表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

139/192

139話 気になる妹分

「じゃあ、またね、お兄ちゃん。アルティナさんとノドカさんも、また」


 互いに近況報告をして。

 それから雑談をして。


 さすがにそろそろ寝た方がいい、ということで解散。

 ユミナは自分の宿へ戻っていった。


 送ろうとしたのだけど……


「私も立派な冒険者だよ? だから大丈夫」


 そう断られてしまった。


 心配ではあるものの、ユミナが冒険者であることは確か。

 甲殻獣を一撃で倒すほどの力を持つ。


 構いすぎては彼女のプライドを傷つけるかもしれないと、素直に引き下がることにした。


 そして、俺達三人だけになったのだけど……


「ねえ、師匠。ユミナさんのことで、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」


 アルティナとノドカは、まだ寝るつもりはないらしい。


 俺も、まだ眠気はない。

 それに、ユミナについての話なら応えておいた方がいいだろう。


「彼女、今は、強くなるための武者修行で旅をしている、って言っていたけど……」

「それは本当なのでありましょうか?」

「うん? それは……ユミナが嘘を吐いている、と?」

「嘘ってほどじゃないんだけど、ただ、本当のことも言っていないようが気がするのよ」

「拙者は、武者修行というところに違和感を覚えたのでありますよ。旅をしているのは本当。でも、目的は別のものであるような……」

「その根拠は?」

「「女の勘」」


 とても判断に迷う答えだった。


 とはいえ、勘というものはバカにできない。

 勘は、その人が積み重ねてきた経験則だ。


 無意識化で最良の答えを選ぶことがある。

 戦闘においても勘は大事だ。

 体に染み込んだ技術が無意識に警報を発してくれたりする……それが勘というものだ。


 アルティナだけではなくて、ノドカも同じことを言う。

 なら、信じてみてもいいだろう。


「ユミナが嘘を吐いている、か……だとしたら、なぜだろう?」

「さすがにそれはわからないけど……」

「たぶん、ガイ師匠に知られたくないことなのかと」

「そうね。師匠に会ってからの彼女、嬉しそうだったけど、でも、同時に寂しそうでもあったから」


 そう……なのか?

 俺の目には、昔と変わらないように見えたのだけど……


 まいった。

 こういうことに関しては、アルティナとノドカの言うことは信用できる。

 あと、俺自身で気づけるように、こういうことも鍛えた方がいいかもしれないな。


「ユミナに話を聞いて……いや、それはやめておいた方がいいか」

「そうね。なにかわからないけど、彼女は師匠に隠したいことがある。それなのに、なにか問題がある? なんて聞いて、素直に答えてくれるわけがないわ」

「まずは、身辺調査がいいと思うのでありますよ。ユミナエル殿のような目立つ冒険者なら、情報者も色々な話を取り扱っているかと」

「二人は詳しいな」

「師匠が知らなさすぎるの」

「ガイ師匠が知らなさすぎるのでありますよ」


 まったくもってその通り。

 さすがに反省しないといけないな。


 思えば、おじいちゃんもこの辺りを心配していたような気がする。


 俺が剣を学ぶのはいいことだけど……

 でも、それだけに囚われないように、と言っていた。


 視野、思考が狭まることを恐れていたのだろう。


 事実、そのようになってしまい……

 やれやれ。

 俺はまだまだだな。

 修行しなければいけないこと、学ばなければいけないこと、たくさんだ。


「明日、情報屋を訪ねてみよう」




――――――――――




 日が変わり、翌日。

 俺達は、さっそく情報屋を訪ねてみることにした。


「ようこそ、冒険者ギルドへ! あっ、ガイさん!」


 冒険者ギルドに足を運ぶと、リリーナが笑顔で迎えてくれた。


 いつも元気がいい。

 でも、嬉しそうなのはなぜだろう?


「今日はどうされましたか? 新しい依頼ですか?」

「いや、情報を買いたい」


 情報屋というのは、冒険者ギルドのことだ。


 どこにも属さない。

 あるいは、裏社会に属する情報屋というのは存在するのだけど……


 ほぼほぼ非合法な存在なので、あまり関わりたくないというのが本音だ。


 知識がないと鴨にされてしまう。

 あったとしても、妙な連中が相手だとつきまとわれることもある……らしい。


 おじいちゃんに聞いた話なので、真偽はわからない。

 ただ、よほど切羽詰まった状況でない限り近づかないように、と強く言われていた。


 代わりに、冒険者ギルドでも情報屋がいる。

 冒険者のための情報を扱い、冒険者のために活動をする。


 ギルドに所属しているため、非合法ということはない。

 騙されることもぼったくられることもない。

 情報を得るなら、まずは正規の情報屋で……というのが冒険者の基本だ。


「情報ですか。えっと……はい。今なら、ちょうどいい方を紹介できますよ」

「頼む」

「では、少々お待ちください」


 リリーナが奥の部屋に消えて……

 ややあって、フードで顔を隠した人を伴い戻ってきた。


「おまたせしました。こちら、当ギルドに所属する情報屋のシデンさんです」

「やあやあ。僕がシデンだ、よろしくね」


 女性のように高い声だけど、しかし、男性らしさも感じる。

 フードで顔を隠しているだけではなくて、ローブも着ているため、体の線がわからない。


「……この人、男なのかしら? それとも女?」

「むむ……難しい問題でありますな」


 アルティナとノドカは迷っている様子だ。


「僕の性別が気になるかい? 素顔とか見たいのかな?」

「「うんうん」」

「そっか。でも、見せてあげられないな」

「「えーーー」」

「情報収集のためには、影になる必要があるからね。顔がバレていたら、適当なものはともかく、重要な情報を得ることは難しい。だから、僕の正体は秘密だ」


 たぶん、シデンというのも偽名なのだろう。


 とはいえ、それが情報屋というものなので不満を抱くことはない。

 アルティナとノドカも理解しているらしく、それ以上、彼……あるいは彼女の正体について言及しようとはしなかった。


 冒険者ギルドの一室を借りて、シデンと話をする。


「さてさて。それで、どんな情報が欲しいのかな?」

「ユミナエル・ネルゼ・ル・シルスアード、という冒険者について」

「……へぇ」


 そう訪ねた瞬間、シデンの気配が変わる。


◆◇◆ お知らせ ◆◇◆

再び新作を書いてみました。


『「パパうざい」と追放された聖騎士、辺境で新しい娘とのんびり暮らしたい』

https://ncode.syosetu.com/n7980kj/


こちらも読んでいただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◇◆◇ 新作はじめました ◇◆◇
『追放された回復役、なぜか最前線で拳を振るいます』

――口の悪さで追放されたヒーラー。
でも実は、拳ひとつで魔物を吹き飛ばす最強だった!?

ざまぁ・スカッと・無双好きの方にオススメです!

https://ncode.syosetu.com/n8290ko/

GAノベル様から書籍1巻、発売中です! コミカライズ企画も進行中! こちらもよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