100話 初めての……
妾はガイに抱えられていた。
子供のような見た目じゃ。
ひょい、っと抱えることは簡単。
しかし、その状態でゴーレムと戦うなんて無茶がすぎる。
片手は塞がっている。
妾は小さく軽いといっても、それでも、それなりの重さがある。
そんな妾を抱えたまま戦うなんて、とんでもないデメリットだ。
いかに優れた剣士であろうと、やられてしまうのがオチだろう。
そう思っていたのだけど……
「ふっ!」
鋭い表情をしたガイは、また一体、ゴーレムを斬り伏せていた。
その呼吸に乱れはない。
その表情に焦りはない。
成すべきことを成すと、戦闘を続けていく。
「なんと……」
これほどの剣士は見たことがない。
以前から規格外な存在ではあると思っていたが……
妾の予想を遥かに超えていた。
まさか、これほどの力を持っているなんて。
最初は、退屈しのぎと興味本位でガイに声をかけた。
次は、この男ならば団員達を強くしてくれるのでは? と期待した。
そして今は……
「……む、むぅ……」
なぜじゃろう?
まともにガイの顔を見ることができぬ。
胸が温かくなるような。
それでいて、どこか切ないような。
今まで味わったことのない、不思議な感情に襲われていた。
『それ』は、妾の胸をひどくかき乱してしまう。
「くっ、妾としたことが……」
「どうかしましたか?」
「へ?」
気がつけば、ガイがこちらを見ていた。
その瞳はとても澄んでいて、綺麗で……
そして、ずっと見ていると心が吸い込まれてしまいそう。
「……」
「えっと……?」
「あっ、いや!? なんでもないぞ、なんでも!」
わ、妾としたことが、なんという無様なところを……
くぅ、一生の不覚!
……とはいえ。
「はぁっ!」
ガイは巧みに立ち位置を変えて、ゴーレムを操るかのように思いの場所に誘導して、斬り捨てていく。
ただ剣の腕が優れているだけではない。
戦場を全体的に見ることができる、戦術士のような優れた目と思考を持っていた。
この男は一流の剣士で……いや。
超一流だ。
「……それにしても」
ふと、疑問に思う。
とても優れて、洗練された戦い方なのだけど……
それでも、今日は、先日見た戦いと比べると、やや荒い気がした。
なぜなのだろう?
――――――――――
ザンッ!!!
上段から振り下ろした剣が、ゴーレムの右腕を根本から切り飛ばした。
そうして体勢が崩れたところで、二撃目。
首を断つ。
「これで終わりか?」
「なっ……なっ……」
この場にいる全てのゴーレムを倒して……
ゴゴールは、唖然とした様子で口をぱくぱくと開け閉めしていた。
ふむ。
彼の様子を見る限り、ゴーレムはこれで打ち止めみたいだ。
また、本気で動揺して……
そして顔を青くしているところを見ると、これ以上の切り札もないだろう。
ゴゴールに剣を突きつける。
「おとなしく投降しろ。でなければ……斬る」




