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104話 ノドカの料理

「ふんふーん♪」


 魔物討伐を終えて、その帰り道。

 日が暮れてきたため、無理にエストランテへ戻ろうとせず、野宿をすることに。


 アルティナはテントなどの設営。

 ガイは、周囲の探索と、魔物や動物が近寄ってこないように罠を設置する。


 そしてノドカは料理を作っていた。


「らんらーん♪」


 さきほど狩った鹿を綺麗に捌いて、血抜きをして。

 それから豪快に切り、串に刺して焚き火で焼く。


 肉が焼ける音。

 脂が溶ける匂い。

 ただ焼くだけではあるが、食欲をそそられる。


「ノドカって、料理が好きなの?」


 アルティナはテントを設営しつつ、そう尋ねた。


「はい、けっこう好きでありますよ」

「へー、そうなんだ。ちょっと意外ね」

「そうですか?」

「あたし、ノドカって、斬ることしか興味ないと思っていたわ」

「拙者を人斬り狂人のように言わないでもらえますか……?」

「え? 間違っていなくない?」

「そのような認識!?」


 ノドカは、ガーンとショックを受けて。

 それから、心外だと言うように頬を膨らませる。


「拙者、こう見えて料理が得意なのですよ?」

「本当に?」

「本当でありますよ。だからこそ、料理担当に立候補したわけですから」


 ふふん、とノドカはドヤ顔を見せた。

 対するアルティナは、半信半疑という様子だ。


 確かに、ノドカの焼く肉は美味しそうだ。

 絶妙な焼き加減で、軽い焦げを作りつつ、しっかりと中まで火を通している。

 かぶりつけば、じゅわっと肉汁があふれるだろう。


 素人が肉を焼けば、焦がすか生焼けの二択。

 しかし、ノドカはしっかりと焼いていた。


「確かに美味しそうね」

「でしょう?」

「どこで料理を覚えたの? あたしなんて、そういうの、けっこう苦手なのに」


 アルティナは、剣のことばかり考えて生きてきた。

 女の子ではあるが、おしゃれにもあまり気をつかっていない。

 ならば当然、料理なんて気にかけたこともない。


「んー……拙者の家は、両親がちとアレなので……」

「あぁ、アレね」


 家のために娘を利用する。

 そんな親は、アレ呼ばわりで十分だ。


「いざという時に備えて、自活できるように色々と学んでいたのでありますよ」

「その時に、料理も?」

「はい。最初は必要になるだろう、というスタートでしたが、実際に料理をしていると楽しく……」

「いつの間にかハマっていた、と」


 なるほど、わからないでもない。

 なににハマるか、そのきっかけは人それぞれだ。


 アルティナも、剣にハマったのは、物語に出てくる英雄に憧れて……というわけではなくて。

 友達をいじめる近所の悪ガキをこらしめているうちに、という理由だったりする。


 なので、自活をするために始めた料理が、いつの間にか本格的に好きになっていたとしてもおかしいことではないだろう。


「でも、残念」

「なにがでありますか?」

「ノドカは、あたしと同じく、料理苦手ーズの一員だと思っていたのに」

「そのような奇怪なメンバーに勝手に加えないでほしいでありますよ!?」




――――――――――




「「「いただきます」」」


 野営の準備を終えて、食事の時間。

 三人は焚き火を囲んで、ノドカが用意した料理を食べる。


 鹿肉の焼き肉。

 それと、木の実と野草のサラダ。


 シンプルなメニューではあるが、何泊もするわけではないので、これで十分だ。


「うん、美味しいな」

「えへへ、ありがとうございます♪」


 ガイの評価に、ノドカは嬉しそうに笑う。


 それを見つつ、アルティナも鹿肉を食べた。


 しっかりと焼けているのだけど、柔らかさも残している。

 味付けに塩と胡椒とハーブ。

 肉の旨味を引き出しつつ、臭いもハーブでしっかりと消されていた。


 普通に……

 というか、予想していた以上に美味しい。


「……」


 アルティナは、小さな焦りを覚えた。


 ノドカは剣の腕は立つ。

 そして、可愛い。

 その上、料理もできるとなれば、かなり女子力が高い。


 もしかしたら、ガイを取られてしまうかも……?


 アルティナは難しい顔をしつつ、サラダを口に運んで……


「んぐぅ!?」


 悶絶した。


「ど、どうしたんだ?」

「アルティナ殿!?」

「こ、これ……めちゃくちゃ、苦いんだけど……」


 野草のえぐみ、苦みがまったく消されていない。

 妙に甘い木の実が混ざることで、むしろ、苦みが倍増されていた。


「えっ、そのようなはずは……!? はぐっ!」


 ノドカは、慌ててサラダを食べて……

 そして、アルティナと同じように、「むぐぅ!?」と悲鳴をあげた。


「……すみませぬ。拙者、肉料理は得意なのですが、その他の料理はまだまだ……」

「そっか……うん。なんか、すごく安心したわ。ノドカらしいわね」

「どういう『らしさ』なのでありますか!?」

「完璧じゃなくて、どこか抜けたところがある……ノドカは、やっぱりそうじゃないと」

「嫌でござるよ、そのような評価!?」


 アルティナとノドカのやり取りに、ガイが笑いながら二人をなだめて……

 そして、夜はゆっくりと更けていく。

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野草のえぐみ、苦みがまったく消されていない。 サラダなのに?
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