129話 拠点を探そう
冒険者は、おおまかに二つのタイプに分けられる。
各地を渡り歩いて、常に旅をするか。
一つの街に定住して、そこで活動を続けるか。
その二つのタイプだ。
おじいちゃんは、最初は前者。
世界中を旅したと聞いている。
その後、歳を重ねたこともあり、あの山に隠居したらしい。
各地を旅するか。
一つの街に定住するか。
どちらが良い、どちらが悪いということはなくて、好みの問題で選んでいい。
アルティナとノドカは定住をしたいらしい。
俺はどちらでも問題ないため、二人の希望通り、定住を決めた。
場所は、もちろんエストランテだ。
長い時間をこの街で過ごしたことで、故郷のような愛着を持つようになっていた。
ここでいい家を探したいのだけど……
「なるほど、それで家を探しているんですね」
まず最初に相談したのは、冒険者ギルドの受付嬢のリリーナだ。
冒険者ギルドは、冒険者の補助・援助が役割だ。
冒険者を街に留めるため、家の補助金や、買い取りの際のサポートを行うこともある。
なので今回、リリーナに相談したというわけだ。
「お任せください! ガイさんのためなら、とっておきの家を紹介しますね。それと、補助金もたっぷりと出させていただきます」
「それは嬉しいが、勝手に決めていいのか?」
「問題ありません。ガイさんがエストランテを拠点にしていただけるのなら、ギルドマスターは、そのためになんでもやれ、と言うはずなので」
やたら評価が高い気がするな。
とはいえ、それは喜ぶべきこと。
誇るべきこと。
素直に受け止めて、これからも精進していこう。
「あ、拠点のことなんだけど」
アルティナとノドカが前に出る。
「三人が住めるようなところでよろしく」
「拙者、集合タイプの家ではなくて、一軒家が良いのでありますよ」
「あら、お二人も一緒に?」
「「もちろん」」
「いや、待て」
そんな話、聞いていない。
「なによ。師匠ってば、弟子を放り出すつもり?」
「そんなことはしない。ただ、二人は年若い子なのだから、おっさんと一緒の家というわけには……」
「なにか問題が? それともなに。師匠は、あたし達に変なことをしちゃう? 欲情しちゃう?」
「しない」
「む、即答……それはそれで悔しいわね」
どうしろと?
「とにかく、拙者達も一緒でござるよ。拠点を二つも三つも持てるほど、ガイ師匠はお金を持っているのでござるか?」
「それは……」
「同じ家とはいえ、それぞれの部屋があればよいのですな。それに、拙者達は師匠と弟子。一緒に暮らすことは、わりと問題ないかと」
言われてみると、その通りだ。
世間の師弟関係はそんなもの。
大きな家にたくさんの弟子を抱えた師が暮らしている、というのはよく聞く。
「はぁ……わかった。俺が気にしすぎていたみたいだ」
「「よしっ」」
なぜガッツポーズ……?
変なことは考えていないよな?
一緒に暮らせるから、その機会を利用して、なんというかこう……妙なことを企んでいないよな?
「では、あちらで話をしましょうか」
リリーナに案内されて、面談用に使う個室へ。
資金に関する相談をして。
家の資料を見せてもらい。
後日、家を実際に見て回る約束をして、この日は終わりに。
――――――――――
そして三日後。
「おまたせしました」
リリーナと合流して、実際に家を見に行くことに。
いい物件があれば、そのまま契約。
希望に沿うものがなかった場合は、一時保留。
また時間をおいて探すことになるのだけど……
「どんな家があたしを待っているのかしら」
「拙者、和を感じられる家がいいのでありますよ!」
アルティナとノドカは、すでに家が決まったような感じで、わくわく笑顔だった。
ここまで楽しみにしていたのか。
その期待に応えたいものの、いい物件が空いているか、そこは運になるからな。
「では、いきましょう」
こうして、俺達の拠点探しが始まるのだった。
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