第75話 亜神級
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敵側のヤベー奴がエントリーだ!
亜神級。
それは人類におけるハーベストハーベスターのように、一個体で戦局をひっくり返しうる、正真正銘の怪物である。
それはハーベストたちにとって崇拝する存在であり、同時に畏怖し、屈従するべき存在である。
それは個別に特別な超常を宿し、独自のルールで動くモノである。
ハーベストの中でも抜きんでて、他に並ぶモノなき絶対の個。
現出すればその戦場は即座に地獄となり、滅びをかけて決死の戦いを強いられる。
それが。
人類が亜神と分類した、絶対最凶の殺戮者たち。
ゲーム版HVVにおける……エンドコンテンツにして隠しボス!!
(通常プレイしてたら絶対にお目にかかれない、理不尽の塊! 現実で目の当たりにすると、一発でわかるクソゲー製造機! つまり! 真っ当に組んで頑張ってきた今までの戦局が、崩壊する……!)
亜神級“空飛ぶクジラ”ことケートスは、例えるならば輸送戦艦。
存在自体が最大最強の、移動するマーキング!
こいつが戦場にいる限り、とんでもない勢いで敵援軍が召喚されて、止まらない。
つまり。
(今日のこっちの作戦。何もかもが今この瞬間、ぶち壊された……!)
天久佐の壁防衛戦は、難易度ハードどころかインフェルノ……いや、アポカリプスへと上昇した!
※ ※ ※
「あ、あんなのとどうやって戦えばいいんだ!?」
「化け物めぇ~~!!」
悪態をつきながらも、ベテランパイロットの先達たちが、大本営の指示を受け壁の向こうで迎撃に入ってくれた。
落ちてくる敵には地上に着地するまで超常能力によるバリアが張られており、落下を狙うなんていう芸当はできない。
「ピギギッ!」
「ゴブッ!」
「くそがっ!! 吹っ飛べよ!」
「よく見ろ! バリアがまだ残ってる! 弾の無駄だ!」
着地狩りのタイミングまでバリアが継続するせいで、迎撃側は降りてくるのを待ってから、ヨーイドンでの対応を強いられる。
っていうか、ヨーイドンならまだマシだ。
「うおっ! また降ってきやがった!」
「急げ! ここらの奴らを倒しておかねぇと処理が追い付かなくなる!!」
降りてくるのは妖精級のハーベスト。
フェアリー、ゴブリン、ゴーレム、キマイラ。
ベテランの戦士なら、それこそ今の天2のみんななら、片手間に倒すくらいはできる程度の敵ばかり。
だがそれも、空から際限なく降ってくるとなれば、いずれは対応しきれなくなる。
「うおおおおお!!」
「あぶねぇ! 避けろ!」
「なっ、うおあああっ!!」
直径2kmの巨体を標に、幽世の門を越え次々と空から降ってくる、無限沸きの敵。
「こ、こんなのまるで……」
「ハーベストの、津波だ……!」
空泳ぐクジラは、そうやって過去、幾多の人類が積み上げた希望の光を呑み込んできたのだ。
「終夜様!」
『終夜!』
「わかってる。が、こっちも事情が変わってきたぞ!」
そんなとんでもデカブツを上にして。
天久佐の壁防衛最前線。
「ピギィィーーー!!」
「GOAAAーーーー!!」
赤い霧から出てくる敵が、再び小物中心にシフトした。
「くっそ、やっぱりコレもあるのか!」
「亜神級が存在することによる、敵の行動の戦術化、ですね」
亜神級が戦場にいると、敵にバフがかかる。
ゲーム版HVVだと、司令官補正と同じで命中と火力の上昇。そして弱ってる奴を的確に狙うようになる。
小説版だと今、姫様が言った通り、敵の行動が戦術的になる。
(この様子だと、どっちの効果も相手に乗ってるな……!)
1体1体の敵の狙いが正確化した。
そして数体の敵が集団で連携し、俺たちの動きに合わせて攻撃を繰り出してくる。
この手数相手では、自動安全モードじゃ絶対に対応できない。
「っても、甘い甘い!!」
連携があるならその起点を潰す。
繋ぎ目を狙って割り込んで、逆に混乱させてやる。
こちとら手動緊急モードの使い手よっ、てな!
