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137話 お兄ちゃん?

「お兄ちゃん!!!」


 エルフの女の子が俺の胸に飛び込んできた。

 そのまま、ぎゅうっとしがみついてくる。


「え? ……え?」


 俺は、ひたすらに困惑して……


「「えええええぇ!?」」


 アルティナとノドカは、思い切り驚いていた。


 それから、ジト目をこちらに向けてくる。


「どういうこと、師匠……? まさか、こんな小さな子に手を出して……」

「ガイ師匠が拙者達のことを見てくれなかったのは、年齢の問題が……」

「ま、待て待て待て。とんでもない誤解だ」


 弟子二人が恐ろしい勘違いをしていることに気づいて、慌てて否定した。


 それから、抱きついてきたユミナエルをなだめつつ、引き剥がす。


「あ、その……ご、ごめんね? すごく嬉しかったから、つい我を忘れちゃって……」

「どういうことなんだ? 俺とキミは、どこかで会ったことが……?」

「……お兄ちゃん、忘れちゃったの?」


 ユミナエルの悲しそうな、寂しそうな顔。

 そんな表情を見せられると胸が痛むのだけど、しかし、覚えは……


 ……いや、待て。


 無邪気で、いつも明るくて。

 そして元気いっぱい。

 それと、感情に合わせて長い耳がぴこぴこと動く。


 そうだ。

 この子は……


「ユミナ……なのか?」

「うん、そうだよ!」


 愛称で呼ぶと、ユミナエル……ユミナは、とても嬉しそうな笑顔に。

 同時に、長い耳が動いていた。




――――――――――




 夜の畑で話というのは、とても微妙なところだ。

 それに、どのような形であれ依頼を達成したことを伝えて、依頼主を安心させたい。


 そう判断した俺達は、依頼主のところへ。

 甲殻獣の討伐を報告して、その後、あらかじめ予約しておいた宿へ移動した。


 アルティナとノドカが使う二人部屋に集まる。


「それで……師匠、どういうことよ?」

「きっちりきっかり説明してほしいでござる!」


 弟子二人の視線が痛い。

 ユミナの外見が外見なので、よからぬことを想像しているのかもしれない。


 誤解を解かないと。


「どこから説明したものか……」

「お兄ちゃん、私に任せて」


 ユミナが前に出た。


「えっと……二人共、なにか勘違いしているみたいだけど、私とお兄ちゃんは変な関係じゃないよ?」

「……お兄ちゃんプレイ」

「……ガイ師匠は小さい方が? ならば拙者も」

「あれ?」


 さらに疑惑が深まり、ユミナは不思議そうに小首を傾げた。

 疑惑をかけられている本人が否定しても、あまり意味はないか。


「ユミナ……ユミナエルは、昔、剣を教えていたことがあるんだ」

「「えっ」」

「といっても、本格的に弟子をとっていたわけじゃない。おじいちゃんの代理で、基礎の基礎……本当に簡単なことを数日、教えていてな」


 極稀にだが、おじいちゃんが教え子を家に連れてくることがあった。

 山ごもりの特訓だ。


 ユミナは、その時に知り合った子だ。


 当時は俺も剣の修行中で、人に教えられるような立場にない。

 ただ、タイミング悪く、おじいちゃんは腰をやってしまった。


 幸い大したことはなかったものの、治るまでは言葉でしか教えられない。

 なので、未熟者ではあるが、代わりに俺が相手を務めることになったのだ。


 同じ剣を同じ師で学ぶ者同士。

 気が合わないわけがなくて、楽しく鍛錬に励んだものだ。


「……と、いうわけだ」

「なるほど……じゃあ、兄弟弟子みたいなものなのね」

「拙者はてっきり、将来を誓いあった仲と……」

「あ、それは正解だよ」

「「えっ」」


 ユミナが笑顔でとんでもないことを言う。


「私は、お兄ちゃんと結婚したいかな」


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