 数百メートル以上離れた場所で魔力反応があった。

 その矛先は、ガイ達に向けられている。


 魔法が発動する様子はないのだけど……

 それは術者の気分次第。

 対応するよりも先に魔法を発動して、ガイ達に危害を与えることができるだろう。


 だから、ユミナはガイ達と一緒にいるわけにはいかなかった。

 これ以上、迷惑をかけるわけにはいかなかった。


 このような脅しをしてくる連中に、これ以上ないほど心当たりがあったから。


「ユミナエル様」


 人気のない裏路地にあえて移動したところで、ローブとフードでその身を隠した男が複数人、現れた。


 よく見ると、フードの一部が尖っている。

 ユミナと同じ耳を持っている証だ。


「ホーンウォード様がお待ちです」

「やっぱり、お兄ちゃん達を狙っていたのはアロイスの命令なんだね!」

「……ユミナエル様が素直についてくるのならば、これ以上はなにもしない、と」

「くっ」

「しかし、これ以上、手をかけさせられるようならば……わかりますね?」

「そこまでして……!」


 ユミナは、怒りで目の前が真っ赤になるような感覚を抱いた。


 今すぐに背中の大剣を抜いてしまいたい。

 勢いのまま目の前の同胞を斬り捨ててしまいたい。


 それでも、ぐっと自制した。


 ここであの男からの使者を倒して、話を突っぱねることは簡単だ。

 しかし、その時は、ガイ達が危険に晒されるだろう。


 ガイ達は、まったくの無関係なのだけど……

 それでも構わない。

 あの男はやる。

 そういう最低の男なのだ。


「……」


 ユミナは、ガイのことを。

 そして、アルティナとノドカのことを思い浮かべた。


 ガイはとても大事な人だ。

 恩人であり、そして……

 彼のためならなんでもできる。


 アルティナとノドカは、短い間を一緒に過ごしただけだけど、大事な友達と思っている。

 明るく優しくて。

 気さくで親しみやすく。

 また一緒に冒険をしたいと思う。

 それだけではなくて、街を見て回るなど、遊びたいとも思う。


 そんな人達が、自分のせいで危険に晒されるとしたら?

 ダメだ。

 そんなことは絶対に許せない。

 到底、認められることではない。


「……わかったよ」


 ユミナは闘気を消した。

 怒気は諦観へ。

 体中の力を抜いて、軽くうつむく。


「あなた達の言う通りにする……」

「懸命な判断です」

「お兄ちゃん達のことは……」

「ええ、もう関係ありません。こちらとしても、無用な騒ぎを起こすつもりはありませんからね」

「……その言葉、信じるよ?」

「ええ、もちろん」

「……なら、行こう」


 ユミナは、一人、歩き始める。


「あいつの……アロイス・ラ・ホーンウォードのところへ」

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