「ゴブギャアアッ!!」
「ゴァァァァッ!!」
キマイラに騎乗して襲い掛かってきたゴブリンを、乗騎ごと巻き込み大太刀で切り裂いて。
「ここを抜けられたらそれこそ戦線が瓦解する! 堪えるぞ!」
「はい……!」
『了解』
「大丈夫! 私もまだまだっ、戦えるよ!」
『任セロ!』
さらに密度を増してくるハーベストたちの圧を迎え撃ち。
「六牧司令! こっちは任せろ! そっちは任せた!」
「……こちらコントールズー。わかった! 僕たちで他のフォローに回るよ」
今一番、周りが見えてるだろうウチの司令官殿に、大局を預ける。
「手果伸君、各ドローンから集めた情報をメインコンソールに!」
「了解っ!」
「……よしっ」
安心できる動き出しを耳に入れたところで通話を切り、目の前に集中する。
「とっとと目の前の赤い霧を削り切って、ついでにあのクジラも堕としてやる!」
「堕とせる……の、ですか?」
「堕とせる! そのためには全力出してもらうからな?」
「! はい、はい。贄のすべてを、存分にお使いください……!」
「あっ! あっ! 私も! 私も全力出すからね! 黒木くーん!!」
そう。
このくらいならまだ、大丈夫だ。
(ここを俺たちが凌いで、本島の方を木口君たちが対応すれば、十分に持ちこたえられる!)
俺たちのステータスは、ゲームどころか小説版を凌ぐ鍛えに鍛えた状態だ。
そのうえMAP情報もしっかり持てて、武装の予備も潤沢だ。
さらに言えば、事前に防衛戦に入るとわかっていたから、一般市民の避難が終わっている。
天久佐本島で決着つける分には、俺たちにしがらみは……ない!
(難易度アポカリプスだろうが、俺たちみんなの力があれば、なんとかできる!)
耐久戦なのは変わらない。
そしてその戦いには、終わりが見えている!
(目の前の赤い霧は最初に比べて明らかに薄くなってきている。ここからしばらくの雑魚ラッシュを乗り越えれば、あとはあのデカブツ目掛けて飛び込んでいけばいい!)
そう。
赤い霧はあと少しで……。
「……待て」
赤い霧。
「いくらなんでも、これは……」
薄いどころか、ほとんど散ってないか?
・
・
・
『ケェ! 帆乃花! 気ヲ付ケロ!』
「え!? どういうこと!?」
『散ラバッテタ敵ノ気配ガ、一気ニ消エチマッタ!!』
通信越しに聞こえたヤタロウの焦り声に。
「!」
直後。
とっさに俺が対応できたのは……奇跡だったかもしれない。
「ヨシノ! すまん!」
『!? 終……!!』
すべての行動をキャンセルしての、強制超過駆動コマンドの入力。
「うおおおおお!!」
『機体限界を超えた超過駆動を確認! 高負荷の処理のため、パイロットに一部フィードバックします……終夜!!』
緑の燐光をまとい、豪風を思いっきり前へと跳ねさせる。
無理矢理に動かした代償に痛みを感じながらも、俺は確かに……その一撃から仲間を守った。
ビョオオオオオ……!!
「ぐおおおああああああああああ!!!」
「ぁぁぁぁぁっ!!」
「黒木くん! 命ちゃん!」
受け止めたのは、強烈な……冷気。
豪風の前面装甲に突如としていくつもの氷の柱が立ち上り、全身に霜が降りる。
凍結。
11月の隈本はまだ暖かいといっていい。
だというのに、凍えるような冷たさを、装甲越しに俺は感じさせられる。
「……冗談じゃ、ねぇぞ」
こんな芸当ができる敵を、俺は1体しか知らない。
「黒木くん! ヤタロウからの緊急データ! 送るよ!」
遠見で見てくれたヤタロウからの視覚情報。
そこに映っていたものは……。
「……亜神級“海渡るオオカミ”――フェンリル!!」
「アオォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッッッッ!!」
ゲームでも、小説でも。
一度として起きなかった、同戦場二体目の亜神級の登場だった。
フェンリル「来ちゃった☆」
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