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13話 決闘

「はっ、おっさんのウソと化けの皮、俺が剥がしてやるよ」

「あー……お手柔らかに頼む」


 訓練場で向かい合い、互いに剣を構えた。


 結局、アルティナに押し切られてしまい、模擬戦をすることに。


「改めて、ルールの確認です。使用する武器は木製のもの。相手が意識を失う、戦意喪失、または降参で決着です。それ以上のことをしようとしたら、騎士団案件になります。あくまでも、これは訓練の一貫の模擬戦であることを理解してください」


 審判はリリーナが務めることに。


「両者、構え!」


 俺は剣を構えた。

 男の冒険者は槍を構えた。


 彼は不敵に笑う。

 俺に負けるなんて、欠片も思っていないのだろう。


 それは油断だ。

 そこに付け入る隙がある。


 相手は経験豊かな、格上の冒険者。

 おっさんで、しかも、成り立て初心者の俺が敵う相手ではない。


 ただ、うまいこと立ち回れば、あるいは……!


「始め!」

「ぎゃあああああっ!?」


 合図と共に男が突撃をしてきて、俺は、それを剣で弾いて……

 なぜか、男も一緒に空高く、盛大に吹き飛んでいく。


 着弾。

 隕石が落ちたかのような衝撃が広がり、男がぴくぴくと痙攣していた。


「あれ?」


 攻撃を防いだだけのつもりだったのだけど、どうしてこうなった?


「勝者、ガイさん!」

「「「……」」」


 ぽかんとする観客達。

 そんな中、アルティナは「さすが師匠!」と喜んでいた。


「って……お、おかしいだろ!? あんな風にやられるわけがねえ!」

「そうだ、なにかしらのインチキだ!」

「次は俺がやってやる!」

「はいはい、順番に並んでくださいね。ガイさんは、みなさんの挑戦、全てを受けて、その上で、キャンキャン吠える子犬のような愚か者全てを完膚なきまでに叩きのめすと言っていますから」


 言っていないぞ!?


「上等だ、おらぁ!」

「ぶちのめしてやんよ!」

「かかってこいやぁ!」

「はい、みなさん順番に。ガイさんは、誰でもいいからかかってこい稽古をつけてやるひよっこ共、とおっしゃっています」


 だから言っていない!?


「ふふんっ、師匠にかかれば、あんた達のような雑魚冒険者、一捻りよ! なんなら、まとめて全員でかかりなさい!」


 煽るリリーナとアルティナ。

 当然のごとく怒る冒険者達。


 そして俺は……


「なぜ、こんなことに……」


 ため息をこぼさずにいられなかった。




――――――――――




「いや、まあ……確かにさ、師匠ならまとめてかかっても問題ないって言ったけどさ。そう焚き付けたけどさ……」

「まさか、本当に全員同時に倒してしまうなんて……」


 十数人の冒険者が倒れて、気絶していた。


 一方の師匠は無傷。

 おまけに息も乱れていない。


 いやいやいや。

 師匠、どれだけ化け物なのよ?


 あたしが言っておいてなんだけど、まさか本当に、ここにいる冒険者をまとめてなぎ倒しちゃうなんて。

 剣聖の称号を授かるあたしも、さすがにそれは無理だ。


 それなりの実力者を十数人、まとめて相手にする。

 めちゃくちゃがんばって、運が味方をしてくれれば勝てるかもしれない。

 あるいは、実戦なら。

 障害物のない訓練場でなければ、可能かもしれない。


 でも、ただの木剣で。

 隠れる場所のない訓練場で、師匠は十数人の冒険者を相手にしてみせた。

 傷ひとつなく、息を乱すこともなく。

 そして、全てを同時に倒してみせた。


 真似をしろと言われても、絶対にできない。


 もう……すごい、の三言以外思い浮かばない。

 ますます師匠に対する尊敬の念が増していく。


「師匠! さすがね。まさか、ここまでしちゃうなんて思ってもいなかったわ。弟子であるあたしも、鼻が高いわ」

「すごいです、ガイさん! まとめて十数人を倒してしまうなんて……あっ、これはただの訓練ですから、ガイさんが罪に問われることはないから安心してくださいね」

「ふむ?」


 偉業を成し遂げた師匠は首を傾げる。


「そうか、なるほど」

「師匠? どうかしたの?」

「いや、なに。俺のようなおっさんが、こんなこと、できるわけがないと不思議に思っていたんだが……みんな、手加減をしてくれていたんだな」

「「はぁ?」」

「俺のような初心者に自信をつけてもらう。そのために、あえて体を張る……ここの冒険者達は、皆、優しい人のようだ」

「「頭がおかしいのでは?」」


 リリーナと揃って、ついつい本音がこぼれてしまう。


 師匠は、「なぜだ……?」と困惑していたが、あたし達の感想は正当なものだろう。


「それにしても……」


 師匠って、やけに自己評価が低いわね?

 こんな無茶苦茶な実力者なのに、それをまったく自覚していない。

 むしろ、やたら過小評価している。


「なんでかしら?」


 謎ね。


 でも……

 師匠の強さはあたしだけが知っていれば、それでいいかな。

 なーんて、ふふ♪

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ガイの勘違い?が不快すぎる あまりにも極端すぎると魅力がなくなる こんなのがずっと続くの?
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